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26話:森に潜む
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私たちは翌日から弾を一箱ずつ持参して帝国軍補給線のある森に潜伏するようになった。
「馬車の数は15台…」
「昨日より増えましたねミリア様」
森の中の起伏を利用して車列全体が見渡せる位置についている私たちからは、護衛の騎士や兵士たちが常に周囲を確認しながら馬車と共に移動している様子が見える。
後ろにはそれらとは別の兵士たち。
「今日は兵の補充もあるみたい」
ざっとルーナに数えてもらったけれど100人単位の兵士も同行している。
「入れ替えもあるでしょう…ですが100人程度での増員であれば戦線は動かないかと」
互いに1万人以上が睨み合っている中で100人が戦列に加わったところで大きくは影響しないだろう。
銃がない時代であればこの100人は重要な意味を持っただろうけれど…
「ミリア様、将校だけでなく、ここはある程度兵士も倒さねばならないかと…」
「気が進まないけれど戦線に加わりたくないって思わせるためってこと?」
「そうなります。ですが100人規模の移動ですから100人隊長がいるはずです。敵の部隊をまとめ上げようとするものを狙いましょう。それは将校と変わりありません」
「…わかったわ、ルーナ対象の選定をお願い」
「なるべくミリア様のお手が汚れないように努力いたします」
*****
「11時、鶏冠のある兜をつけた男」
「…あれね」
パスッ
本日5回目の引き金を引く。
敵との距離は500m以上。
1人目の護衛隊長と思われる帽子に羽飾りをつけた男を倒した後、敵が周囲を探すような動きを始めるも街道から10mの範囲しか探しておらず道中に留まる別の隊長格を射殺。
100人隊と思われうる部隊長が指揮を変わるもルーナの指示で私はそいつに引き金を引く。
そして、補給部隊護衛の副隊長と思われる男を射殺し、今撃ったのは全体の指揮を取ろうとした男を撃った。
ドッと赤いものが飛び散るのを確認した私はスコープから目を離し排莢する。
「ルーナ、敵の動きは?」
「混乱状態です。100人隊と思われるものたちは下の兵から後方へ転進、馬車も方向転換を始めました」
「今のうちに再装填する。ちょっと時間を頂戴」
「大丈夫ですミリア様、すでに敵に指揮を取るものはいません」
その言葉を聞いて安心して私はうつ伏せから起き上がり弾をこめる。
箱から出しておいた5発はポケットに入れてある。
1発ずつ装填をするため再装填には少し時間がかかるのよ。
今の私の心は"無"にちかい。
あれは人ではない、悪魔の化身ぐらいにしか思っていない…そう思わないと引き金なんて引けない。
あいつらは蛮族、人じゃない。
「…ミリア様?」
そっと私の肩にルーナが手を触れる。
「大丈夫、たぶん、おそらく、きっと」
「無理はなさらないでください…貴族の役目の一つとはいえお嬢様はまだ未成年なのですから」
領地を守る。
それが領主、貴族の役目。
その役目を果たすからこそ贅沢な暮らしが許される。
その矜持も私を支えている一つだ。
「馬車の数は15台…」
「昨日より増えましたねミリア様」
森の中の起伏を利用して車列全体が見渡せる位置についている私たちからは、護衛の騎士や兵士たちが常に周囲を確認しながら馬車と共に移動している様子が見える。
後ろにはそれらとは別の兵士たち。
「今日は兵の補充もあるみたい」
ざっとルーナに数えてもらったけれど100人単位の兵士も同行している。
「入れ替えもあるでしょう…ですが100人程度での増員であれば戦線は動かないかと」
互いに1万人以上が睨み合っている中で100人が戦列に加わったところで大きくは影響しないだろう。
銃がない時代であればこの100人は重要な意味を持っただろうけれど…
「ミリア様、将校だけでなく、ここはある程度兵士も倒さねばならないかと…」
「気が進まないけれど戦線に加わりたくないって思わせるためってこと?」
「そうなります。ですが100人規模の移動ですから100人隊長がいるはずです。敵の部隊をまとめ上げようとするものを狙いましょう。それは将校と変わりありません」
「…わかったわ、ルーナ対象の選定をお願い」
「なるべくミリア様のお手が汚れないように努力いたします」
*****
「11時、鶏冠のある兜をつけた男」
「…あれね」
パスッ
本日5回目の引き金を引く。
敵との距離は500m以上。
1人目の護衛隊長と思われる帽子に羽飾りをつけた男を倒した後、敵が周囲を探すような動きを始めるも街道から10mの範囲しか探しておらず道中に留まる別の隊長格を射殺。
100人隊と思われうる部隊長が指揮を変わるもルーナの指示で私はそいつに引き金を引く。
そして、補給部隊護衛の副隊長と思われる男を射殺し、今撃ったのは全体の指揮を取ろうとした男を撃った。
ドッと赤いものが飛び散るのを確認した私はスコープから目を離し排莢する。
「ルーナ、敵の動きは?」
「混乱状態です。100人隊と思われるものたちは下の兵から後方へ転進、馬車も方向転換を始めました」
「今のうちに再装填する。ちょっと時間を頂戴」
「大丈夫ですミリア様、すでに敵に指揮を取るものはいません」
その言葉を聞いて安心して私はうつ伏せから起き上がり弾をこめる。
箱から出しておいた5発はポケットに入れてある。
1発ずつ装填をするため再装填には少し時間がかかるのよ。
今の私の心は"無"にちかい。
あれは人ではない、悪魔の化身ぐらいにしか思っていない…そう思わないと引き金なんて引けない。
あいつらは蛮族、人じゃない。
「…ミリア様?」
そっと私の肩にルーナが手を触れる。
「大丈夫、たぶん、おそらく、きっと」
「無理はなさらないでください…貴族の役目の一つとはいえお嬢様はまだ未成年なのですから」
領地を守る。
それが領主、貴族の役目。
その役目を果たすからこそ贅沢な暮らしが許される。
その矜持も私を支えている一つだ。
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