勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第三章~

第18話 勇者、プロレス大勝負!

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女力士……じゃなかった。女戦士マンモス富子とプロレスで勝負する事になった太郎。
何故プロレスなのか。そもそもなぜ戦わなくてはいけないのか。どれだけ疑問を抱えても考えるだけ無駄である。この学校に入学して以来、理不尽な出来事はどれだけあったのだろうか。

とは言えあんなに体格差のある女子とタイマン勝負となると流石に怖い。太郎はすでにへっぴり腰である。

「見てよ、戦う前から怖気づいてるわ」

教室の隅では女戦士が馬鹿にしている。

「大体あんな猫背の勇者見た事ないわよねー」

「ねこぜ……」

なんだかわからないが姿勢まで馬鹿にされている。

「太郎!お前姿勢悪いぞ!シャッキリしろやシャッキリ!」

負けず嫌いの安倍も太郎の姿勢に文句を言う。

「ん、わかった」

「それじゃ張りすぎ!反ってるし!」

「いいからさっさとリングに来いや!」

馬鹿げた会話に苛立った富子がリング上から声を掛けた。

「とにかく行って来い太郎!あんな肥満児に負けるなよ!」

そんな安倍の激励も虚しく、太郎は早速ロープに足を引っ掛けてすっ転んでいた。どてーっと無様に。

(っていきなりドジってるし!)

不安だ。不安しかない。安倍の不安がある中、富子と太郎はリング上で向かい合っていた。

「赤コーナー!セクシー&キュートな魅惑の女戦士!マンモス富子ちゃーん!」

「キャーッ富子ちゃん可愛いー!」

教室中の女子が富子に熱い声援を送った。まるでアイドルのような人気である。

「青コーナー!なにアレあいつが勇者とかウケるんですけど!へっぽこ勇者勇者太郎イサモノタロウ―!」

「コラー!猫背とへっぴり腰!おい!」

一方太郎は情けない体勢で今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。安倍の怒りの声も届いていない程緊張しているようだ。

「言っとくけど細かいルールは特になし。相手をKOさえすればいいわよ」

なお司会進行を担当しているのは、あの金髪少女である。今となってはいくら高飛車でも細身の美少女と話をしていた、あの時が懐かしい。

「さあいくわよ!」

いよいよ戦いのゴングが鳴った。勇者太郎対女戦士富子の戦いが、今始まる。

富子は早速ロープを利用して思い切り太郎へ飛びかかってきた。ラリアットである。
富子の右腕は見事太郎の顔面あたりに激突。一瞬で倒された。

「ああぁ……。ヒ、ヒデェ」

安倍も思わず息をのむほど、冷酷な戦いだったのだ。
リングに倒れ込んだ太郎に、富子は容赦なく襲いかかる。四の字固めである。

「ぎゃああああ!いたーい!いたーい!」

情けない太郎は泣きべそをかきながらのた打ち回っている。

「可愛くて強いこのあたしに勝てるとでも思って?」

命の危険すら感じた太郎は、勝負を投げ出してリングから飛び降りようとした。

「やだやだ~!もうやめる~!」

駄々っ子かお前は……。

「逃げんじゃないわよ!」

しかしあっという間に富子に捕まってしまい、今度は見事逆エビ固めを決められた。

「うぎゃああああ!痛い!重い!もうやめてー!」

最後にヘッドロックでKOされた太郎は、すっかり落ちたようで白目をむいている。

「ホホホ……。これが女戦士の実力よ。おわかり?」

残念だが富子の声は太郎に聞こえていない。結局太郎は指一本出す事もなく、一瞬にして倒されてしまった。
非道な勝負とは言え、こんなにコテンパンとは酷過ぎる。

「お、おい!こんなのアリかよ!酷過ぎるぞ!」

流石の安倍もこれには納得いかないようだ。しかし太郎は落ちている。これでは勝負できない。

(くそ~、こんなあっさり負けたらこっちのメンツが立たねーっつーの!)

そこで安倍は、回復魔法で太郎を手助けする事を考えた。HPを回復すれば、もう一度くらい戦えるだろう。
安倍は僧侶らしく、白魔法を使い太郎の体力を回復した。気絶していた太郎は目を覚まし、もう一度立ち上がった。

「あれ?なんか急に元気になっちゃった」

「ちょっとずるいじゃない!回復魔法を使うなんて!」

これにはクラスの女戦士たちも大激怒。非難殺到である。

「黙れ雌豚ども!魔法は使うななんてルールはなかっただろうが!」

ああ言えばこう言うのようにも聞こえるが、確かに何でもありのルールならばそれもありか……。

どうにか復活した太郎はそのまま第二ラウンドまで挑戦する事となった。

「太郎!もうやられんなよ!」

「フン!何度起き上がっても無駄よ!」

さて注目の第二ラウンドは……?

【一分後】

「やられた……」

「ホホホ!ざまあないわね!」

「あーもー!またやられてるし!」

描写すら書き飛ばされる勢いでやられた太郎。もうこれでは勝ち目がない。
それでも諦めない安倍は、再び太郎を魔法で回復した。

「今度こそ!今度こそ頑張れよ!太郎!」

「ういっす……」

【一分後】

「やられた……」

「お、俺ももうMPゼロだからな……。もう回復できねーからな……」

とうとうセコンドの安倍まで巻き添えでMP(魔力)が力尽きてしまった。さて、この終わりの見えない戦い、一体どんな結果になる事やら……。

【つづく】
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