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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

死んでも生き返れたらどうしますか?

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「そうか、プルスは死んでも生き返るもんね。回数の制限とかないの?」

「契約者の主が死ぬまでですね。主が死んだら私も卵に戻ります」

「はぁ、なるほど……。つまり、昔は僕以外の人がプルスと契約をしていたんだ」

「はい。でも相当昔なので、私も久々に外の空気が吸えて魂の炎がとんでもなく燃え盛っていますよ!」

 プルスはピョンピョンと跳ねながら、叫んでいる。

「昔ってどれくらい前なの?」

「さぁ、私は知らないですね。特に気にしても仕方ないですし。この世界が造られてから生きてますし」

「あれ……。もしかしてプルスってすごいヒヨコなの?」

「そうですよ。私は凄いヒヨコなんです。もっと褒めてください」

 プルスはさらに胸を張り後ろにふんぞり返っている。もう、そのまま後ろにひっくり返りそうだ。

「それじゃあ、ペガサスとも知り合いなんじゃない? ペガサスも神獣っぽいし」

 僕はディアさんの召喚獣であるペガサスの名を出した。見かけからしてたの召喚獣とは力の差が歴然で、召喚獣かと疑っていたので、やっと合点がいった。きっとペガサスも神獣なのだろうと……。

「ペガサスも今この世界にいるんですか?」

 プルスは怪訝そうな顔をした。ヒヨコなのに、とても身が引き締まる眼力で恐ろしい。

「あれ、知り合いじゃないの?」

「ちっ! あいつとは昔、何度か殺し合いました。毎回毎回強い人間と契約する運のいい奴なんですよ。でも今回なら、勝てるかもしれないですね。主がペガサスを知っていると言うことは扱っている人間がだれか知っているんですね」

「う、うん。ペガサスの契約者は確かにとんでもなく強い人だよ……。人生で受けた傷が一回しかないんだって」

「ちっ! 豪運な奴め……」

 プルスは嘴をギリギリとすり合わせ、眼を釣り上げる。

「なんか、プルス、顔が怖いよ……」

「どうでしょう、この悪役っぽい個性わ?」

 プルスは悪人顔から、のほほんとしたヒヨコ顔に変わる。

「く……騙された僕がバカだった」

「あ、勘違いしないでほしいんですが別に嘘は言っていませんよ。ちょっと喋り方を変えただけです。ちゃんと昔に数回、殺しあってますし勝率は……一割りくらいです。で、でも、主なら絶対に勝てますよ! ペガサスなんて目じゃありません!」

 プルスは翼をはためかせ、焦っていた。

「いや、戦わないよ。そもそも知り合いだし……」

「そうなんですか? でもどうなるか分からないので、これからも鍛えていきましょうね」

「まぁ、昨日のブラックベアー戦みたいにはなりたくないから、鍛錬は続けるけど、僕がディアさんに勝てる気がしないんだよな……」

「なるほど。今回、ペガサスが選んだ相手はディアと言う人なのですね」

「そうなるのかな。僕の同級生で騎士養成学校主席、剣と魔法の天才。家は王都随一の名家、王家直属の護衛に着いている騎士たちの長官を父に持ち、聖女とうたわれた女性を母に持つ、サラブレッドだよ」

「いかにもペガサスが好きそうな人間ですね……。まぁ、いずれ出会うでしょうし、加護の使い方でもしっかりと覚えておきましょう。さ、今すぐ強い敵と戦いに行きましょう!」

 プルスは僕のもとに飛び跳ねながら近づいてくる。

「嫌だよ……。戦いに何て興味ない。僕は今生きているだけでも十分ありがたいんだよ。自分から危険な戦いに身を投じるなんて、時間の無駄使いでしかない」

「ぴよ……。主は戦いが好きではないのですか? あんなに鍛えているのだからてっきり相当な戦闘狂なのだと思っていましたよ」

「何でそうなるんだよ……。逆に僕はビビりまくって全然戦いにならない臆病者だよ。だから自分の身を少しでも守れるように鍛錬をしていたんだ」

「ぴよ~。そんな人間は始めて見ました。この時代では目が合ったら殺しあわないのですか?」

 プルスは首を傾げ、恐ろしい言葉を口にする。

「殺しあわないよ! 何その時代、怖すぎるでしょ!」

「ぴよ……。どうやら私は卵の状態で相当眠っていたようですね……。ま、たまには平和な世の中も悪くないですね。戦いに明け暮れるのもいいですが、平和に朝を迎えるのも乙ですし」

