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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
僕が与えられるものは何だろう
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「はぁ、はぁ、はぁ……。し、死にそう……」
僕は肩からの出血により、貧血になっていた。膝を地面について崩れる。
「主、血をさすがに流しすぎです。傷口を早く治さないと血が流れ続けて死にますよ」
プルスは僕の頭から声を上げる。
「わかってるってば。で、どうやって治せばいいの……」
僕は傷口を手で圧迫し、止血を試みる。
「燃やせば傷口は回復します。血液は回復しないので倦怠感は残ると思います。でも、一回死ねば、血液ももとに戻りますから直ぐに行動できますよ」
「なるほど……。超回復で傷は治せても血の量は増やせないのか。蘇生は死ぬけど、完璧な状態に戻るんだね」
「簡単に考えればそうですね」
「死んでからどれくらいで生き返るの?」
「外傷が酷ければ最大五秒かかりますね。首の頸動脈を切って死ねば最短一秒ほどで生き返れます」
「外傷が酷くないのに死ぬ理由って何?」
「魔力の回復をしたり、眠らないでいられるようになったり、色々と利点がありますよ。ただ、死への恐怖がなくなるにつれて行動がおろそかになる傾向があります。私を守りながら戦うということが目的にも拘わらず、無茶な作戦を行うようになって思考が偏りますね」
「そうか。狂人になってしまうんだね……。僕はまだ人でいたいから、首を切ったりして死なないようにするよ」
「私も、自ら死ぬのはお勧めしません。自殺行為は心への傷が深いですから」
「だよね。さて……ルパに噛まれた方の傷を治さないと」
僕は右手から『ファイア』を出して、肩に当てる。
肩は燃え始め、痛みが消えて行った。服は燃えず、肩の傷だけが完全に回復した。
「この火に回復の効果があるの?」
「そうですね。主の魔力に加護の効果があると言った方が良いかもしれません。なので、傷口に魔力を無意識に集めれば攻撃しながらでも体の治療が可能です。私が治療することもできるので、役割分担ができますよ」
「そうなんだ。体の傷が治せるのはほんとありがたいな。これからほぼ毎日傷が出来そうだからさ」
「ルパの攻撃を食らってですか?」
「そう。今日は食べ過ぎて動けなくなってたけど、明日は今日のことを踏まえて殺しに来るだろうから、捕まえるのに苦労しそうだよ」
「そこまでして、あの獣族と仲良くなりたいなんて主はほんとうに変わった人ですね」
「僕の友達いない歴は一六年だからね。プルス以外に家族みたいに仲良く出来そうな友達が作れそうなのに、行動に移さないのはもったいないでしょ。だからさ、プルスもルパと友達になれるよう協力してよ」
僕は頭上にいるプルスを両手で包み込むようにして持って顔の前に持ってくる。
「わかりましたよ。主の友達第一号がしっかりと手伝ってあげます」
「ありがとう、プルス。やっぱり友達がいると頼れていいね」
僕はプルスの頬を親指で撫でる。
「ぴよ~。きもちぇ~」
この日から僕とプルス対ルパの戦いが始まった。
「ねぇ、プルス。ルパと友達になるにはどうしたらいいのかな?」
「素直に友達になりたいと言っても、肩を噛まれてしまうほど嫌われているみたいですから、間を一気に詰めるより時間を掛けていくのが得策なんじゃないでしょうか。主と友達になれば、いいことが沢山あるとルパにわからせるんですよ。そうすれば、向こうから寄ってくるはずです」
「僕と友達になったらいいこと……。服、食事、家、は与えられるから最低限の生活は保障できる。これだけだと弱いのかな」
「獣族族にとっては最高だと思うんですけどね。でも、ルパが主をめっぽう嫌っていますから、やはり時をかけて主の必要性を証明するしかありませんね」
「難しいな……」
その日の夜。ルパは食事時にも家に帰ってこなかった。
「ルパ、どうしたんだろう。森の中に入っていっちゃって戻ってこれなくなったのかな」
