散る花火と現れた星

くるみ

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花火大会 1

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 「なぁ、俺とは話せるけど、俺は大丈夫なの?」
 「何でだろう?風馬だけは大丈夫」
 「俺、男じゃないのかな?」
 「んな訳ないでしょ」
 
 陽奈はケラケラ笑った。風馬が助手席の窓を少し開けた。
 風が吹き抜け、潮の香りが広がった。

 「懐かし匂い」
 陽奈は大きく息を吸った。今、陽奈が一人暮らしをしている所は、都市部郊外で、自然は多少あるものの海はなかった。

 「着いたぞ」
 「うわぁ」
 
 陽奈は感嘆な声を漏らした。
 海から100メートル位離れた所に、バスケットコートが作られていた。水色の塗装で、床は滑りにくいものだった。
 風馬が収納ベンチから、ボールを取り出し、陽奈にパスをした。

 「この手触り、久しぶり。高校の体育以来かも」
 「ちょっと、やってみよーぜ」
 
 風馬が両手を広げて、ディフェンスのポーズを取る。
 陽奈は、ドリブルをしながら、風馬に近づいた。フェイントをかけながら、ゴールに近づくが、風馬はなかなか騙せなかった。一瞬の隙をつき、風馬の横をすり抜けようとしたが、すぐに追いつかれ、背中を向けた。
 風馬との距離が近く、風馬の匂いがふわりと漂った。
 
 あれ?この匂い…どこかで…
 
 陽奈が一瞬動きが止まった所を、風馬にボールを取られた。
 
 「あー、やられた」
 
 陽奈達は、しばらくバスケをして楽しんでいたが…

 「あー!もうだめ!限界!」
 「まだ、20分位しかやってないぞ」
 「もう、4年ブランクがあるの!体力持たない!」

 陽奈は、ふらふらになりながら、収納ベンチに横たわった。

 「そもそも、なんでバスケやってたんだろ?それに風馬の…」
 「なんか、炭の匂いしない?」
 「え?」

 陽奈は、鼻をくんくんさせ、匂いを嗅いだ。

 「本当だ。炭っぽい匂いする。どこかでバーベキューしてるのかな?」
 「あ!もしかして、夏祭りかも!今日、夏祭りあるって母さんから連絡あった」
 「夏祭りかぁ。しばらく行ってないなぁ」
 「じゃあ、俺と行く?」
 「え⁈それデートじゃん!」
 
 陽奈は、勢いよく上体を起こした。
 
 「今もデートじゃない?」
 「え?そうなの?夏祭り久しぶりに行きたいな」

 陽奈は、デートに関心がなかった。

 「花火も上がるし、行ってみるか」
 「いいねぇ。花火見たい!」
 
 珍しく陽奈のテンションが上がっていた。  二人は昼頃解散し、夕方陽奈が風馬の家に行く約束をした。
 自宅に戻ると、陽奈はクローゼットと相談していた。
 
 「何着てこう?夏祭り行く予定じゃなかったから、まともな服がないよ」
 
 陽奈は、腕を組んで唸った。クローゼットの左側に、袋がかけられた衣服があった。
 陽奈は、それを手に取った。それは、紺色の生地に桜の花があしらわれていた浴衣だった。

 「これ…?」

 陽奈は思い出し、机の上に置いていた、3人でうつる写真を見た。
 写真の陽奈は、この浴衣を着ていた。

 「これ、中学の時に着てたんだ」
 
 陽奈は、浴衣から袋を外した。浴衣を胸元に当て、鏡を見た。

 「この歳で、中学の浴衣着たら、浮くかなぁ?でも、着るのないからしょうがないよね。…これ着て、3人でお祭り行ったのかな」

 陽奈は着替え終えると、風馬の家に向かった。草履がアスファルトと擦れ、カランコロンと鳴る。
 風馬の家に着き、インターフォンを押した。

 「はーい。おや、陽奈ちゃん」
 「あっ…」

 陽奈は言葉が出なかった。

 「風馬かい?今、車にガソリン入れに行ったんだよ。すぐ来ると思うけど、中で待ってて」

 陽奈は、こくんとうなずいた。
 玄関に入ると、空の写真が目についた。おじさんは歳を取っても、空と似ていた。

 「浴衣似合ってるね」
 
 陽奈は、視線を戻した。

 「陽奈ちゃん、俺だよ。空」
 「え⁈」
 「何か急に、切り替わったから。でも、良かった。また陽奈ちゃんと話せた」

 風馬の父は、目尻に笑い皺を作り、微笑んだ。
 陽奈は、空がまだ、存命している事に安堵した。

 「その、浴衣懐かしいね。風馬と遊びにいくの?」
 
 陽奈は頷いた。

 「あ、あの。ちゅ、中学の時、お祭り3人で、行ったんですか?」

 陽奈は、ぎこちなく質問した。

 「ううん。写真は3人で撮ったけど、お祭りは陽奈ちゃんと俺で行ったよ」
 「え⁈」

 陽奈は、空とデートをしていた事に驚き、顔を赤くした。

 「陽奈ちゃんが誘ってくれたんだ」
 「えぇ⁈」
 「懐かしいなぁ。あれ以来行ってないなぁ」
 「…一緒に、行きま、すか?」

 陽奈は、自分の言葉にハッとした。
 
 「ありがとう。でも、二人の間におじさんがいたら変だよ」

 陽奈は、顔を赤くして俯いた。砂利を鳴らす音が外から聞こえた。

 「風馬が帰ってきたかな」

 車のドアを閉める音がすると、風馬が現れた。

 「あ、陽奈来てたんだ。じゃあ、行くか」

 陽奈は、空に一礼した。風馬を前に、二人しか知らない秘密に胸が鳴った。玄関を出て振り向くと、空が微笑んでいた。しかし、その表情には、また淋しさが滲んでいるように見えた。

 「その浴衣、懐かしいな」

 風馬は、照れくさそうに呟いた。

 「え⁈風馬覚えてるの⁈」
 「中学の時に着てたよな。まぁ…似合ってるよ」
 「すごい!よく覚えてたね!さすが、倍率の高い大学行ってるだけあるね」
 「…まぁね」

 風馬は、陽奈の反応に、腑に落ちないようだ。

 
 






 








 
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