優秀過ぎてSSランク冒険者に任命された少女、仕事したくないから男装して学園に入学する。

コヨコヨ

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十一話

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「ライト、今は実習中だ。気を引き締めないと本当に死ぬぞ」

 フレイはライトの襟首を持ち、姿勢を正させる。体が出来上がっているからか銀色の鎧を身に纏うと様になっていた。

「ご、ごめん。気を引き締めるよ」

 ライトは頬を数回叩き、凛々しい表情を浮かべる。だが、やっぱり可愛い。

「この場から半径一キロメートル圏内で魔物と交戦。その結果を随時報告。制限時間は六〇分。時間終了と同時に指笛を吹く。それを合図に戻ってこい。なにかあれば俺にすぐに伝えろ」

 ゲンナイ先生は魔物や大型の動物を威嚇するように大声を出した。

「了解」

 私達も声を出す。学園の講義というより、騎士団とかの訓練に似ているかもしれない。

 私とライト、フレイの小隊はとりあえず森の中を歩く。すると、他の小隊と距離ができた頃、体長が二.五メートルを超える大型の魔物が茂みから姿を現した。

「お、オーク。なんでいきなり」

 フレイは表情と同じく、身が硬直していた。ゲンナイ先生の指示では、オークは討伐対象外。となれば、すぐに撤退しなければならなかった。

「フレイくん、早く逃げるよ」

 ライトは大型のオークに動じず、フレイの手を取り、茂みに非難。何だかんだいってライトの方が冷静だ。
 全身が緑色っぽいオークは茂みに隠れた私達を無視し、別方向に歩いて行った。

「す、すまない、ライト。いきなりの出来事で咄嗟に判断出来なかった」
「ううん、ぼくも怖かったけどフレイくんが前に出てくれたから動けた」

 フレイとライトは茂みの中で手を繋ぎながら寄り添って呟いていた。
 その姿を見て、私は茂みの中に隠れながら『禁断の書』を取り出し、羽根ペンを使って文字を書こうとするが、指が震えだした。

 ――え、な、どうなっているの? こんなこと、初めてなんだけど。オークなんて何百体も駆除してきたのに。わけわかんない。

 安全を確認すると、指の震えは止まった。すると、後方からオークの声が聞こえた。

「うわああああああああっ」

 他の小隊がオークと鉢合わせたのか、男達が叫び声をあげる。

「怪我人が出る前に倒した方がいいよな」

 私は羽根ペンに魔力を流し、茂みからオークの頭部目掛けて投げる。魔力で操作し、木々の間を縫って飛ぶ羽根ペンは、勢いそのままにオークの側頭部に直撃。卵の殻に裁縫針が突き刺さったように羽根ペンが貫通した。
 白かった羽根ペンは魔物の黒い血液を吸い、黒く染まる。

「もう、これは普段使いできないな」

 私は手元に戻って来た羽根ペンを燃やし、灰に変えた。
 オークを倒したころ、ゲンナイ先生が生徒たちの叫び声を聴き着けて颯爽と到着した。

「な……、もう倒されている。いったい誰が?」

 ゲンナイ先生は辺りを見渡していた。
 私は見つからないように茂みに隠れたままの状態で待つ。数分経ち、私たちは茂みから出た。

「ライト、いつまで手を握っている気だ?」
「あっ、ごめん。フレイくんの手が大きくて安心できたからつい……」

 ライトは目を大きくさせると、フレイの手をすぐに放す。

「さあ、気を取り直して魔物を倒しに行くよ」

 ――魔法は普通に仕えたな。さっきのは何だったんだろう?

