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8 色んな意味で熱い夜
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薄く開いた唇をこじ開けるように、彼の舌が侵入してくる。
「絡めて。吸ってみな」
言うと、また舌を差し入れてくる。
やべ、涎が出そう。
なぁんて我に帰ったら負けなのだ! コトの間は、目をつむって集中すべし!
男は目でヤり、女は脳でヤる生き物。決して、相手の鼻毛が気になるなぁとか、意外にお腹がタプタプしてるな、などとは考えてはいけない。
っていうか、でも、そういうの考えちゃう時って、ぶっちゃけ相手のことがあんまり好きじゃないってことだよね。
「ん……」
口中に押し入ってくる、アメーバみたいな物体。吸えと言われても、どうやれば良いのか。口の端から漏れた涎が首筋を伝っているのが分かる。
他人事のように自分を俯瞰すれば、かなりヤラシイ図なのには違いない。彼の指が私の首をなぞる。くすぐったさが背筋にまで走ってゾワリと身体を震わせ、腰が浮いた。
だが気持ち良いという感情ではない気がする。
私の腕を抱く彼の力も、包まれている幸せより、掴まれている不快感した感じない。
触られたくない。
気持ち悪い。
何で?
あの勇者なら、顔を見てなくても一目惚れだしとか思ってたはずなのに。
やっぱり、こいつ……。
噛み付くみたいに襲ってくる唇を押しのける。
「やっ」
張り手で、ようやく身体もベッドから突き飛ばすことが出来た。
「勇者じゃ、ないの?」
荒くなった息が整わない。好きと思えない相手なのに、抱きすくめられキスをされたら腰が砕けたのが、情けない。いや最初は好きだと思ったのだ。なのにキスの途中から、なんか違う! ってなった。
身体の芯が熱い。これが、男を求める身体なんだろうか。
「勇者さ。勇敢なる者、だ」
床に転がりながらも男は、あぐらを掻いて肩をすくめている。口の端を上げる笑い方が、あの愚直な戦い方をした彼の印象に合わない。
「魔王様なんぞに手を出そうとするなんて、大した勇者だろ?」
という言い方で、完全にキレた。
コイツあり得んわ!
「貴様!」
ベッドから飛び降りて、ぶん殴ろうとした。
が、空振りした。
スルリとかわす身のこなしは、勇者というより盗賊だ。
「あ」
盗賊と浮かんで、連想できた。
コイツ、勇者のお仲間にいなかったっけ?
「お前……」
指さし、わなわなと震える私の様子に、男は、
「あれ、バレた?」
と、軽い。
立ち上がってケツの埃を払う仕草をしている。失礼な。毎日リリカたちが掃除してくれてるんだ、塵ひとつ落ちてねーよ!
っていうか、こんな男のためにセクシーネグリジェ用意しちゃったのかと思うと、自分が情けなくて恥ずかしくて、憤死しそうだ。とはいえ百戦錬磨な男には、ちっとも効いてないようだけど。
「俺はベンジャミンの仲間、剣士のトイチさ。これでも剣の腕前はなかなかだぜ?」
言うと腰の後ろに手を回して、短剣を取り出すではないか。ってことは夜這いにかこつけた闇討ちか。
それならそれで、ヤることだけヤってから戦っても良かったんだけどなぁ……と、さっきまでは思っていたはずなのだが……。
うーん。生理的に「ムリ」となった相手に触られるのが、こんなに気持ち悪いとは。
自分の中で、最初はアリだと思った相手が、電車で痴漢に遭遇した時と同じぐらいの不快感に変わっていったのは、興味深い現象でもあった。
女心こえー。
一瞬だったわ。
ヤる方でなく殺る方に気持ちが切り替わる。トイチなる男も目つきを変えた。戦う男の目だ。
ああ、そっちの方がいいな、と笑いそうになってしまった。どっちが本心の目かなんて、見て一発で分かるじゃないか。
身体がたぎる。
その時。
「魔王様!」
バァンと扉が開いた。
「リリカ?!」
と、その後ろに、人間? 侍女じゃない。
男だ。
「魔王様に惚れたからとか言うから、かくまってあげてたのに! それが狙いだったなんて!」
と、リリカがトイチに、わめき出した。
お前かーいっ!
