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花火大会 2
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車を走らせて10分程で、花火大会の会場に着いた。車を駐車場に停め、出店を見て回る事にした。
「あれ⁈風馬じゃん!」
すれ違い様に、二人の男性が風馬に声をかけた。
「おお!蓮に遥都!久しぶり」
男3人は、ハイタッチをかわした。
「風馬は彼女と来てたの?」
陽奈は自分に注目され、風馬の後ろに隠れるように体を引いた。
「そ!可愛いでしょ」
「いいなぁ。俺も、こいつじゃなくて、彼女とデートしたいなぁ」
「俺もだし。風馬、今度飯でも食いにいこうな」
「おー。またなぁ」
風馬の友達と別れた後、陽奈は風馬を睨んだ。
「ちょっと、なんで私が彼女なのよ!」
「いいじゃん。陽奈、俺の彼女になってよ」
風馬は、真剣な顔で陽奈を見た。
「なりません」
「ちぇっ。残念」
陽奈は、風馬の告白は本気ではないとおもっていた。何度もこの様な事があったが、最後には茶化されていた。それに、風馬とは友達で、それ以上の事はないと思っていた。
「花火何時から上がるの?」
「19時から。あと10分位だな。どこでみる?」
「うーん。うちは家族で、高い所にあるお寺の方で見てたけど。風馬はどこで見てた?」
「俺は、ここの砂浜で見てたよ。ここの花火、海面に花火が映って綺麗だって有名で、県外から来る人も多いじゃん」
「ふーん。私、砂浜で花火見た事ないから、ここで見たい」
「ここで見るか」
花火大会のアナウンスが流れた後、カウントダウンが始まった。5、4、3、2、1
夜空に大きな花火が、何発も打ち上がった。評判通り、打ち上がった花火は海面にも映え、観客を魅了した。
「うわー!綺麗。本当だ。水面にも花火が映っ…」
陽奈が、風馬を見た瞬間止まった。
「陽奈?どうした?」
「違う所行こう」
「え⁈急にどうしたんだよ!」
陽奈は、人混みから抜け出し、辺りを見回した。
「おい!どこいくんだよ!」
風馬が陽奈の手首を掴んだ。
「何か思い出しかけたの!あの事件の時に無くした記憶じゃないかもしれないけど」
「どんな事なんだ?」
「よく分かんないけど。男の人と花火を見た」
「男って?」
「分からない。けど、ここじゃない所で見た。だから、その場所に行ったら、何か思い出すんじゃないかと思って」
「場所って、どこか思い出したか?」
「何か、この近くの高い所」
「この辺りの高い所って、何もないぞ」
二人は辺りを見回すが、視界を遮る様な高い所は防潮堤しかない。
「防潮堤はさすがにないよな?」
「あんな高くはない。てか、高所恐怖症の私には絶対無理!」
花火はどんどん上がり、歓声が飛び交っていた。
「上り坂!この辺りに上り坂ない⁈」
「この辺りの上り坂って…陽奈⁈」
陽奈の足が動いた。変わらない地元の風景は、暗闇でも分かった。家族に何十回も連れて来られた。道は、体が覚えていた。陽奈達がいる花火大会会場から、500メートル離れた所に漁港があった。漁港の後ろには、上り坂が続いていた。走っていたが、息が続かず、足が止まった。慣れない浴衣で、呼吸も走るのもきつかった。草履でのランニングで、親指の間に痛みが走った。
「おい、大丈夫か?」
「ごめん、大丈夫」
歩いてようやく、漁港の裏にある上り坂に着いた。花火に照らされた風馬を見て、ぼんやりと膜に包まれた記憶が小さく噴きだす。
「ここ!ここ通った」
「本当か?でも、ここ通ったら、住宅街だぞ?」
「何か、森みたいなのがあったの」
「森ぃ⁈こんな所に森なんてあるか?」
「何か、そんな気がする」
上りきると、住宅地が広がっており、森の要素が微塵もなかった。
「こっち行くと病院で、こっち行くと町役場だぞ」
「うーん。見た記憶があるんだけど。勘違いだったかな」
陽奈がもう一度辺りを見渡すと、塀と塀の間に、階段らしきものがあった。
「風馬、ここ行ってみよう」
「えぇ⁈ここ行くのか⁈ここ行ったら、どこに出んだよ」
「分かんない。でも、ここしかないよ」
陽奈は、真っ暗な階段を歩き出した。風馬が急いで駆け寄り、足元を携帯のライトで照らした。木々に囲まれた階段を上がって行くと、薄明かりが見えた。上がりきると視界が開け、目の前で花火が開いた。
「うわー、綺麗」
「おー、綺麗だ」
二人は同時に感嘆した。
辺りを見渡すと、ベンチが一つと離れた所に街灯がぽつんとあるだけだった。
「町役場憩いの場」
風馬が、階段の近くにあった看板をライトで照らしていた。
「あ!よく見たら、ここ役場の裏なんだね」
「こんな所、地元民でも知らねーぞ。まず、役場に来る事ないしな」
「でも、すごい!目の前に花火が上がって、めっちゃ綺麗だよ!人もいないし、隠れスポットだね…」
陽奈は急に固まった。何か考え込み、口元に手を添えた。
「おーい。陽奈どうした?」
風馬が、陽奈の顔を覗き込むが、陽奈は微動だにしない。
「私、ここに来た」
「本当か?」
「うん」
陽奈は、花火を見つめながら、風馬に寄り添った。
「え?陽奈?」
もっと近くに。お互いの温もりが伝わる程。陽奈は、風馬の手を握った。
土屋空。1987年5月1日生まれ。O型。身長175センチ。体重おそらく、60キロ台。好きな食べ物フライドポテト。嫌いな食べ物酢の物。高倍率の瑛都高3年生。バスケ部所属。
「空くん?」
「あれ⁈風馬じゃん!」
すれ違い様に、二人の男性が風馬に声をかけた。
「おお!蓮に遥都!久しぶり」
男3人は、ハイタッチをかわした。
「風馬は彼女と来てたの?」
陽奈は自分に注目され、風馬の後ろに隠れるように体を引いた。
「そ!可愛いでしょ」
「いいなぁ。俺も、こいつじゃなくて、彼女とデートしたいなぁ」
「俺もだし。風馬、今度飯でも食いにいこうな」
「おー。またなぁ」
風馬の友達と別れた後、陽奈は風馬を睨んだ。
「ちょっと、なんで私が彼女なのよ!」
「いいじゃん。陽奈、俺の彼女になってよ」
風馬は、真剣な顔で陽奈を見た。
「なりません」
「ちぇっ。残念」
陽奈は、風馬の告白は本気ではないとおもっていた。何度もこの様な事があったが、最後には茶化されていた。それに、風馬とは友達で、それ以上の事はないと思っていた。
「花火何時から上がるの?」
「19時から。あと10分位だな。どこでみる?」
「うーん。うちは家族で、高い所にあるお寺の方で見てたけど。風馬はどこで見てた?」
「俺は、ここの砂浜で見てたよ。ここの花火、海面に花火が映って綺麗だって有名で、県外から来る人も多いじゃん」
「ふーん。私、砂浜で花火見た事ないから、ここで見たい」
「ここで見るか」
花火大会のアナウンスが流れた後、カウントダウンが始まった。5、4、3、2、1
夜空に大きな花火が、何発も打ち上がった。評判通り、打ち上がった花火は海面にも映え、観客を魅了した。
「うわー!綺麗。本当だ。水面にも花火が映っ…」
陽奈が、風馬を見た瞬間止まった。
「陽奈?どうした?」
「違う所行こう」
「え⁈急にどうしたんだよ!」
陽奈は、人混みから抜け出し、辺りを見回した。
「おい!どこいくんだよ!」
風馬が陽奈の手首を掴んだ。
「何か思い出しかけたの!あの事件の時に無くした記憶じゃないかもしれないけど」
「どんな事なんだ?」
「よく分かんないけど。男の人と花火を見た」
「男って?」
「分からない。けど、ここじゃない所で見た。だから、その場所に行ったら、何か思い出すんじゃないかと思って」
「場所って、どこか思い出したか?」
「何か、この近くの高い所」
「この辺りの高い所って、何もないぞ」
二人は辺りを見回すが、視界を遮る様な高い所は防潮堤しかない。
「防潮堤はさすがにないよな?」
「あんな高くはない。てか、高所恐怖症の私には絶対無理!」
花火はどんどん上がり、歓声が飛び交っていた。
「上り坂!この辺りに上り坂ない⁈」
「この辺りの上り坂って…陽奈⁈」
陽奈の足が動いた。変わらない地元の風景は、暗闇でも分かった。家族に何十回も連れて来られた。道は、体が覚えていた。陽奈達がいる花火大会会場から、500メートル離れた所に漁港があった。漁港の後ろには、上り坂が続いていた。走っていたが、息が続かず、足が止まった。慣れない浴衣で、呼吸も走るのもきつかった。草履でのランニングで、親指の間に痛みが走った。
「おい、大丈夫か?」
「ごめん、大丈夫」
歩いてようやく、漁港の裏にある上り坂に着いた。花火に照らされた風馬を見て、ぼんやりと膜に包まれた記憶が小さく噴きだす。
「ここ!ここ通った」
「本当か?でも、ここ通ったら、住宅街だぞ?」
「何か、森みたいなのがあったの」
「森ぃ⁈こんな所に森なんてあるか?」
「何か、そんな気がする」
上りきると、住宅地が広がっており、森の要素が微塵もなかった。
「こっち行くと病院で、こっち行くと町役場だぞ」
「うーん。見た記憶があるんだけど。勘違いだったかな」
陽奈がもう一度辺りを見渡すと、塀と塀の間に、階段らしきものがあった。
「風馬、ここ行ってみよう」
「えぇ⁈ここ行くのか⁈ここ行ったら、どこに出んだよ」
「分かんない。でも、ここしかないよ」
陽奈は、真っ暗な階段を歩き出した。風馬が急いで駆け寄り、足元を携帯のライトで照らした。木々に囲まれた階段を上がって行くと、薄明かりが見えた。上がりきると視界が開け、目の前で花火が開いた。
「うわー、綺麗」
「おー、綺麗だ」
二人は同時に感嘆した。
辺りを見渡すと、ベンチが一つと離れた所に街灯がぽつんとあるだけだった。
「町役場憩いの場」
風馬が、階段の近くにあった看板をライトで照らしていた。
「あ!よく見たら、ここ役場の裏なんだね」
「こんな所、地元民でも知らねーぞ。まず、役場に来る事ないしな」
「でも、すごい!目の前に花火が上がって、めっちゃ綺麗だよ!人もいないし、隠れスポットだね…」
陽奈は急に固まった。何か考え込み、口元に手を添えた。
「おーい。陽奈どうした?」
風馬が、陽奈の顔を覗き込むが、陽奈は微動だにしない。
「私、ここに来た」
「本当か?」
「うん」
陽奈は、花火を見つめながら、風馬に寄り添った。
「え?陽奈?」
もっと近くに。お互いの温もりが伝わる程。陽奈は、風馬の手を握った。
土屋空。1987年5月1日生まれ。O型。身長175センチ。体重おそらく、60キロ台。好きな食べ物フライドポテト。嫌いな食べ物酢の物。高倍率の瑛都高3年生。バスケ部所属。
「空くん?」
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