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第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜
第24話〜ネズミの家族とメシ作り〜
しおりを挟む「初めまして、ゴマさん。私は長女の【モモ】です。お料理が得意だから、おいしい物食べたい時はいつでも私に言ってね。ネコさんって、お魚の他に何が好きなの?」
今度は、ピンク色のエプロンを着けたメスネズミ――モモが、声をかけてきた。
「よお、モモだな。覚えたぜ。お前は5匹キョーダイの上から2番目だな?」
「ええ、そうよ。5匹みんな仲良しなのよ、うふふ」
「ネコが食うモンか……。ネズミ……は食っちゃダメだから……、カエルとかヘビとかコオロギとかだな!」
「うんうん……。でもヘビさんは難しそうだから……。じゃあ、ゴマさんの一番好きな物はなあに?」
一番好きな物だと? 決まってら。
「マグロだ」
「マグロってとっても大きなお魚よね……? 私たちネズミが捕ってくるのは、ちょっと難しいかなあ……ごめんね」
「イイぜ、気にすんな。その辺の川魚も好きだぞ」
「川のお魚なら、トムたちがよく捕ってくるわよ。今日、捕ったばかりのお魚があるから、それをごちそうするわね」
「お、マジか! 期待してるぜ、モモ!」
モモは嬉しそうに、食材やらがいっぱいある部屋へ向かって行った。
まさか、ここに来て魚料理が食えるだなんて思わなかったぞ。
ま、ミランダに頼めば何でも出してくれるだろうけど……。ネズミたちときたら、楽しそうに、何ていうか気持ちを込めてメシを作ってるように見える。手間暇かけて作ったメシって、きっと美味えんだろう。
ルナの奴も、いい子ぶってメシ作りを手伝ってやがる。しゃあねえ、ボクも手伝ってやるか。
「うんしょ、うんしょ」
「ほっほ、【ミライ】は上手じゃのう」
「うふふ、いい手つきねぇ」
お。末っ子のオスネズミが、ネズミのじいちゃんばあちゃんと一緒に、ダンゴをこねてやがる。ミライか……イイ名前じゃねえか。
「ネズミのじいちゃん、ばあちゃん、よろしくな。ボクはネコのゴマだ」
「ほっほ。わしは【ダン】と申しますじゃ。よろしくのぅ」
「わたしは【サンディ】よぅ。素敵なネコさんのお客様だなんて、長生きはするものねぇ。ほら、ミライや。ネコさんのお友達だよぅ?」
一生懸命ダンゴをこねてたミライが、手を止めて不思議そうにボクを見た。
ボクは怖くないぞ。友達になろうぜ。
「……ネコさん、ぼくミライだよ」
「おう、ボクはネコのゴマだ。よろしくな、ミライ」
「ゴマにいちゃんー!」
ミライはボクを見上げてニコッと笑った。ニャハハ、ネズミのチビっ子も、カワイイもんじゃねえか。
これで9匹のネズミの家族とは、ひと通り挨拶できたな。さ、腹も減ったし、メシ作りの続きだ――。
「さあ、出来たわよ」
手伝いもひと段落して広間のテーブルの席で待ってると、ネズミの母ちゃんが、茹でた魚を運んできた。ホクホクと湯気が立ってて、美味そうだ。
「うお、美味そうじゃねえか。なあチップ」
「でしょでしょゴマくん! みんな、ごはんできたよー!」
「わーーい!」
1階の広間のテーブルに、ドングリの粉で作ったパン、木の実入りのスープ、菜っ葉、そして魚の茹でたやつや焼いたやつとかがズラーッと並んだ。何だよこれ、めちゃくちゃ豪華じゃねえか。
全員が席についてから、ネズミたちは両手をポンと合わせた。
「じゃあ、いただきまーす!」
「いただきまーす」
「い、いただきます? 何だ、その儀式は?」
思わずネズミたちに尋ねてしまった。見たこともねえ儀式だ。
ネズミの父ちゃんが教えてくれた。
「あはは、僕らは食事の前にみんなで手を合わせて、いただきますって言うんだ。そういう文化なんだよ」
「ブンカだと? よく分かんねえな。と、とにかく食うぜ。あ、いただきます……でイイのか?」
前足を合わせなぎらネズミの父ちゃんの方を見ると、父ちゃんは「そうそう!」と言って頷いた。
ルナも真似してポフッと両前足を合わせていた。
ネズミたちは、2本の棒っきれを片手で器用に動かしてメシをつまみ、口へ運んでやがる。そういえばプレアデスの野郎も同じようにしてメシ食ってたな。
ま、ボクはそんな器用なマネはできねえから、茹で魚にそのまま食らいつくぜ!
「モグモグ……ニャアアア!?」
め……めっちゃくちゃ美味え!!
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