「絡めて。吸ってみな」
言うと、また舌を差し入れてくる。
やべ、涎が出そう。
なぁんて我に帰ったら負けなのだ! コトの間は、目をつむって集中すべし!
男は目でヤり、女は脳でヤる生き物。決して、相手の鼻毛が気になるなぁとか、意外にお腹がタプタプしてるな、などとは考えてはいけない。
っていうか、でも、そういうの考えちゃう時って、ぶっちゃけ相手のことがあんまり好きじゃないってことだよね。
「ん……」
口中に押し入ってくる、アメーバみたいな物体。吸えと言われても、どうやれば良いのか。口の端から漏れた涎が首筋を伝っているのが分かる。
他人事のように自分を俯瞰すれば、かなりヤラシイ図なのには違いない。彼の指が私の首をなぞる。くすぐったさが背筋にまで走ってゾワリと身体を震わせ、腰が浮いた。
だが気持ち良いという感情ではない気がする。
私の腕を抱く彼の力も、包まれている幸せより、掴まれている不快感した感じない。
触られたくない。
気持ち悪い。
何で?
あの勇者なら、顔を見てなくても一目惚れだしとか思ってたはずなのに。
やっぱり、こいつ……。
噛み付くみたいに襲ってくる唇を押しのける。
「やっ」
張り手で、ようやく身体もベッドから突き飛ばすことが出来た。
「勇者じゃ、ないの?」
荒くなった息が整わない。好きと思えない相手なのに、抱きすくめられキスをされたら腰が砕けたのが、情けない。いや最初は好きだと思ったのだ。なのにキスの途中から、なんか違う! ってなった。
身体の芯が熱い。これが、男を求める身体なんだろうか。
「勇者さ。勇敢なる者、だ」
床に転がりながらも男は、あぐらを掻いて肩をすくめている。口の端を上げる笑い方が、あの愚直な戦い方をした彼の印象に合わない。
「魔王様なんぞに手を出そうとするなんて、大した勇者だろ?」
という言い方で、完全にキレた。
コイツあり得んわ!
「貴様!」
ベッドから飛び降りて、ぶん殴ろうとした。
が、空振りした。
スルリとかわす身のこなしは、勇者というより盗賊だ。
「あ」
盗賊と浮かんで、連想できた。
コイツ、勇者のお仲間にいなかったっけ?
「お前……」
指さし、わなわなと震える私の様子に、男は、
「あれ、バレた?」
と、軽い。
立ち上がってケツの埃を払う仕草をしている。失礼な。毎日リリカたちが掃除してくれてるんだ、塵ひとつ落ちてねーよ!
っていうか、こんな男のためにセクシーネグリジェ用意しちゃったのかと思うと、自分が情けなくて恥ずかしくて、憤死しそうだ。とはいえ百戦錬磨な男には、ちっとも効いてないようだけど。
「俺はベンジャミンの仲間、剣士のトイチさ。これでも剣の腕前はなかなかだぜ?」
言うと腰の後ろに手を回して、短剣を取り出すではないか。ってことは夜這いにかこつけた闇討ちか。
それならそれで、ヤることだけヤってから戦っても良かったんだけどなぁ……と、さっきまでは思っていたはずなのだが……。
うーん。生理的に「ムリ」となった相手に触られるのが、こんなに気持ち悪いとは。
自分の中で、最初はアリだと思った相手が、電車で痴漢に遭遇した時と同じぐらいの不快感に変わっていったのは、興味深い現象でもあった。
女心こえー。
一瞬だったわ。
ヤる方でなく殺る方に気持ちが切り替わる。トイチなる男も目つきを変えた。戦う男の目だ。
ああ、そっちの方がいいな、と笑いそうになってしまった。どっちが本心の目かなんて、見て一発で分かるじゃないか。
身体がたぎる。
その時。
「魔王様!」
バァンと扉が開いた。
「リリカ?!」
と、その後ろに、人間? 侍女じゃない。
男だ。
「魔王様に惚れたからとか言うから、かくまってあげてたのに! それが狙いだったなんて!」
と、リリカがトイチに、わめき出した。
お前かーいっ!
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