散る花火と現れた星

くるみ

文字の大きさ
11 / 11

再出発

しおりを挟む
 夜のコンビニは、客も少なく、品出しや清掃が迅速にできた。しかし、ガラの悪い若者や酔っ払いの入店はしばしばあった。
 風馬は、夜のコンビニのバイトを週4入れ、親の援助を受けながら、生計を立てていた。
  風馬は、誰もいない店内の床をモップかけを始めた時だった。ズボンのポケットに入れていた携帯が震え出した。
 風馬は、こっそり携帯を開くと、慌ててトイレに入った。

 「もしもし⁈」
 「もしもし?風馬?」

 声の主は、陽奈だった。

 「急にどうした⁈」
 「今、◯◯駅にいるんだけど。迎えに来れる?」
 「え⁈今?今、バイト中なんだけど」
 「夜、人もいない駅に、女の子を一人にさせるの?」
 「ぅう~。分かった。でも、1時間待ってくれないか?」
 「1時間…分かった。待ってるから迎えにきてね」

 電話を切ると、風馬はため息を吐いた。

 「田沼さーん」

 風馬は、夜勤バイトで入ってる田沼という中年の男に、親が急遽家に来たので早退させてほしいと嘘の事情を説明した。
 風馬は、やりかけていた仕事を終わらせ、タクシーで駅に向かった。
 駅に到着すると照明は落ち、真っ暗だった。風馬は、携帯を見るとメールが入っていた。陽奈から、駅前のコンビニで待つと。
 駅前のコンビニに入ると、陽奈は雑誌を立ち読みしていた。

 「陽奈」
 「風馬。遅いから!駅閉めるって言われたからコンビニで待ってたよ」
 「悪い。でも、バイト中で。…それに来ると思わなかったから…」
 「風馬でしょ。地元じゃ無い所で遊ぼうって言ったのは。だから、遊びに来たの」
 「そうだけど」

 陽奈は、辺りを見渡した。

 「一回、ここ出ようか」

 二人はコンビニを出て、駅前にあるバス停のベンチに腰をかけた。

 「久しぶりに話すね。空さんの葬儀の時、雰囲気的に話しかけずらくてさ」
 「俺も、話かけられなかった」

 風馬は俯いていて、二人の会話はぎこちなく交わされた。

 「風馬、ちょっと聞いてもいい?」
 「何?」
 「あの事件の後、私、男子からいじめられてたじゃん。どうして、かばってくれたの?」
 「どうしてって…好きな人がいじめられたら、黙ってられないだろ」
 「殺そうとしたのに?」

 風馬は、真面目な顔で陽奈を見つめた。

 「それ位、陽奈は俺をおかしくさせる」
 「今でも?」

 陽奈も風馬の顔を見つめた。

 「今もおかしくなる」
 「じゃあ、もう一回友達から始めよう」
 「いいの?」
 「いいよ。ああ、お腹空いてきた。風馬の奢りで、ご飯食べに行こう」
 「俺が⁈」
 「だって、ここ来るのに、お金も時間もかかったんだよ」
 「…分かったよ。いっぱいご馳走してやる!」

 二人は笑い合った。
 陽奈は、風馬のした事はすぐには許せなかった。しかし、風馬の本当の気持ちを受け止め、少しずつ向き合っていこうと決めた。
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...