転生して魔王になったので男漁り始めました。

加上鈴子

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7 夜ばい再び

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 今夜の寝室は、静かなものだ。
 侵入者が1日どこに潜んでいたのだか知らないが、前日と同じように侵入できる辺りは逆に、本当に魔宮のセキュリティを検討しなおすべきだろう。魔法をつむぎ直したものの、どこにもほころびは見えなかったし、自分の力が弱くなった感覚もなかった。
 と、思いたいだけかも知れないが。
「律儀だな、同じ時間に同じ場所からとは」
 近寄ってくる男の様子に、どうしても緊張してきてしまう。緊張が気付かれてなければ良いけど……と思うも、多分バレてるか。
 男は私が座るベッドに乗ってくると、いちなり私の顔を撫でたのだ。
「今日は塗ってるのか」
 言い当てられて恥ずかしさに、顔が火照った。そんな、すぐ分かるようなメイクにはしなかったのに!
 どうせ先日、素っぴんを見られているのだ。とは思っても、来ると分かっていて、また素っぴんでお出迎えなどと出来る訳がない。
「悪いか」
「いや」
 言葉少なに、だが視線を外さず頬を撫でてくる辺り、くどき上手すぎるだろ。

「魔王様な顔よりも、こちらの方が良い」
 と、今度は頬の手を髪に持ってくるではないか。どうしよう、そろそろ振り払うべき?! タイミングが分からない!
 固まっていたら、髪を触る手に力がこもり、頭を掴まれた。
「?!」
 ぐいと引き寄せられ、男の胸に頭を押し付けられる。暴れようにも、いつの間にやら手足も絡め取られていてガッチリと抱きすくめられていた。どんな魔法だ?! てか慣れすぎじゃね?!
「暴れるなよ」
 男の苦笑する視線すら優しい。
 これは惚れられている……と勘違いするヤツである。きっと自分の、希望的観測もあるに違いない。恋は判断を鈍らせる。
 両想いの経験はないが、片想いなら、しょっちゅうだ。

「お前、先日の勇者か」
 なんとか言葉を絞りだす。完全に飲まれる前に、必要事項は確認せねば。
「だとしたら?」
 と、煙に巻く返答。
 何が目的だと訊いても、これも煙に巻かれそうだ。口説かれて終わりな気がする。
 抱きすくめられながら、そういえばと、ハッとした。
 これって、チャンスじゃね?
 これまで叶わなかった初体験が目前だ。そういや忙しすぎて、夜伽の男を調達してくるの、やめてたもんなぁ~……と思い出す。
 この男にどんな思惑があるのか知らないが、何か事を起こすなら、コトが終わってからだろう。とりあえず脱☆処女は叶いそうである。
 ここまで来ておいて、実は人間との交尾ができる身体ではありませぇ~ん♪ とか、男と交わると命を落とす呪いにかかってま~す♪ なんて言うなよ、頼むから……。
 誰にともなく祈って、男の顔を見る。
 こんな顔だったのか、と、改めて見つめる。戦っている間はお互い、私は化粧で、こいつは鎧で顔を隠していた。
 切れ長だが少し垂れ目で、人好きのする顔だ。伸ばした赤い髪。不敵な笑み。自信に溢れている。
「教えろ」
 男言葉をやめたいが、どうにも恥ずかしくて、つっけんどんになってしまう。それでも覚悟は決めた。
「昨夜のアレが、ディープキスとかいうヤツか?」
 という私の問いは想定していなかったらしく、勇者かも知れない男が、目を丸くした。その目に、みるみる顔が火照った。誘ったつもりのセリフだったが、誘うどころか興ざめだ。
 だが。

「違うな。軽く口を開けてみな」
 彼が私の顎に手をかけてきて、ちょっと感動してしまった。
 これが「顎クイ」ってヤツかー!
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