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5 昨日の敵が今日の恋人?
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私は思わず顔を覆った。
ヤバい、そんなにメイク落ちてる?! などと誰にも聞けない。
誤魔化したくて、慌てて私は「隙あり!」と勇者をぶん殴った。全力じゃお腹に穴が空いてしまうので加減はしたが、火事場の馬鹿力に近かった。
慌てたので勇者は吹っ飛び、仲間が退いている木にぶつかった。意識をなくしたようで、起き上がってこない。
「おのれ魔王!」
と、勇者を横抱きにした、お仲間ご一行が激昂する。
「勝負はついた。退くが良い」
ちょっと横を向いて顎を引き、マントに顔を隠して宣言した。離れてるからバレてないと良いけど。
しかし勇者以外は、ちょっと残念な子たちだった。
「まだ勝負はついてない! 今度は俺たちが相手だ!」
などと言い出しおったのである。
いやいやいやいや、ちょっと待て。
と内心で慌てるも、それを態度に出す訳には行かない。こっちだってヘロヘロだ、一発でノックアウトされる自信満々である。
「やああぁあぁ!」
と攻めこもうとせん彼ら。いよいよアウトか……と思いきや、彼らの前に立ちはだかり、私の顔を隠してくれる救世主が現れた!
「遅いからお迎えに上がりましたよ、魔王様」
「パヤパ!」
が、操る、ドラゴン!
「わああぁあぁ!」
ぶつかり、ドォンと押し返された一行が、元の場所にまで吹き飛んだ。
自力で飛ぶ力も尽きていたので、正直助かった。
これ幸いと、勇者様ご一行がおののいている間に、そそくさと乗り込んだ。
ドラゴンが浮かび上がる。みるみる地面が遠くなる。
豆粒と化する一行が、
「畜生!」
「覚えてろよ!」
と遠吠えるのを聞くと、何か一言、釘を刺しておくべきだったかなぁと思うも、まぁ、言うても聞かない輩だからこそ魔王退治になんぞ来るのだろう。
また来たら、お出迎えして差し上げるしかない。
ところが。
「魔王様、大変です!」
3日ほど後の夜であった。
すっかり深夜の、ベッドでいざ寝ようとしていた時である。
パヤパの声と、扉を叩く音が響くではないか。まさか先日の一行が、町に戻らず進軍してきたのか?! というのが一番に思いあたった。
普通の人間で、3日ほどの距離だった。
もしくは町に下りて体力を回復させてから、馬で走ってきたのかも知れないが。もしくは、まったく別の新手かも知れないが。
「も~……次から次へと……」
まぁ、そりゃ魔王退治のご褒美が賞金のみならず王女様との結婚と来れば、男なら誰しもチャレンジしたいところだろう。
とはいえ仕事は昼間に限らせて頂きたい。
メイクも落とした以上、魔王タイム終了! と言いたいところである。サービス残業、勘弁です。
「侵入者です!」
という報告と、その侵入者が同時だった日には。
「盗賊?!」
ガバッと起き上がった目の前に、その男は顔を突き出していた。
「よ」
「きゃ?!」
思わず変な声と手が出て、はり倒そうとした。
のだが……。
「?!」
腕を掴まれ、口も塞がれたのである。
唇で。
「ん?! んーっ!!」
全開の窓から風が吹き込み、二人の影をカーテンに隠した。
ヤバい、そんなにメイク落ちてる?! などと誰にも聞けない。
誤魔化したくて、慌てて私は「隙あり!」と勇者をぶん殴った。全力じゃお腹に穴が空いてしまうので加減はしたが、火事場の馬鹿力に近かった。
慌てたので勇者は吹っ飛び、仲間が退いている木にぶつかった。意識をなくしたようで、起き上がってこない。
「おのれ魔王!」
と、勇者を横抱きにした、お仲間ご一行が激昂する。
「勝負はついた。退くが良い」
ちょっと横を向いて顎を引き、マントに顔を隠して宣言した。離れてるからバレてないと良いけど。
しかし勇者以外は、ちょっと残念な子たちだった。
「まだ勝負はついてない! 今度は俺たちが相手だ!」
などと言い出しおったのである。
いやいやいやいや、ちょっと待て。
と内心で慌てるも、それを態度に出す訳には行かない。こっちだってヘロヘロだ、一発でノックアウトされる自信満々である。
「やああぁあぁ!」
と攻めこもうとせん彼ら。いよいよアウトか……と思いきや、彼らの前に立ちはだかり、私の顔を隠してくれる救世主が現れた!
「遅いからお迎えに上がりましたよ、魔王様」
「パヤパ!」
が、操る、ドラゴン!
「わああぁあぁ!」
ぶつかり、ドォンと押し返された一行が、元の場所にまで吹き飛んだ。
自力で飛ぶ力も尽きていたので、正直助かった。
これ幸いと、勇者様ご一行がおののいている間に、そそくさと乗り込んだ。
ドラゴンが浮かび上がる。みるみる地面が遠くなる。
豆粒と化する一行が、
「畜生!」
「覚えてろよ!」
と遠吠えるのを聞くと、何か一言、釘を刺しておくべきだったかなぁと思うも、まぁ、言うても聞かない輩だからこそ魔王退治になんぞ来るのだろう。
また来たら、お出迎えして差し上げるしかない。
ところが。
「魔王様、大変です!」
3日ほど後の夜であった。
すっかり深夜の、ベッドでいざ寝ようとしていた時である。
パヤパの声と、扉を叩く音が響くではないか。まさか先日の一行が、町に戻らず進軍してきたのか?! というのが一番に思いあたった。
普通の人間で、3日ほどの距離だった。
もしくは町に下りて体力を回復させてから、馬で走ってきたのかも知れないが。もしくは、まったく別の新手かも知れないが。
「も~……次から次へと……」
まぁ、そりゃ魔王退治のご褒美が賞金のみならず王女様との結婚と来れば、男なら誰しもチャレンジしたいところだろう。
とはいえ仕事は昼間に限らせて頂きたい。
メイクも落とした以上、魔王タイム終了! と言いたいところである。サービス残業、勘弁です。
「侵入者です!」
という報告と、その侵入者が同時だった日には。
「盗賊?!」
ガバッと起き上がった目の前に、その男は顔を突き出していた。
「よ」
「きゃ?!」
思わず変な声と手が出て、はり倒そうとした。
のだが……。
「?!」
腕を掴まれ、口も塞がれたのである。
唇で。
「ん?! んーっ!!」
全開の窓から風が吹き込み、二人の影をカーテンに隠した。
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