優秀過ぎてSSランク冒険者に任命された少女、仕事したくないから男装して学園に入学する。

コヨコヨ

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五話

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 コルトは、Dランククラスから早々に出て行った。

「さっきのコルト・トルマリンだろ。入学試験主席の秀才と知り合いだったのか?」
「知り合いというか、さっき学園長室でばったり会ったんだよ」

 私はコルトの話など、どうでもいいと思い、手短に伝える。

「そんなことより、さっきまで何の話をしていたの?」
「どうしたら強くなれるのかって話し合っていた」
「そりゃあ……、訓練するしかないと思うけど」
「そうだよね。キアスくんがそういうなら、間違いない」
「じゃあ、俺とライトは放課後に特訓だっ」

 フレイは重箱の中身をがつがつと食っていく。ライトが大きな声で返事すると、人参を与えられた兎のようにパンをむしゃむしゃと食べていく。

「私、放課後は教室に少し残らないといけないから、私のことは気にせず特訓していて」
「わかった。じゃあ、俺達は学園の広場で特訓してくる。用が済んだら来てくれ」
「う、うん。行けたら行くよ……」

 ――特訓は面倒だけど二人が特訓しているところは見たい。行くか行かないか迷うところだ。

 昼食後、午後の講義が始まり、三限、四限、五限が終わった。
 時があっという間に過ぎていく。講義は面倒くさいが、まあ、仕事よりマシだ。

「高等部の講義を受けて感じたと思うが、毎日勉強しないとついていけなくなるぞ。体を動かすだけじゃなく、頭も使っておかないとひどい目に合うからな。俺は言ったぞ、後で泣き着いてくるなよ」

 ゲンナイ先生は五限の後、教室に戻ってきて連絡事項を話し、出て行った。

 ――担任の先生と言うより、連絡係みたいだな。

「しゃっ、終わった。遊びに行くぞ」
「おお、せっかく三大学園のエルツ工魔学園に入ったんだ。他の学園の女子を落としに行こうぜ」
「それいいな。理的な俺達に惚れさせてやろうぜ」

 教室にいた男子のほとんどが教室から出て行った。皆、遊ぶことの方が勉強することよりも大切だと考えているらしい。うんうん、遊べるときに遊んでおいた方がいいと私も思うよ。

 私はすでに学んでいた分野は軽くおさらいし、初めての分野は講義内容を見直して予習復習を完璧にこなした。いつの間にか教室にいたのは私一人。

「すまない、遅くなった。はは……、やはり勉強しているのは君だけか。思った通りだ」

 主席合格を果たしたコルトが、尊敬の念が孕んだ笑みを浮かべ教室にやって来た。

「皆、勉強することよりも遊ぶことの方が大切なんだと思います」
「まあ、彼らは先が見えていないだけだと思う。君は気にせず、勉強を続ければいい。じゃあ、私に着いてきてくれ」

 私は勉強道具をトランクにしまい、彼の後を追う。

「せ、生徒会室。に、逃げ……」

 私は生徒会室と書かれた教室を前にして逃走を試みた。嫌な予感しかしない。

「逃がさないよ」

 コルトは私の手首をがっしりと掴み、離さない。無理やり振り払おうと思えば出来るが、そうしたらコルトの腕が引き千切れそうだったのでやめておく。

「優秀な成績を収め、学内活動や評価を上げれば平民でも上のランクに昇格できる。なら、やらない手はない。さあ、行こう」

 コルトは私の手首を握りながら生徒会室の扉を三回叩き、扉を開けた。

「失礼します。一年Sランククラス。コルト・トルマリンです。今日からよろしくお願いします」

 コルトは生徒会室に入って早々に自己紹介し、頭を下げた。もう出来る社会人のよう。

「うぅ。一年Dランククラス、キアス……です」

 私は名前だけ呟き、無関係だといおうとした。だが。

「よく来てくれた。入学試験首席のコルトくんと特待生のキアスくんだね。学園長から話は聞いているよ。僕の名前はパッシュ・アーノルド。生徒会長だよ。よろしくね」

 学園長室にもあった高級な仕事机の奥に小柄で顔が良すぎる男が立っていた。
 背丈は一五五センチメートルほど。灰色の短髪で猫のような癖っ毛だ。遠目から見たら女子と思ってしまうほど可愛い顏はライトと同じかそれ以上。男でそんな美貌を持っていていいのか。
 首に付けられている三年生を証明する古代数字の記章とSランククラスを証明する白金の記章が付けられていた。
 昨日見た時はここまで小さいと思わず、雰囲気で背丈を覆すほど大きく見せられるのかと感心した。

「君たちの実力は昨日の入学式で見せてもらった。生徒会に入るに申し分ない入学試験の点数と実力を兼ね備えている」
「わ、私は入ると一言も言っていませんけど」
「生徒会は楽しいよ。荒くれてるバカを粛正したり、威張ったり、他学園の女の子達とイチャイチャしたり……」
「生徒会長、嘘を言うのは止めてください。学園内の風紀が乱れます」

 椅子に座っていた眼鏡をかけた賢そうな男性が声を上げた。

「初めまして、風紀委員長のハンス・バレリアと言います。生徒会長は虚言壁なので、大概の話は真面に聞かないでください」

 ハンスさんは立ち上がり、軽く頭を下げた。身長が一八〇センチメートルほど。細身だが、必要な筋肉はある。左腰に掛けられた剣の綺麗さから見て、几帳面な方なんだろうなという印象を受けた。

「もうー、酷いなー。僕は嘘を滅多につかないよー」

 パッシュさんはハンスさんの背中に抱き着く。

「なにかあれば、このハンスに言ってね。大概やってくれるから。ハンスがいなかったら僕は生徒会長をできないもん。ほんと助かっているよー」
「まったく、抱き着かないでもらえますかね。不愉快です」

 ハンスさんは遠くを見ながら眼鏡を掛け直し、きっぱりと言った。

「もうー、照れちゃって。毎日一緒にお風呂に入っている仲なんだから、恥ずかしがらなくてもいいのにー」
「なっ、それは生徒会長がお風呂に入るのも面倒だと言ってすぐ寝るからで……」
「ほんと、ハンスは面倒見がいいよねー。もう、僕と結婚してよー」

 パッシュさんは猫のようにハンスさんに擦り寄っていた。

「お、おお、おおおっ」

 私の視界の先で男同士がイチャツイテいた。これが『禁断の書』の話ではなく天然物か。
 パッシュさんとハンスさんのイチャイチャはどんどん大きくなっていった。

「えっと、お二方、喧嘩は駄目ですよ」

 コルトはパッシュさんとハンスさんの面白い展開を律儀に止めようとした。

「コルト。ちょっとまとう。えへへ、エヘヘへ……」
「ちょ、キアスくん、鼻血が出てるじゃないか」

 コルトは花の香りがするハンカチをすぐに貸してくれた。

「あ、ありがとう、ちょっと頭が沸騰しちゃって」
「きゃっ、は、ハンス、今、お尻触った。もう、僕は男だよー。変な目で見ないで」
「触ってません。あと、見てませんっ。生徒会長が可愛すぎるからと言って決して見てませんよ。何で、男なのにそんな華奢な体をしているんですか」
「僕だってもっとムキムキになりたかったけど、成長が止まっちゃったんだ。こんなかよわいい僕を厭らしい目で見るなんて、ハンスの変態」

 パッシュさんは小さな握り拳を作る。胸にぎゅっと押し当てながら乙女のような愛らしい顔になり、男子とは思えないほど甲高い声で叫んでいた。

「グぬぬ、か、可愛い……」

 ハンスさんは歯を食いしばり、眼鏡が割れそうなくらい気を張っている。

「んんっ。まあ、こんな感じで毎日楽しく活動している生徒会だよ。二人共入ってくれてありがとう」

 パッシュさんはすぐに切り替え、私達に笑顔を見せてくる。まるで、今までのくだりが演技のよう。

「わ、私はここで上手くやっていけるだろうか……」

 コルトはさっきまでやる気満々だったのに覇気が抜け、苦笑いしていた。
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