勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第四章~

第24話 新たな仲間は…?

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剣士クラスで繰り広げられる死闘。それは勇者・太郎と剣士・江頭による戦いであった。
……すまん、本当はそうではない。剣士クラスの片隅で何故か安倍と富子が戦い始めてしまった。

「誰に土俵が似合うってのよ!?あぁー!?」

「ぴったりじゃねえかよ女力士が!!」

二人の激しい戦いに剣士クラスの連中も思わずこっちばかりを見ている。もはや太郎と江頭の真剣勝負など誰も見ちゃいない。

さて、太郎は悩んでいる。

(うう、とりあえず勝負おっぱじめたけどやっぱり怖いよ。今からでもやめられないかな?でも勝負しなきゃ仲間になってくれないだろうし。どーしよ……)

そして更に教室の隅には最早生きているのが不思議なほどズタボロになった侍野郎が居た。

「くっ、みんな拙者を無視しおって。武士の戦いを放棄するなんて拙者激おこぷんぷん丸でござる……」

残念だが激おこぷんぷん丸してもお前の事は誰も気にしていない。

「大体あの勇者あとから来たくせに戦いを横取りするなんてずるいでござる!そうだ!」

侍野郎は何かを閃いた。

「こうなったら先にあの邪魔な勇者をはっ倒すでござる。そうすれば拙者の勝負も再開できるはず」

クラス中の視線が太郎ではなく安倍と富子へ向いているのをいい事に、侍野郎は太郎の背後へと近付いた。そして峰打ちで太郎を攻撃しようとしたのだ。

(勇者よ、恨みはないが許すでござる!)

侍野郎は勢いよく刀を振り上げた。そして太郎はというと

(やっぱり戦うの怖い!謝って勝負取り消して貰おう!)

などと実にクズな考えをしていた。
侍野郎の刀が太郎に切りかかろうとする。

「すみません!やっぱやめ……」

「てやぁーっ!……あ?」

侍野郎の攻撃と同時に太郎は深々と頭を下げた。
本来太郎に当たるはずだった刀は空振りし、太郎の前に立っていた江頭目掛けて振り下ろされた。

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

太郎の目の前に真っ赤な血しぶきが飛び散った。
侍野郎の刀が直撃した江頭の体から大出血したのである。

「キャーーーーーーッ!!」

太郎と侍野郎は声を揃えて泣き叫んだ。江頭は出血多量で気絶。そして太郎は、血を見たショックで気絶してしまったのだ。

「おい!様子が変だぞ!誰か救護しろ!」

剣士クラスの連中も慌てている。この勝負、引き分けというより続行不可能……?

それから数分後。太郎は頬を叩かれた衝撃で目を覚ました。安倍が起こしてくれたようである。

「あれ?今って春休みだよね?」

「えっ記憶ってそこまで飛ぶもんなの!?」

ショックのあまり軽い記憶喪失を起こしているようだ。

「えーと、何があったんだっけ?」

「今な、戦闘すら始まってないのに二人とも戦闘不能になるというミラクルが起きたぞ」

そうだ、太郎と戦っていた江頭はどうなった?ふと見ると、先程の怪我はどうしたのやら無事立ち上がっているようだ。

「お前の怪我を直したのは俺の回復魔法だからな!俺の!」

安倍はいちいち恩着せがましく江頭に熱弁している。

「チッ、これじゃあ勝負にならねえ」

怪我は回復したようだが、すっかり江頭のやる気は消失してしまったらしい。

「うん、俺もそう思うよ。でも江頭くんって本当に強いね」

太郎も出来れば戦いたくないので、適当にお茶を濁して戦いを辞めようと思った。すると突然、江頭の態度が急変した。

「な、なんだと!?お前今俺の事なんて言った!?」

「だから強いって褒めたんだよ?」

「違う!俺は江頭じゃねえ!」

「えっ?えーーっ!?なにそれ!?どういう事!?」

なんという事なのか。今まで江頭だと思って戦っていた男は、実は江頭じゃなかったというのだ。

「俺の名前は『出川』だ!江頭じゃねえ!」

「ええーっ!?どうなってんの!?じゃあ俺が探していた江頭は!?」

その時、太郎の背後から感極まったような声がした。

「なんと……お主拙者を探していたのでござるか?」

拙者?ござる?まさか……。

「うそ~~!?お前が江頭!?間違えた!!」

なんと本物の江頭は、あの邪魔ばかりしていた窓から落ちても死なない侍野郎だったのだ!

「ま、まさか拙者を仲間にしてくれる勇者が現れるとは―!!」

あまりにもショッキングな事実に太郎は硬直している。一方本物の江頭は、自分が誘われて余程嬉しいのか感激で涙している。

「拙者今まで誰にも誘われなくてぶっちゃけ寂しかったでござる。なのに、わざわざ拙者を探しに来てくれるなんて!」

喜んだ江頭は太郎に抱きついた。

「拙者感激でござるー!一生ついて行くでござるよ勇者殿!」

「ぐえっ!やめて苦しい、あとキモい!」

予期せぬ真実に安倍と富子も喧嘩を辞めて呆気にとられている。

「マジかよ……。あいつが仲間になんの?」

「でも強い出川を(一応)倒したって事はもっと強いって事かしら?」

「あ、あの……えーっと」

太郎は未だ混乱している。

「よろしくでござるよ~!」

「う、うん……」

勢いのまま、太郎のパーティーには強い剣士ではなく邪魔だけど何故か不死身の男、江頭が仲間になってしまったのだ。
こうしてまた一人お荷物、いや仲間が増えた!きっと心強い仲間に違いないぞ!知んねーけど!

【つづく】
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