7 / 15
7 夜ばい再び
しおりを挟む
今夜の寝室は、静かなものだ。
侵入者が1日どこに潜んでいたのだか知らないが、前日と同じように侵入できる辺りは逆に、本当に魔宮のセキュリティを検討しなおすべきだろう。魔法をつむぎ直したものの、どこにも綻びは見えなかったし、自分の力が弱くなった感覚もなかった。
と、思いたいだけかも知れないが。
「律儀だな、同じ時間に同じ場所からとは」
近寄ってくる男の様子に、どうしても緊張してきてしまう。緊張が気付かれてなければ良いけど……と思うも、多分バレてるか。
男は私が座るベッドに乗ってくると、いちなり私の顔を撫でたのだ。
「今日は塗ってるのか」
言い当てられて恥ずかしさに、顔が火照った。そんな、すぐ分かるようなメイクにはしなかったのに!
どうせ先日、素っぴんを見られているのだ。とは思っても、来ると分かっていて、また素っぴんでお出迎えなどと出来る訳がない。
「悪いか」
「いや」
言葉少なに、だが視線を外さず頬を撫でてくる辺り、くどき上手すぎるだろ。
「魔王様な顔よりも、こちらの方が良い」
と、今度は頬の手を髪に持ってくるではないか。どうしよう、そろそろ振り払うべき?! タイミングが分からない!
固まっていたら、髪を触る手に力がこもり、頭を掴まれた。
「?!」
ぐいと引き寄せられ、男の胸に頭を押し付けられる。暴れようにも、いつの間にやら手足も絡め取られていてガッチリと抱きすくめられていた。どんな魔法だ?! てか慣れすぎじゃね?!
「暴れるなよ」
男の苦笑する視線すら優しい。
これは惚れられている……と勘違いするヤツである。きっと自分の、希望的観測もあるに違いない。恋は判断を鈍らせる。
両想いの経験はないが、片想いなら、しょっちゅうだ。
「お前、先日の勇者か」
なんとか言葉を絞りだす。完全に飲まれる前に、必要事項は確認せねば。
「だとしたら?」
と、煙に巻く返答。
何が目的だと訊いても、これも煙に巻かれそうだ。口説かれて終わりな気がする。
抱きすくめられながら、そういえばと、ハッとした。
これって、チャンスじゃね?
これまで叶わなかった初体験が目前だ。そういや忙しすぎて、夜伽の男を調達してくるの、やめてたもんなぁ~……と思い出す。
この男にどんな思惑があるのか知らないが、何か事を起こすなら、コトが終わってからだろう。とりあえず脱☆処女は叶いそうである。
ここまで来ておいて、実は人間との交尾ができる身体ではありませぇ~ん♪ とか、男と交わると命を落とす呪いにかかってま~す♪ なんて言うなよ、頼むから……。
誰にともなく祈って、男の顔を見る。
こんな顔だったのか、と、改めて見つめる。戦っている間はお互い、私は化粧で、こいつは鎧で顔を隠していた。
切れ長だが少し垂れ目で、人好きのする顔だ。伸ばした赤い髪。不敵な笑み。自信に溢れている。
「教えろ」
男言葉をやめたいが、どうにも恥ずかしくて、つっけんどんになってしまう。それでも覚悟は決めた。
「昨夜のアレが、ディープキスとかいうヤツか?」
という私の問いは想定していなかったらしく、勇者かも知れない男が、目を丸くした。その目に、みるみる顔が火照った。誘ったつもりのセリフだったが、誘うどころか興ざめだ。
だが。
「違うな。軽く口を開けてみな」
彼が私の顎に手をかけてきて、ちょっと感動してしまった。
これが「顎クイ」ってヤツかー!
侵入者が1日どこに潜んでいたのだか知らないが、前日と同じように侵入できる辺りは逆に、本当に魔宮のセキュリティを検討しなおすべきだろう。魔法をつむぎ直したものの、どこにも綻びは見えなかったし、自分の力が弱くなった感覚もなかった。
と、思いたいだけかも知れないが。
「律儀だな、同じ時間に同じ場所からとは」
近寄ってくる男の様子に、どうしても緊張してきてしまう。緊張が気付かれてなければ良いけど……と思うも、多分バレてるか。
男は私が座るベッドに乗ってくると、いちなり私の顔を撫でたのだ。
「今日は塗ってるのか」
言い当てられて恥ずかしさに、顔が火照った。そんな、すぐ分かるようなメイクにはしなかったのに!
どうせ先日、素っぴんを見られているのだ。とは思っても、来ると分かっていて、また素っぴんでお出迎えなどと出来る訳がない。
「悪いか」
「いや」
言葉少なに、だが視線を外さず頬を撫でてくる辺り、くどき上手すぎるだろ。
「魔王様な顔よりも、こちらの方が良い」
と、今度は頬の手を髪に持ってくるではないか。どうしよう、そろそろ振り払うべき?! タイミングが分からない!
固まっていたら、髪を触る手に力がこもり、頭を掴まれた。
「?!」
ぐいと引き寄せられ、男の胸に頭を押し付けられる。暴れようにも、いつの間にやら手足も絡め取られていてガッチリと抱きすくめられていた。どんな魔法だ?! てか慣れすぎじゃね?!
「暴れるなよ」
男の苦笑する視線すら優しい。
これは惚れられている……と勘違いするヤツである。きっと自分の、希望的観測もあるに違いない。恋は判断を鈍らせる。
両想いの経験はないが、片想いなら、しょっちゅうだ。
「お前、先日の勇者か」
なんとか言葉を絞りだす。完全に飲まれる前に、必要事項は確認せねば。
「だとしたら?」
と、煙に巻く返答。
何が目的だと訊いても、これも煙に巻かれそうだ。口説かれて終わりな気がする。
抱きすくめられながら、そういえばと、ハッとした。
これって、チャンスじゃね?
これまで叶わなかった初体験が目前だ。そういや忙しすぎて、夜伽の男を調達してくるの、やめてたもんなぁ~……と思い出す。
この男にどんな思惑があるのか知らないが、何か事を起こすなら、コトが終わってからだろう。とりあえず脱☆処女は叶いそうである。
ここまで来ておいて、実は人間との交尾ができる身体ではありませぇ~ん♪ とか、男と交わると命を落とす呪いにかかってま~す♪ なんて言うなよ、頼むから……。
誰にともなく祈って、男の顔を見る。
こんな顔だったのか、と、改めて見つめる。戦っている間はお互い、私は化粧で、こいつは鎧で顔を隠していた。
切れ長だが少し垂れ目で、人好きのする顔だ。伸ばした赤い髪。不敵な笑み。自信に溢れている。
「教えろ」
男言葉をやめたいが、どうにも恥ずかしくて、つっけんどんになってしまう。それでも覚悟は決めた。
「昨夜のアレが、ディープキスとかいうヤツか?」
という私の問いは想定していなかったらしく、勇者かも知れない男が、目を丸くした。その目に、みるみる顔が火照った。誘ったつもりのセリフだったが、誘うどころか興ざめだ。
だが。
「違うな。軽く口を開けてみな」
彼が私の顎に手をかけてきて、ちょっと感動してしまった。
これが「顎クイ」ってヤツかー!
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる