不本意で飼う事になったペットにたっぷり皮肉をこめた名前をつけてやった話〜やっちまった実話集〜

珊瑚やよい(にん)

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不本意で飼う事になったペットにたっぷり皮肉をこめた名前をつけてやった話

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 ついに飼ってしまったんだ。オイラんちにアイツが来てしまったんだ。信じられん。その話をしてもいいか?

 こないだ地元の水族館でお祭りがあったんだ。そこで金魚すくいというトラップに娘が見事ひっかかっちまった。まぁ100円だったし良しとした。良心的な値段だろ?竹内力顔の的屋だと500円払ってお釣りがちょっと返ってくるくらいだからな。

 うちの娘は鈍臭い。だからやった所で捕れないだろうと踏んでいた。結果はまぁ当然のごとく全敗。心の中で、ああ良かったと胸を撫で下ろした。

 ドンマーイと機嫌良く言いながら、破れた網を交換する列に並んだ。網を渡すだけなのに何でこんなに並んでるんだろう?と疑問を持っていたんだが、近づくに連れてその答えがわかった。網を交換する時にスタッフさんがこう言っている声が聞こえてきた。


「捕れなくても、金魚1匹か缶バッチと交換できます。どちらにしますか?」


 その恐怖のシステムに震え上がる。なんせうちには魚を飼うグッズがないし、知識もないし、義理もない。オイラは娘に一生懸命缶バッチね、缶バッチ。缶バッチもらってね。と言い聞かせた。娘も首を縦に振っていた。

 よしよしと思っていたら、あっという間にオイラたちの番になり、スタッフさんに例の質問をされたんだ。


「金魚1匹か缶バッチと交換できます。どちらにしますか?」


 すると娘の反応がなかったので、チラッと顔をみた。そして次の瞬間……


「……金魚」


 オイラは凍りついた。いや、フリーズしている場合じゃない。急いで缶バッチに変更してもらわないと……と思ったら娘が……


娘「ねぇお母さん」


 と呼んだので振り返ったが、娘は黙ったままこちらを見ているだけで特に何も言わなかった。

 用事ないんかいっ!!用事ないなら呼ぶなよ!!と思いながら、さぁ、早くスタッフに言わなきゃと思った時にはすでに遅し。スタッフが手慣れた手つきで金魚を袋に入れてオイラに差し出してきたので断れなかった。どんだけ入れるの速いんだよ。スピードスターか。

 金魚を受け取った娘は目をキラキラさせて喜んでいた。オイラはその横で苦笑いをしている。今晩のおかずにでも出すか?

 さすがのオイラでも水道水では飼えない事くらいは知っていた。家に帰ったらバケツの中に水道水ためて、その中に入れておけば2、3日でおだぶつだろうと考えていた矢先。


「お母さん。死んだら可哀想」 


 エスパーか!?なんでわかった!?娘の察しの良さは恐ろしい。しかもそんなウルウルキラキラな瞳でこっちを見つめるな。心の中でクソッと呟き、仕方なく飼い方をネットで調べる事にした。

 金魚のレシピ……いやいや、違う違う。金魚の飼い方……すると……

 うん。これ総額いくらだよ。しかも水槽とか、ろ過装置意外に水質を保つためのバクテリアや砂利を入れないといけないらしい。あと掃除グッズ。面倒くせぇ。それなのになぜか旦那もノリノリで。


「いい経験になるから買ってもいいんじゃない?」


 だってさ。子供の見方かコラァァァ。管理するの絶対オイラじゃん。そんで、ため息を吐きながらホームセンターに行ってグッズを一式買い揃えてきたんだ。総額10000円。うひょぉぉぉぉ。

 レジに行く気がしない。ペットコーナーに同じ種類の金魚が1匹80円で売られてるの発見してオイラの顔が大仏みたいなった。チーン。

 100円の金魚に10000円のグッズを買う羽目に。だからたっぷりの皮肉をこめた名前をつけてやった。その名は……





さしみ。
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