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第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜
第31話〜ボクの母ちゃん・2〜
しおりを挟む山で食い物を集めた帰り道、9匹のネズミたちの家が見えてきた――その時。
「おかしいわね、ここにいるって聞いたはずなのに」
「そのうち帰ってくるでしょ~、ふあ~……」
聞き慣れた声が、ボクの耳に入った。
「ユキーー、尻尾繋ごうよぅ」
「ポコ! こんな時に何言ってるのよ!」
そう、懐かしさすら感じる、ボクらの“家族”の声が……!
「おい……! ルナ!」
「うん、行こう!」
ルナと一緒に、声がした方へ全力でダッシュした。
「……あ! いた! ゴマとルナが……! 母さん!」
メルさんの声が聞こえた後――。
「……無事に、会えましたね!」
どこか懐かしい、ボクらの“母ちゃん”の声――。
林を抜けて、9匹の家の庭を見ると。
メルさん。じゅじゅさん。ユキ。ポコ。そして――ムーンという名の、ボクらの母ちゃん。
ボクの家族の姿が、そこにあった。
「メルさんっ! みんな!!」
「メル姉ちゃーん!!」
夢中でボクらは、メルさんたちのもとへ駆け寄った。
服を着て2足歩行になっているみんなの姿が新鮮だったが、それでも長く一緒に暮らしてきた家族である事に変わりはねえ。
こうしてようやく、家族と合流する事が出来たんだ、ミランダ、本当、ありがとよ……!
「うわあああんルナ! ゴマ! 心配したよう……!」
うわ、うわわ、メルさんがこんな泣いてるの初めて見たよ……。
「すまねえメルさん、心配かけた。もうボクのことボコボコにしてくれていいぜ」
「このバカ! ……でもゴマもルナも無事で、無事でぇ……、本当に良かったあ……うわあああん……」
ルナもメルさんに抱きつきながら、ニャンニャン泣いてやがる。
「ふあ~、ひと安心、ひと安心。たくさん歩いたからお腹すいたね~」
「ポコ、ネズミさんたちに挨拶ちゃんとするのよ?」
「もお、分かってるよユキ。あ、あの9匹のネズミさんたちがそうかな?」
じゅじゅさん、ユキ、ポコも、ホッとした様子だ。
そして、母ちゃん――。
やっと、やっと会えたんだ。
「ゴマ、ルナ……。大きくなりましたね。あなたのお世話をメルに任せっきりにしてしまい、ごめんなさいね。本当はもっとあなたたちと一緒に過ごしたかったのですが、“星光団”での活動を休むことが許されなかったのです」
「母……ちゃん……」
「お母さん……」
目が熱くなってきやがった。クソ、みんな見てる時にベソかいてたまるかよ!
……というより、今の母ちゃんのセリフ。確か、夢の中でも聞いた。
“星光団”。
夢の中では、ボクも“星光団”の一員になってた。が、その正体は謎のまんまだ。確か、世界の平和のために戦う、とか言ってたんだが、アレが正夢だったとすると……。
詳しい話を聞き出したかったが、ちょうど9匹のネズミたちがぞろぞろと、ボクらの所へやってきた。
チップとナナが、不思議そうにボクらを見ている。
「おやおや、ゴマさんたちのご家族様ですか。どうも、初めまして。おかげさまでずいぶん、助かりましたよ」
ネズミの父ちゃんが、ムーンにそう言って、頭を下げた。もう、前みてえに警戒しねえんだな。ボクらがネズミを襲って食ったりしねえ事を、信じてもらえたからだろうニャ。
母ちゃんも、深々とネズミたちに頭を下げる。
「いえいえ。こちらこそ、うちの大切な子供たちを守ってくださって感謝しております……」
ボクもルナも、母ちゃんと一緒に頭を下げた。
するとネズミの父ちゃんが……。
「せっかくですから、夕食、一緒に食べて行きませんか?」
ニコニコしながら誘ってきた。
「そ、そうだ! マジでうまいんだぜ! ここの飯はよ!」
ボクは思わず言ってしまった。
ボクらの家族にも、ネズミたちの作る魚料理を食って欲しい。
「そうね、せっかくだし。母さん、どう?」
メルさんはボクを見て苦笑いしながら、母ちゃんに聞いた。
「それでは、ご馳走になりましょう。……そしてしばらくは、私たちはここを動かない方がいいようです。地底に棲むネコたちに、動きがあったようです」
母ちゃんが、意味深な言葉を放つ。
地底に棲むネコたち?
まさか――!
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