勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第六章~

第33話 謎の女・レイカ登場

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勇者アカデミーの上空に不審な人影があった。その人物は、宙に浮きアカデミーを見下ろしている。
長い黒髪に尖った耳。紫色のドレスを身にまとった謎の女。この女は一体何者なのか。
女は一人で口を開いた。

「ここが勇者アカデミーね。勇者なんてあのお方の『復活』には邪魔な存在なのよ!こんな学校潰してやるわ!」

これはもしや、あのお方こそ、あの、魔王とか言うそういうパターンか?ちなみにこの女の名はレイカ。
レイカは高飛車に高笑いをした。

「オーッホッホッホッホッホ!」

うるせー女だな。

勇者アカデミーではざわつく生徒達が悪の魔王について語っていた。太郎と安倍も、魔王についての話をする。

「悪の魔王だって。なんか急にゲームみたいな話になってきたね」

「そうか?愉快犯の妄言じゃねーの?」

安倍はイマイチ夢がない。
そんな会話をしていると、突然ホールの窓ガラスを割って何者かが侵入してきた。

「わーっ!?なになに!」

侵入してきたのは虎のような姿をしたモンスターであった。鋭い爪と牙を持ち、唸り声をあげている。

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■モンスター『ライガー』

種族・獣

虎とライオンを掛け合わせたような姿をしたモンスター。攻撃性が高く、鋭い爪や牙を使って人を襲う。


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「さあお行きなさいモンスターたち!勇者アカデミーを壊滅させるのよ!」

モンスターを操っているのはレイカだ。どうやらアカデミーを襲撃して、壊滅させるつもりらしい。
つまりこのレイカという女、少なくとも勇者アカデミーにとっては敵のようだ。

「わーい戦闘だ戦闘だ」

安倍は嬉しそうに戦闘準備する。

「勝手に戦ったら先生に怒られるよ!」

太郎は勇者らしくないセリフで安倍を引き止める。しかし網走先生は

「いや、生徒達にも実力がついて来たし、今日は思いっきり戦闘してもええで!」

と、快く戦いに送り出してくれた。

(え~?戦わなきゃいけないの……?トホホ)

太郎は予期せぬ戦闘にテンションだだ下がりである。

「よーし、俺たちも戦闘だ!」

安倍はリーダーのような口振りで戦いに出向いた。

(ああ、リーダーの俺が置いてけぼりに……)

「うおりゃあーっ!」

気合の入った声でモンスターを投げ飛ばしたのは富子。流石の女力士。じゃなかった、戦士。大型モンスターも持ち上げる腕力である。

「そおい!」

しかし勢いよくモンスターを投げ飛ばした先には運悪くエガがいた。

「ギャ~ッ!」

可哀相なエガは、モンスターの下敷きになってしまったのだった。

「富子殿―!」

「あんたが邪魔な位置にいるからー!」

富子とエガが無駄に揉めていると、やや子の元にモンスターが襲いかかろうとした。
そこへすかさず攻撃をしたのは安倍。

「無茶すんなよ、下がってな」

などと男前なセリフを言って、やや子を守ったのだった。本来ヒロインを救うのは主人公のはずなのに、役立たずの太郎はどこで何をしているのだ?

「あ、凄い。みんな活躍してる」

太郎はボーっと仲間の戦闘を眺めていた。

「なんや、お前が戦わなくてどうするんじゃ!」

網走先生が罵倒する。

「だって丸腰ですもん」

いつだったか盗賊に剣と盾を奪われて以来、未だ新しい装備を身に着けていない太郎。そんな状態で大丈夫か?

「まったく情けないやっちゃな。お前魔法は使えんのか?」

そんな軽々しく使えるとか使えないとか言える代物ではない。

「大抵の一般市民は普通使えません!」

太郎は即答する。しかし網走先生は意外な事を教えてくれた。

「アホ!勇者なら剣も魔法も使えて当然や!できないなら今から教えたる!」

「お、俺に魔法なんてファンタジーな技が……?」

すると網走先生はどこから取り出したのか分厚い魔法書を太郎に見せてくれた。

「じゃあ魔法ん中でも簡単でポピュラーな『召喚魔法』を教えたるわ。戦闘に関係ない第三者を引きずり出して代わりに戦わせるゲスい技や!」

どうも説明に悪意がある。
網走先生の特別授業により、太郎は急遽魔法を取得する事になった。そして20分後――。

「どや!?できそうか!?」

「はい!多分……」

たった20分魔法書を読んだだけで召喚魔法を取得したらしい。

「そんじゃまずは手を地面に向けて……呪文を唱える!やってみろ!」

太郎は右手を床に伸ばし、呪文を唱えた。

「アジャラカモクレン!」

「そんで、こう!ほい呪文!」

網走先生は右腕を空高く掲げた。太郎もそれを真似する。

「テケレッツノパー!」

(……本当にこんなんで魔法が使えるのかなあ?できなかったら俺はパー……。テケレッツノパーじゃねーよ、パーは俺だっつーの)

その時、太郎の足元から大量の煙が舞い上がった。

「わーっ!」

モクモクと立ち込める煙。その中から、天井に届く程の大きな物影が浮かび上がってきた。

「yes we  can」

「えっ?……えっ?」

【つづく】
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