恋のおまじない

くるみ

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迷子の記憶

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 冷たい風が頬をかすめ、瞳は目を覚ました。瞳は手を合わせて、涙を流していた。

 「ここは…北霊園?私、何でここにいるんだろう?」

 辺りはやませに覆われ、白いガスが流れている。瞳は涙を拭い、手を合わせた墓石の名前を見た。

 「久住?うちのお墓だ。何でお墓にいるんだろう?」

 瞳は、唸りながら頭を捻った。春彼岸でもないはずなのにと。
 瞳は歩きながら、今日が何月何日か思い出そうとしたが、それも分からなかった。
 冷たい浜風が吹きつけた。ガスもかかり、辺りは人気もなく静まりかえっていた。道によっては、人っこ1人見当たらない田舎町の為、人気がない事に瞳は気にしていなかった。
 途中で、小学校の校門の前に差し掛かった。背の高い木々が、トンネルを作り校舎の玄関付近まで続いている。

 「そういえば、学校で何かやった気がする。何だっけ?」

 瞳は、こめかみを突く仕草をしたが、何も思い出せなかった。
 
 「そうだ!学校に行けば誰かいるから聞いてみよう!」

 瞳は、校舎に向かって歩き出した。玄関の重い扉は開いていた。瞳は靴を履き替え、校舎に入った。校内に、照明は付いておらず、人気がなくしんと静まりかえっていて不気味だった。

 「今日、学校休みだったかな?でも、玄関空いてたよね。えー?まず、職員室に行こう」
 瞳は、2階にある職員室に向かった。職員室からは、全く声が聞こえなかった。いつもなら、色んな先生の声が交差していて、おまけに瞳が苦手なコーヒーの匂いも漂うのに無臭だった。
 異変に気付きながらも、ドアを2回ノックする。

 「失礼します」

 ゆっくり開けて、辺りを見回した。驚きの光景に唖然とした。先生が誰一人いないのだ。

 「先生ー。いませんか?」

 先生を呼んだが、誰の返事も聞こえない。職員室に足を踏み入れると、毎月の予定が書いてあるホワイトボードに目が行った。4月30日の所に、赤字で6年生お泊まり学習と書いてある。

 「お泊まり学習?あれ?何かあったような」

 足が自然と動いた。職員室を出て、3階の6年生教室に向かった。教室は、職員室同様もぬけの殻だった。黒板に何か書いてあった。

 「夕食メニュー。カレー、サラダ、スープ。チャーハン、餃子?うーん。教室で何か食べた気がするけど、何食べたっけ?その後、何かあったんだけど。何で、思い出せないんだろう?所々しか思い出せない」

 瞳は頭を抱えて、唸り始めた。

 「あ!ご飯食べた後、体育館に行った!」

 瞳は、再び歩き出した。頭に靄がかかった様で、記憶がハッキリと思い出せない。記憶が断片的で、点と点が繋がらない。瞳は、そんな自分の異変に不安を覚えた。長い渡り廊下を進むと、体育館に着いた。

 「確か、ここで寝る事になって…みんな集まって…そしたら、みんな倒れて…」

 瞳の頭の中が熱くなるが、同時に、体に悪寒が走った。体育館で何が起きたのだ。その時だけの記憶が繋がり始めていく。

 「声!誰かの声が聞こえた!ガラガラしたおばあさんの!」

 「お前が久住瞳か」

 その一言が頭をよぎった瞬間、記憶が繋がった。
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