 少し歩き、一体のコボルトに遭遇した。狼が二足歩行しているような見た目の魔物で、群れで行動している時は危険だが一体だけなら今の学生でも問題なく倒せる。

「俺が攻撃を受け止める。その間に、キアスとライトは攻撃してくれ」

 フレイは一番に突っ込み、コボルトの持っている棍棒を剣で受け止める。
 ライトは剣を鞘から引き抜き、両手で柄を持つ。コボルトの側面から穂先を首に突き刺した。コボルトの首から黒い血が流れ、絶命する。

「よ、よし。倒したぞ」

 フレイは肩の力を抜き、呼吸を整える。ただのコボルトを倒しただけに過ぎないが、学生たちからすれば、慣れない作業のようだ。

「すぅ、はぁ……。ん? なんで、私まで呼吸が止まっていたんだ?」

 私はフレイとライトがコボルトと戦っている最中に変に集中していたらしく、息がつまった。

 ――何気に、だれかと一緒に魔物と戦うのは初めてだったから、緊張したのかな。

「うう……、魔物を始めて倒したけど、なんか気持ち悪いな」

 ライトはコボルトの首を折った感触が残っているのか、手をぎゅっと握る。

「まあ、そのうち慣れるよ。魔石を抜き取ってゲンナイ先生のところに報告に行こう」

 私達はコボルトの魔石を持って先ほどまでゲンナイ先生がいた場所まで戻る。すると小隊の半数が座り込んでおり、石造のように固まっていた。

「ゲンナイ先生、コボルトを討伐しました」

 私は魔石をゲンナイ先生に見せる。

「キアス達の小隊は無事みたいだな」

 ゲンナイ先生はコボルトの魔石などどうでもいいといわんばかりに、胸をなでおろしていた。

「なにかあったんですか?」
「森の中にオークが大量に現れた。訓練は危険だと判断し、実習の中止を余儀なくした」

 どうやら、ゲンナイ先生は学生を守る義務があるからこの場から離れられないらしい。
 周りの生徒を見渡すと全員が戻ってきているわけではないようだった。

「なるほど、オークの大量発生に遭遇してしまったという訳ですか。ゲンナイ先生が動けないのなら、残りの学生を私が探してきましょうか?」
「な、危険だ。相手はオークだぞ。一年のDランククラスの者達が戦ってどうにかなる魔物じゃない」

 ゲンナイ先生は私の安全を考えてくれた。どうやら彼は私がSランク冒険者だったと知らないらしい。

「私はゲンナイ先生と戦えるだけの力を持っています。急がないと他の生徒が危険です」
「確かに、キアスなら他の生徒よりは安全か……、だが」
「ゲンナイ先生、キアスが行くなら俺も行きます。小隊の仲間ですから」

 フレイは私の隣に立ち、姿勢を正した。

「実習のためだけに小隊を組んだだけだから、律儀についてこなくても……」
「もちろん、ぼくも行きます」

 ライトはフレイの隣に立ち、大きな声を出す。

 私は訳がわからなかった。フレイとライトはオークに対して逃げるしか選択肢を持ち合わせていない。なのに、他の生徒を救助するために危険を冒すなど、どういう理屈でそうしようと思ったんだ。

「自分の力量を見極めろ馬鹿者め。そういうやつから死んでいくんだぞ」
「負傷者がいたら人手が必要なはずです。俺とライトはオークを一度見たので慣れています。戦闘は避け、救助に専念します」
「人を探すなら三人の方が、効率がいいはずです」

 フレイとライトは人助けのために強くなりたいと私に指導を頼んできた。
 今、危険な状況に陥っている生徒がいると考えたら助けたくて仕方がないと思っているのだろうか。自分たちの実力が伴わないとわかっていて、人助けする必要があるのか。

 ――私にはわからない。

「ゲンナイ先生、私が二人を守ります。生徒たちの捜索許可をください」

 私はフレイとライトの信念を尊重し、生徒の捜索に同行してもらうと決めた。

「……わかった。危険だと思ったらすぐに戻ってこい」

 残っている小隊は八組。
 普通なら待つのが正解だが、私なら前に出ても問題ない。曲がりなりにもSランク冒険者だ。もしオークに後れを取るようなら冒険者ギルドのランク付けを見直した方がいい。
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