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プロローグ

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「お願いですから、私と離婚してくださいませ、レオ様」

 夫であるレオが帰宅してくるなり、私・アメリアはそう告げた。
 
「どうしたんだ、いきなり」

 レオは困惑した表情を隠すこともなく露にした。
 
「貴方の奔放ぷりには飽き飽きしましたの。私と離婚してくださいませ」

 離婚という言葉を強調させつつ、レオに近づいた。
 私は知っている。レオは私の実の妹・リリィに片想いをしていることを。そして、またリリィもレオに好意を抱いていることも。
 大大大好きな妹がこんな奔放野郎にとって喰われるのはかなり癪だけれども、姉としては妹の恋時を応援しないわけにはいかない。
 それに、私とレオの結婚は策略結婚だ。レオに対して、1ミクロンたりとも好意はない。
 リリィがレオのことが好きだと分かっていたら、この面倒な第一王妃の座を二つ返事で渡していたところだろうけど。
 どうやら、私がレオと結婚したことにより、初対面のはずの二人の距離が縮まったっぽいから仕方がない。

「でも、」

 歯切れの悪い返事に段々と苛々してきた。
 ワイルド系の見た目に反して、レオは優柔不断だ。
 私が離婚を切り出さなれけば、リリィに告白することもないだろう。
 その親切心で恋のキューピッド役を買ってやろうと思っているのに、ちっとも話が進みやしない。
 仕方がない、か。
 あまりこの手は使いたくなかったけど、やるしかないようだ。

 他の人に聞こえないようにレオの元まで駆け寄り、耳元で囁いた。

「私、知っていますの。レオ様が妹のことが好きなことを」
「なっ……!」

 これでもかというぐらいレオの顔が真っ赤に染まった。

「いや、違うんだ。これは、その」

 私に不貞を断罪されると思ったのだろう。急に慌てふためいて、ぶつぶつとなんの意味もなさない言葉を発し始めた。

「ちがいますわ。私はレオ様と妹の恋路を応援したいと思っているの。だから、私と離婚してくださいませ」

 三度目の離婚という単語を発すると、か細い声で「……分かった」と呟いた。

「このあとのことは手厚く援助しよう。……本当に、すまないな」

 一回嫁いだ女性は、次の嫁ぎ先が決まることはほぼほぼない。そういった意味での「ごめん」だろう。
 私としては、誰かの妻になるのは「絶対に無理!」だから好都合だ。
 だって、妻としての礼儀作法はややこしくて、面倒くさいんだもの。独り身の方が楽だ。

 あれよあれよという間にレオとの離婚が決まり、私は独り身になったのだった。

 あとは、妹とレオをくっつけさせればいい。
 そう思っていたのだけど、そう上手くはいかなかった。
 私とレオが離婚してもう一ヶ月が経つというのに、双方ともに全くアクションを起こしてこない。
 痺れを切らした私は、レオの屋敷へと乗り込むのだった。

 
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