 プルスは空気をいっぱいに吸い込み、深呼吸を行っている。

「プルスがいったい、いつの時代を生きていたのかは知らないけど、僕達は友達って関係でいいんだよね?」

「友達……。そうですね、主と友達になると言う関係は初めてですがそれもまた楽しそうなので、問題ないです」

「友達第一号がヒヨコなのはちょっと否めないけど、でも……初めての友達が出来たぞ。なんかすごく嬉しい」

 僕はプルスを両手ですくい上げ頭に乗せる。

「ぴよ~、友達……。いい響きですね」

「そうだね。あまりここで話してても仕方ないし、そろそろ出発しようか」

「そうですね。主の強さも確かめておきたいですし、とりあえずはあの森を突っ切って火山の麓まで行きましょう」

「だから……。僕は強くないんだってば。そんなに期待しないでよ」

「強くなかったら強くなればいいんですよ。さぁ、出発です!」

「はぁ……。魔物が出ても逃げるからね」

 僕はボロボロの一張羅を着て籠を背負い、一本の石槍を手に持ち、予備の二本は籠と背中の間に挟む。

 今回、街まで持っていく素材は岩の中に入っていた金属だ。綺麗な石たちは僕が磨きたいから置いていく。でも、角ウサギの魔石は高く売れるはずなので持っていく。他の角ウサギの素材は比較的軽いので同じく持っていく。

「うん、これくらいでいいか。とりあえず、森を抜けないと話にならない。昨日のブラックベアーよりも強い魔物が出てこられたら僕じゃどうしようもないから、プルスにお願いするけど、大丈夫?」

「はい、問題ありません。でも、昨日のデカブツより強い魔物はこの森にいる気はしませんよ」

「そうなの?」

「普通、頭をぶち抜かれたら大抵の生き物は死にますからね。あのデカブツは相当強い個体のはずです。だから怖がらずにどんどん進んじゃってください」

「そうなんだ……。昨日のブラックベアーそんなに強かったんだ。なら、生きている僕は、あの森に入っていっても生き延びれるかも……」

「そうです、そうです。主なら大丈夫ですよ!」

「プルスにそう言われると、少し気が緩んじゃうな。気を引き締めていかないと小さな油断が命取りになる」

「本当に慎重な人なんですね……主。加護の『超再生』があるのですから、多少無理しても死にませんよ」

「そう言う問題じゃないの。気持ちの問題だよ。命は一つしかないんだから大切にしないと」

「死んでも生き返れるのにですか?」

「へ? 死んだら終わりでしょ。確かにプルスは生き返ってたけど、僕は人間だから一回死んだら終わりだよ」

「もし、死んでも生き返れたらどうしますか?」

 プルスは哲学のような質問をして来た。

「え……。そうだな……死んでも生き返れる保証が無いから、死ぬ時が来るまで死なない」

「ぷ……、何ですかそれ。永遠の命の無駄使いじゃないですか」

「命に永遠なんてないよ。人は死んだらそこで終わりなんだ」

「えっとですね……。私と契約している主は加護の力で生き返れるんですよ。それなのに、死なないんですか?」

「その話がほんとなのだとしたら、僕の不安は一気に解消されるけど、別に死ぬ利点なんてないでしょ。痛いだけなんじゃないの?」

「死ぬ利点はありますよ。危険な場所でも突っ切れますし、強い相手と何度も戦えます。そうすれば戦いの経験を一気に詰めますし、過去の契約者も皆そうやって力をつけていきましたよ」

「うわぁ……辛そう。何でそこまで強くなろうとする必要があったんだろう」

「強さこそが全ての時代だったからですよ。今は違うようですがね」

「まぁ……全部違うとは言い切れないけどね。確かに強くないと社会を上り詰めていけないし、いい生活も送れない。でも、僕はそんな生活よりも自分のしたいことを好きなだけやりたいんだよ。今だって、動物たちとワイワイ生活したいから街に向おうとしているんだし。プルスもそこまで気張らなくてもいいよ。もし、僕が強くならなければいけない理由が出来たら、その時また、強くなろうとすればいいさ。強くなるための下準備は欠かさないから」

「主がそう言うのなら……。でも、主は既に、土台を広く大きく穴を埋めてガッチガチに固めた状態ですよ。土台にこれ以上何をするんですか?」

「え……。僕が満足するまでだけど……」

「はは……。末恐ろしい」

 僕とプルスは会話をしながら森に向った。
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