もふもふにゃんこ ゴマくんの冒険記

戸田 猫丸

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第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜

第8話〜ネズミとニンゲンを追え〜

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「おいルナ、ニャンでニンゲンがいるんだ!」
「僕に聞かれても知らないよ。ほら、“ニャイフォンで”撮らなきゃ」
「あ、ああ、そうだな。やり方はこれでいいのか?」
「違うよ! あーもう、僕のやり方を見てて!」

 ルナは“ニャイフォン”を構えると、画面の下に出てきた緑色のマークに触れた。パシャリと音がした後、「カメラロールに保存されました」って声が“ニャイフォン”から聞こえた。

「ほら見て。ちゃんと、撮れたみたいだよ」

 画面に、さっきのネズミ2匹とニンゲンとが、動きの止まった状態で映っていた。

「画面の下の緑マークに触れればイイんだな。ボクもいっぱい撮ってやらあ」

 ボクも負けじと、自分の“ニャイフォン”を構えて、緑マークに触れてみた。
 パシャパシャパシャパシャ――!
 ん? 変な音がずっと続くぞ……。

ニャンだこれ。ぶっ壊れたか?」
「兄ちゃん! 変なとこいじったでしょ! 連写モードになってるよ、しかも全部ブレてる!」
「ああ? 操作難しすぎるんだよ、コレ」

 色々と試そうと、“ニャイフォン”の画面をいじくろうとした時だった。

「ニャアアア! ニャニしやがる、ルナ!」
「シー! 早くこっちに隠れて!」
 
 ルナに肩を噛みつかれて、グイと引っ張られる。

 建物の壁に隠れながらそーっと覗くと、さっきのニンゲンとネズミが足を止めて、こっちを振り返ってやがるじゃねえか。
 ……と思ったらすぐ前に向き直って、ニャニ事もなかったかのように歩き始めた。見つかりはしなかったみてえだ。

「今のシャッター音に気付いたんだよ! もう本当に気をつけて!」
「あ、ああ。悪りい」

 再びボクらは建物の陰に隠れつつ、ニンゲンとネズミ2匹を追う。
 奴らは、丘の上へ続く小道を歩いて行きやがる。

「【マサシ兄ちゃん】、お腹空いたから早く行こー?」

 ボクと同じくらいの背丈のネズミが、声を出した。確かに喋ってやがる。
 白いしま模様のシャツに青いズボンを着てやがる。ボクの勘だが、オスの子ネズミだ。

「マサシお兄ちゃん、はやくー!」

 今度はチビの方のネズミが、ニンゲンに向けて喋った。オレンジ色の服を着て、頭に黄色いリボンを着けてやがる。多分、メスの子ネズミだな。
 そしてどうやら、ニンゲンの名前は【マサシ】っていうみてえだ。
 
 奴らは、小高い丘の上にある、オレンジ色した三角屋根の小さな建物へ向かっているようだ。
 遠くてよく聞こえねえが、マサシとネズミどもがニャンか喋っている。ボクは耳をすませた。
 多分だが、オスの子ネズミの名前は【トム】、チビのメスの子ネズミは【ナッちゃん】と呼ばれているみてえだ。

「あ、中に入って行きやがる」
「どうする? 近くまで行ってみる?」
 
 奴らは、オレンジ色した三角屋根の建物の中へ入って行っちまった。
 と、ここに来てボクの腹の虫が暴れ出しやがる。

「クソ、腹減ったぜ……」
「うん、僕も……」
「あの建物行って、ニャンか食わしてもらうか?」
「ダメダメ! ネズミさんたちに見つかっちゃダメなんでしょ?」
「じゃあどうしろってんだ」
「うーん……」
「とりあえず、建物に近付いてみるか。ついて来い」
「あ、待ってよ兄ちゃん! 静かにだよ!」

 ボクは、そっとオレンジ色した三角屋根の建物の、裏庭へと向かった。
 裏庭には、平べったい形をした別の大きな建物がある。裏口が開きっぱなしで、中の様子が丸見えだ。

「ルナはここで待ってろ」
「変な事たくらんでる顔だ……。ほんと、心配」
 
 ルナの言葉は無視して、ボクは平べったい建物に近付いて、裏口から中を覗いてみた。
 誰もいねえ。
 機械だけが自動的に、ニャニかをコンベアで運んでるのが見えた。パンかニャンかか?
 ……美味そうな匂いがしてきた。

 ボクは尻尾を使い、ルナにこっちへ来るようジェスチャーした。
 ルナが怪訝な顔をしながらササっと駆けてくる。

「ルナ、あの中に忍び込むぞ。あそこからいくつか食いモンをいただこう」
「ダメだってもう! ネズミさんに見つかったらどうするの!」
「ネズミはいねえぞ。腹減ったんだろ? 帰るまで飲まず食わずでいる気ニャのか?」
「うう……」
「冒険には、スリルがつきものニャンだよ! 行くぞ!」

 ボクとルナはネズミのかぶり物を装備し直し、建物の裏口からそっと忍び込んだ。
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