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11 女は度胸と誰かが言った
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「魔王様と勇者様が結婚となれば、両国の絆が強まります。それに王家の血筋にも関係のない勇者様なら、おかしなお家騒動にも巻き込まれません。戦っているうちに愛が芽生えたとか言えば良いでしょう」
それは、まぁ……実際にそうだったりする。
私は。
「魔王様を討ち取ろうとする奸賊も牽制できますし、私も望まない結婚から逃れられて、ウィンウィンです」
さっぱりとした笑顔で紡ぐ言葉には、説得力がある。でも、ここはリリカの立場からすれば、リリカがベンジャミンと結婚するべきなのでは。
「リリカはどうするの」
「魔宮に戻って来たいです」
一辺の曇りもない瞳。本気で気に入ってくれているのだ、今の暮らしを。
「王都に追われず殺される不安もない日々を過ごせている、今が幸せなのです」
「リリカ……」
「このまま、侍女として雇い続けて下さい」
瞳が潤んでいる。涙をこらえてまで訴える言葉が、ここにいたい、などと。上司冥利につきるというものだ。
「魔王様、私どもも!」
と、扉がバーンと開いた。
このパターン、どっかで見たな。
「ここでお仕えしている日々を、私たちを、突き放さないで下さい!」
他の侍女ちゃんたちも、みんなが私に懇願してくれるのを見ていたら、私まで泣けてくる。彼女らを連れてきたこと、ここで働いてもらうことが間違いじゃなかったんだと肯定されて嬉しい。
「しないよ。今まで通り、働いてもらうから。ありがとう」
「魔王様~」
抱きつかれんばかりに喜んでもらえたら、そりゃ嬉しい。うっかり許しちゃう。
でも、王女と結婚とは別!
「とはいえ、あのさ。プラン2は、要らないんじゃないかな。結婚しなくても」
「いえ、要ります!」
と強い返事。
「両国の絆を深めるためにも、婚姻は重要です」
それは分からんでもない。
でもベンジャミンが嫌でしょうよ、こんな見た目が地味な、よりにもよって魔王だし。
と、思ったら。
「私も、私が魔王殿と婚姻を交わすことで物事が上手く運ぶのなら、これに越したことはありません」
どこまでも実直だ。
「いや、結婚なんて、真の愛を誓いあうモンじゃない……の……?」
言う言葉が段々萎んでしまった。
ベンジャミンが、顔を真っ赤にしているせいだ。
「え?」
ベンジャミンを見上げ、リリカを見る。戸口の侍女ちゃんたちも、何やらニヤニヤしている。この空気が分からないほど鈍感な訳ではない。
とはいえ、にわかには信じがたい。
「あの、魔王殿」
ベンジャミンからの呼ばれ方が「様」から「殿」になっている。
「はい」
声が上ずってしまった。
だってこんな、いきなりそんな流れになるとか思わないじゃんね?!
「アイツと同じにはなりたくないのですが……」
と前置きする、歯噛みする顔も何やら可愛く見える。
「いや、しかし」
などと、出しかけた言葉を飲み込んで、ウロウロと歩きだす。煮えきらない様子に、周囲で侍女ちゃんたちが「きぃいぃっ」と、なっている。
マントを貸したり、侍女部屋に匿ったりしていたのだ。その間の様子や会話から、彼女らは察しているのだろう。
っていうか私が考えていることで合っているなら、むしろベンジャミンから、だだ漏れってことなんだけど。
私から言うしかないか。
「今夜、」
と、口火を切った。もう、もし私の予想が違っても良いや。
立ち上がり、胸を張る。
「私の寝室に来るが良い」
よっしゃ震えずに言い切った!
侍女ちゃんたちが「カッコいいーっ!」と、沸いてくれていた。
それは、まぁ……実際にそうだったりする。
私は。
「魔王様を討ち取ろうとする奸賊も牽制できますし、私も望まない結婚から逃れられて、ウィンウィンです」
さっぱりとした笑顔で紡ぐ言葉には、説得力がある。でも、ここはリリカの立場からすれば、リリカがベンジャミンと結婚するべきなのでは。
「リリカはどうするの」
「魔宮に戻って来たいです」
一辺の曇りもない瞳。本気で気に入ってくれているのだ、今の暮らしを。
「王都に追われず殺される不安もない日々を過ごせている、今が幸せなのです」
「リリカ……」
「このまま、侍女として雇い続けて下さい」
瞳が潤んでいる。涙をこらえてまで訴える言葉が、ここにいたい、などと。上司冥利につきるというものだ。
「魔王様、私どもも!」
と、扉がバーンと開いた。
このパターン、どっかで見たな。
「ここでお仕えしている日々を、私たちを、突き放さないで下さい!」
他の侍女ちゃんたちも、みんなが私に懇願してくれるのを見ていたら、私まで泣けてくる。彼女らを連れてきたこと、ここで働いてもらうことが間違いじゃなかったんだと肯定されて嬉しい。
「しないよ。今まで通り、働いてもらうから。ありがとう」
「魔王様~」
抱きつかれんばかりに喜んでもらえたら、そりゃ嬉しい。うっかり許しちゃう。
でも、王女と結婚とは別!
「とはいえ、あのさ。プラン2は、要らないんじゃないかな。結婚しなくても」
「いえ、要ります!」
と強い返事。
「両国の絆を深めるためにも、婚姻は重要です」
それは分からんでもない。
でもベンジャミンが嫌でしょうよ、こんな見た目が地味な、よりにもよって魔王だし。
と、思ったら。
「私も、私が魔王殿と婚姻を交わすことで物事が上手く運ぶのなら、これに越したことはありません」
どこまでも実直だ。
「いや、結婚なんて、真の愛を誓いあうモンじゃない……の……?」
言う言葉が段々萎んでしまった。
ベンジャミンが、顔を真っ赤にしているせいだ。
「え?」
ベンジャミンを見上げ、リリカを見る。戸口の侍女ちゃんたちも、何やらニヤニヤしている。この空気が分からないほど鈍感な訳ではない。
とはいえ、にわかには信じがたい。
「あの、魔王殿」
ベンジャミンからの呼ばれ方が「様」から「殿」になっている。
「はい」
声が上ずってしまった。
だってこんな、いきなりそんな流れになるとか思わないじゃんね?!
「アイツと同じにはなりたくないのですが……」
と前置きする、歯噛みする顔も何やら可愛く見える。
「いや、しかし」
などと、出しかけた言葉を飲み込んで、ウロウロと歩きだす。煮えきらない様子に、周囲で侍女ちゃんたちが「きぃいぃっ」と、なっている。
マントを貸したり、侍女部屋に匿ったりしていたのだ。その間の様子や会話から、彼女らは察しているのだろう。
っていうか私が考えていることで合っているなら、むしろベンジャミンから、だだ漏れってことなんだけど。
私から言うしかないか。
「今夜、」
と、口火を切った。もう、もし私の予想が違っても良いや。
立ち上がり、胸を張る。
「私の寝室に来るが良い」
よっしゃ震えずに言い切った!
侍女ちゃんたちが「カッコいいーっ!」と、沸いてくれていた。
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