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どれだけ寒くても、城の内部が気になって仕方がなく、パルミラはあてどなく回廊を歩き続けた。
どこを居室にしてもいいと城の主がいい、城の主が、探検するといい、などといったから、パルミラを止めるものは、寒さばかりだったのだ。
古城の内部は入り組んだ造りだと、初めからわかっていたのに、目標もなく進み続け、また彼女は迷子のような状態になってしまった。
だがとても気になってしまうのだ。
この城は一体いつ頃に建てられたお城なのだろう。
彼女のが知る限りの城の中で、一番近いのは、戦乱の多かった時代に作られた城だ。
この城はその城よりもずっと軽やかな印象を受ける。
戦いの多かった時代に建てられたものではないのだ。
しかしそうなると、一体いつ頃のものなのだろう。
魔王の国との戦乱の後、聖なる森は閉じられたと聞く。
そして時折、魔の力と対抗すべく、生贄……それも人間を求めるのが、聖なる森だ。
そこから外れた場所に建てられた城なら、歴史が浅くてもおかしくはないが……あえてその森に接した場所に城を作るもの好きは、あまりいないだろう。
「これはとてもきれいな窓枠だわ……これは今では誰も作れない図案だと、先生がおっしゃっていたものだし……やっぱりこの城はとても歴史が長いのかしら」
彼女は足を止めて休憩する際に、近くの窓辺に腰を下ろした。その時に目に入った窓枠は、美しい曲線をたたえた窓枠であり、これのためには窓ガラスを特注しなければならない。
どんな時代であっても、特注品が高いものである事は、変わらない。
そしてこの城が、彼女の思う通りの年代に建造されたものだったならば、透明な不純物のないガラスの価値は、今よりもずっと高かった。
そして、数多の領土を、聖なる森に飲み込まれた女王の国は、今でも薄く透明なガラスと言う物は、貴重なもので、財産を誇示するものだった。
そう考えていくと、やはり……
やはりこのお城は、特殊極まりない城だ。
窓枠に埃一つないという事実と、そしてこの城でイオ以外の誰にも出会っていないことを考えると、掃除も魔法の力がこなしているのだろう。
人の理解しがたい力、制御できない力が働くこの城は、とても珍しい。
もしかしたら、人間が魔王の国を疎んじたのは、嫌ったのは、自分たちよりもずっと便利で、優れた事を成し遂げられるからだったのかもしれない……
こんな城が作れる種族と、敵対するなんてどう考えたって無謀だ。
そして大昔であろうとも、そんな簡単なことが分からなかったら、女王の国は滅んでいるはず。
今女王の国が滅んでいないのだから、当時も、女王を止める、見識豊かな賢人たちがいたはずだ。
「……っ」
少し考え事をしていた彼女は、不意に足を襲った痛みに、顔をゆがめた。眉をしかめ、区っと唇に力を込めた彼女は、自分の足を見て、目を見張った。
「寒いから、痛みも忘れてしまっていたわ……血も寒さで止まっていたのに、歩いていたら傷が開いてしまったのね……」
彼女の足に巻かれた、イオが巻いたのだろう布に、うっすらと血がにじんでいたのだ。
これで無理をして歩き続けたら、本当に足の傷が治らなくなってしまう。
それに、イオに頼んで、靴を調達した方がいいだろう。
パルミラは、自分が素足に布を巻いただけという事を、すっかり忘れていたのだ。
「ここからあの台所に戻るには、どの道が一番近いかしら……」
彼女が道を思い出そうとした時だ。
ぼう、という、何かが燃え上がり始める音が、彼女の耳に届いた。
ぱっとその音の方を見ると、回廊の反対がわ、彼女が休んでいる窓枠の反対側に、扉が一つあったのだ。
その扉の前の松明が、ぼうぼうと燃えている。
まるで彼女に、ここで休めと言わんばかりの、あからさまな炎だった。
「……どこを居室にしてもいいと言っていたのだから、ここでも構わないはずでしょう」
自分に言い聞かせるように彼女は、ゆっくりと呟き、その扉の前に立った。
「ここにする、といえばいいのかしら。“ここに泊まります”」
彼女がためらいがちに言ったその時だ。がしゃん、という音とともに、それまではその扉に存在しなかった錠前が、音高く現れた。
錠前の穴は、ありふれた鍵穴ではなくて、指を差し入れるかのような丸い穴だった。
ここに指を入れても、切られたりしないだろうか。
そんな事を考えながらも、ここはイオの城だから、酷い事はしない、と思い直し、そっと指を差し入れた。
錠前が瞬く間に、淡い青色の光と緑の光を放ち、その光が、錠前から扉に、音もなく広がった。
広がったその光を目で追っていた彼女は、錠前が当たり前の顔をして、しゃりん、と涼やかな音を立てて開いたため、そっと、扉を開いた。
