勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第五章~

第25話 妖精のたまご

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太郎率いる42番パーティーは、アカデミーの食堂でミーティングをしていた。

「なんだかなあ」

太郎が阿藤快のように呟く。

「仲間集め、本当にうまく言ってるのかなあ?」

不安そうな太郎に、先日仲間になったばかりの江頭エガシラ、フルネームは江頭不二丸エガシラフジマルが速攻口を挟んだ。

「何を言うでござる!拙者太郎殿のパーテーに入れて嬉しいでござるよ!仲間集めバッチグーでござる!」

パーティーに誘われた事が余程嬉しかったのか、江頭は太郎の手を握り叫んだ。

「まあ、一応安倍と富子とエガも加わった事だしパーティーらしくはなってるかな?」

「りゃ、略さないで欲しいでござる」

残念だがこの瞬間、江頭の呼び名はエガに決定した。これは避けられない運命である。

「とにかく今度こそはちゃんとした仲間を入れたいと思ってるんだ」

太郎は固く決意する。

「おう、またスカウトしに行こうぜ」

安倍も乗り気だ。

「今度こそ……?」

富子とエガは納得のいかない表情である。

さて、それぞれが各自の教室へ戻り、太郎と安倍も自分の教室へ戻ろうとした時だ。
先日太郎に助言してくれた占い師の少女と、ばったり出くわした。

「あ、この間の」

「あ、あの……!」

少女は少し頬を赤らめて、もじもじしながら話し始めた。

「私の占い、お役にたちましたか?」

「えっ!?」
(冗談じゃねーよ、あんたのせいでロクでもないのが仲間になっちゃったよ。なんて言えねーよな)

「ありがとう、参考になった……かな?あはは」

太郎は愛想笑いで答える。自分の占いが参考になったと聞いて、占い師の少女は嬉しそうだ。

「それはよかったです。ところで実は、太郎さんにまた不吉な相が出ていまして」

「!?」

「あんたいつも不幸やな」

安倍が素っ気なくツッコミを入れる。
占い師は多少申し訳なさそうにモゴモゴと口を開いた。

「それも、尋常じゃないレベルというか……正直かなり危険な相が出ていて、このままですと大変な事になりそうなんです」

「そ、そう……」

何故この少女は太郎の不幸ばかりを予知するのか。

「ちなみに不幸を避ける為のラッキーアイテムは『妖精のたまご』と出ています」

「妖精のたまご?なにそれ?」

「詳しい事は妖精クラスの方がご存知だと思います」

「よ、妖精クラス……?」

今まで幾つかの職業クラスを見てきたが、妖精というのは初耳だ。そもそも職業じゃないし。妖精って、あの童話に出てくるような、あの妖精?そしてたまごって?
謎が謎を呼ぶ話だが、とりあえず占い師が言うには妖精クラスで話を聞け、との事だった。

「駄目だ!謎すぎて怖い!妖精って何?たまごって?」

「わからん!けどなんとなく妖精のたまごって地方の銘菓っぽいな」

それはかもめのたまごである。

結局二人は占い師の助言を信じ、急きょ妖精クラスへ足を運ぶ事にしたのだった。

妖精クラスは勇者アカデミーの一番隅にあった。今まで一度も立ち入った事のないクラスだ。
教室の前は異様な雰囲気に包まれていた。教室の扉、壁、廊下の至る所に植物が自生しているのだ。
どこから生えているのか知らないが、妖精クラスの周辺だけ、教室が森に飲み込まれたような空間になっているのだった。

「安倍氏、どうしよう!怖い!」

もしかするとこの教室に足を踏み入れたら、二度と出てこられないのではないか。太郎の頭にそんな恐怖が過った。

「うるせえ、とっとと入れや」

安倍は強気だが、自分より先に太郎を入れようとしている。
仕方がないので太郎は、恐る恐る妖精クラスの扉を開けたのだった。

「失礼します……」

するとそこには、教室の外以上に緑に溢れた空間が広がっていた。
机、椅子、窓、至る所に蔓が絡み、天井まで葉が多い茂っている。森の中と教室が一体化したような不思議な空間だった。
なるほど、確かにこの場所には妖精が居てもおかしくない。で、肝心の妖精の姿だが……。

そこに居たのはごく普通の少女であった。いや、しいて言うなら普通の女の子よりも綺麗で可愛い、美人揃いの少女たちであった。
教室には少女の姿しかない。男子生徒は居ないようだ。森のような空間に美しい少女。それはまるで、お伽話か神話の世界に迷い込んだかのようであった。

「あれ?普通の女の子だ。妖精じゃないのかな?」

戸惑う太郎に、一人の少女が声を掛けた。

「あら?何か御用かしら?」

「あ、あの、妖怪クラスに用があって」

「妖怪じゃねーよ妖精だよ」

美しい少女はキレ気味にそう言った。見たところこのクラスの住人は普通の少女、言葉も普通に通じるらしい。
羽が生えていたり極端に小さかったりはしないようだ。

「えっと、妖精クラスって一体?」

少女は笑いながら答えた。

「私たちみんな妖精なのよ。ニンフという妖精なの。ここは勇者アカデミーで唯一職業ではなく種族で分けられたクラスなの」

「ニンフ?」

「山や川を守る自然界の精霊みたいなものよ」

確かにここは妖精クラスだった。教室に居る生徒全員が、妖精だというのだから。
では太郎が探している妖精のたまごも、このクラスにあるというのだろうか?

【つづく】
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