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服選び

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「これでもない、これでもない!」

 あの告白から三日が経った。明日が、いよいよデートの当日である。

「どうしたの、お姉様」

 広いクローゼットの中で一人ファッションショーを行っていると、リリィが不思議そうな表情を浮かべて近づいてきた。

「えーっと、その、明日ルカとお出かけをすることになって」

 デートと言うのは恥ずかしかったので、お出かけと言い換えて答えた。どんどん声が小さくなっていく。

「あら、じゃあ気合いをいれなくてはいけませんわね。お姉様のデートですし」
「デッ、デデデデート⁉︎」
「そうでしょう。年頃の男女が出かける。デート以外のなにものでもありませんわ」

 壊れたロボットの様にひたすら「デート」と繰り返す私に、リリィが「これはどうかしら」と花柄のワンピースを顔の前に掲げて見せた。

「リリィみたいに華やかな顔立ちをしていたら似合うんだろうけど、私には派手すぎるんじゃないかしら」
「そんなことありませんわ! お姉様は美人ですもの。なんでも似合うはずですわ!」

 鼻息荒く力説するリリィに少し引きつつ、そのドレスを受け取る。試しに鏡の前に立ち、合わせてみた。なんだろう。「これじゃない感」がぷんぷんだ。それに、なんかルカの雰囲気と合わない気がする。

「折角リリィが選んでくれたから着て行きたいところだけど、私には似合わないみたい」

「そうかしら……」

 不満げに漏らすリリィを尻目に、私は数えきれないほど収納されているドレスを色々と見る。
 
「あ、これなんかどうかしら」

 視界の隅に黄色いドレスが映る。ルカの瞳の琥珀色がなんとなく頭に浮かんだ。
 手に取ると軽く合わせて、リリィの方を向いた。

「どうかしら、このドレスは」
「お姉様の明るい雰囲気と合っていますわ」

 鏡の前に立ち再度合わせてみる。自分の中でとてもしっくりきた。

「なんかこの色、ルカ様の瞳の色に似ていますわね」
「……っ!」

 リリィに心の中を見透かされている気がする。

「次はお化粧ね。髪型はどうしましょう」

 楽しげにリリィが言った。

「え、私としてはこのままでよいのだけど……」
「そんなんじゃ駄目ですわ、お姉様。お洒落をするのはレディのマナーよ」

 あれよあれよという間に化粧台へと座らされて、そのまま一時間以上身だしなみについてレクチャーを受けるのだった。

 
 
 
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