どこを居室にしてもいいと城の主がいい、城の主が、探検するといい、などといったから、パルミラを止めるものは、寒さばかりだったのだ。
古城の内部は入り組んだ造りだと、初めからわかっていたのに、目標もなく進み続け、また彼女は迷子のような状態になってしまった。
だがとても気になってしまうのだ。
この城は一体いつ頃に建てられたお城なのだろう。
彼女のが知る限りの城の中で、一番近いのは、戦乱の多かった時代に作られた城だ。
この城はその城よりもずっと軽やかな印象を受ける。
戦いの多かった時代に建てられたものではないのだ。
しかしそうなると、一体いつ頃のものなのだろう。
魔王の国との戦乱の後、聖なる森は閉じられたと聞く。
そして時折、魔の力と対抗すべく、生贄……それも人間を求めるのが、聖なる森だ。
そこから外れた場所に建てられた城なら、歴史が浅くてもおかしくはないが……あえてその森に接した場所に城を作るもの好きは、あまりいないだろう。
「これはとてもきれいな窓枠だわ……これは今では誰も作れない図案だと、先生がおっしゃっていたものだし……やっぱりこの城はとても歴史が長いのかしら」
彼女は足を止めて休憩する際に、近くの窓辺に腰を下ろした。その時に目に入った窓枠は、美しい曲線をたたえた窓枠であり、これのためには窓ガラスを特注しなければならない。
どんな時代であっても、特注品が高いものである事は、変わらない。
そしてこの城が、彼女の思う通りの年代に建造されたものだったならば、透明な不純物のないガラスの価値は、今よりもずっと高かった。
そして、数多の領土を、聖なる森に飲み込まれた女王の国は、今でも薄く透明なガラスと言う物は、貴重なもので、財産を誇示するものだった。
そう考えていくと、やはり……
やはりこのお城は、特殊極まりない城だ。
窓枠に埃一つないという事実と、そしてこの城でイオ以外の誰にも出会っていないことを考えると、掃除も魔法の力がこなしているのだろう。
人の理解しがたい力、制御できない力が働くこの城は、とても珍しい。
もしかしたら、人間が魔王の国を疎んじたのは、嫌ったのは、自分たちよりもずっと便利で、優れた事を成し遂げられるからだったのかもしれない……
こんな城が作れる種族と、敵対するなんてどう考えたって無謀だ。
そして大昔であろうとも、そんな簡単なことが分からなかったら、女王の国は滅んでいるはず。
今女王の国が滅んでいないのだから、当時も、女王を止める、見識豊かな賢人たちがいたはずだ。
「……っ」
少し考え事をしていた彼女は、不意に足を襲った痛みに、顔をゆがめた。眉をしかめ、区っと唇に力を込めた彼女は、自分の足を見て、目を見張った。
「寒いから、痛みも忘れてしまっていたわ……血も寒さで止まっていたのに、歩いていたら傷が開いてしまったのね……」
彼女の足に巻かれた、イオが巻いたのだろう布に、うっすらと血がにじんでいたのだ。
これで無理をして歩き続けたら、本当に足の傷が治らなくなってしまう。
それに、イオに頼んで、靴を調達した方がいいだろう。
パルミラは、自分が素足に布を巻いただけという事を、すっかり忘れていたのだ。
「ここからあの台所に戻るには、どの道が一番近いかしら……」
彼女が道を思い出そうとした時だ。
ぼう、という、何かが燃え上がり始める音が、彼女の耳に届いた。
ぱっとその音の方を見ると、回廊の反対がわ、彼女が休んでいる窓枠の反対側に、扉が一つあったのだ。
その扉の前の松明が、ぼうぼうと燃えている。
まるで彼女に、ここで休めと言わんばかりの、あからさまな炎だった。
「……どこを居室にしてもいいと言っていたのだから、ここでも構わないはずでしょう」
自分に言い聞かせるように彼女は、ゆっくりと呟き、その扉の前に立った。
「ここにする、といえばいいのかしら。“ここに泊まります”」
彼女がためらいがちに言ったその時だ。がしゃん、という音とともに、それまではその扉に存在しなかった錠前が、音高く現れた。
錠前の穴は、ありふれた鍵穴ではなくて、指を差し入れるかのような丸い穴だった。
ここに指を入れても、切られたりしないだろうか。
そんな事を考えながらも、ここはイオの城だから、酷い事はしない、と思い直し、そっと指を差し入れた。
錠前が瞬く間に、淡い青色の光と緑の光を放ち、その光が、錠前から扉に、音もなく広がった。
広がったその光を目で追っていた彼女は、錠前が当たり前の顔をして、しゃりん、と涼やかな音を立てて開いたため、そっと、扉を開いた。
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