「いや……、獣族ですから鼻は効くはずです。主の匂いは嫌でも嗅いでいると思うので、家の場所を見失うなんてありえませんよ。何か魔物に怪我を負わされたのかもしれません」
「大変だ……。早く助けに行かないと」
僕は立ち上がって雨宿に置いてあった石槍を持つ。そのまま森の方を向いたら、ルパが鹿を背負って戻ってきていた。
「ルパ、遅かったじゃないか。何をしてたんだよ」
「見ればわかるでしょ。狩りしてた」
「狩りって……。僕も狩ってきたのに」
「私でもお腹が膨れていれば狩りくらい出来る。ニクス、必要ない」
「うぐ……」
ルパは衣食住のうち、食は完全に僕を必要としなくても生活できるみたいだ。
「その鹿、どうやって解体するの?」
「もう、内臓は取ってきた。あとは皮を剥いで焼いて食べるだけ」
ルパは僕の買ってきた一本の剣を持っており、それを使って狩りをしていたみたいだ。
「ルパは剣も使えたの?」
「剣の使い方は知らない。でも、解体するのは刃物が必要だった。だから使った」
「そう……」
ルパは鹿をあっという間に解体した。解体した鹿の皮を胸と下半身に合うように切分け、簡単な服を作ってしまった。
「これも要らない」
ルパは僕が着せた服を炎の中に投げ捨てた。
「はは……。ガラが嫌だったのかな」
ルパは衣食住のうち、食だけでなく、衣も僕を必要としなくなった。
「凄いですね……。主の必要性がどんどんなくなっていきます」
――うぐ……。衣食住のうち、住なんて獣族にとって森は家みたいなものでしょ。つまり……、僕の必要性は皆無。僕からルパに与えられるものが今、手もとにある金平糖しかなくなってしまった。
ルパは僕が頭の中で自分の必要性を考えている時に鹿の肉を綺麗に切りわけていき、遠火で焼き出した。
数分経ち、肉の焼けるいい匂いが広がる。ルパは焼き具合を見て食べようとした。
「あ、そうだルパ。調味料を買ってきたんだよ。使ってみる?」
「調味料?」
僕は塩の入った袋を手に取り、袋口を開ける。
塩を一つまみ取って、ルパの持つ肉にふりかけた。
「今の粉、何? 毒、それとも薬……」
ルパは僕に疑いの眼差しを向けてきた。
「違う違う、そんな物騒なものじゃないよ。塩を振りかけただけだから、安心して」
「塩……。あのしょっぱいやつ?」
「そう、しょっぱい塩だよ。だから、お肉に合うはず」
ルパは恐る恐る塩を振りかけた肉に噛みつく。
「モグモグ…………」
「どう……。味は変わった?」
「…………」
ルパは無言で肉を差し出してきた。
僕は肩からの出血により、貧血になっていた。膝を地面について崩れる。
「主、血をさすがに流しすぎです。傷口を早く治さないと血が流れ続けて死にますよ」
プルスは僕の頭から声を上げる。
「わかってるってば。で、どうやって治せばいいの……」
僕は傷口を手で圧迫し、止血を試みる。
「燃やせば傷口は回復します。血液は回復しないので倦怠感は残ると思います。でも、一回死ねば、血液ももとに戻りますから直ぐに行動できますよ」
「なるほど……。超回復で傷は治せても血の量は増やせないのか。蘇生は死ぬけど、完璧な状態に戻るんだね」
「簡単に考えればそうですね」
「死んでからどれくらいで生き返るの?」
「外傷が酷ければ最大五秒かかりますね。首の頸動脈を切って死ねば最短一秒ほどで生き返れます」
「外傷が酷くないのに死ぬ理由って何?」
「魔力の回復をしたり、眠らないでいられるようになったり、色々と利点がありますよ。ただ、死への恐怖がなくなるにつれて行動がおろそかになる傾向があります。私を守りながら戦うということが目的にも拘わらず、無茶な作戦を行うようになって思考が偏りますね」
「そうか。狂人になってしまうんだね……。僕はまだ人でいたいから、首を切ったりして死なないようにするよ」
「私も、自ら死ぬのはお勧めしません。自殺行為は心への傷が深いですから」
「だよね。さて……ルパに噛まれた方の傷を治さないと」
僕は右手から『ファイア』を出して、肩に当てる。
肩は燃え始め、痛みが消えて行った。服は燃えず、肩の傷だけが完全に回復した。
「この火に回復の効果があるの?」
「そうですね。主の魔力に加護の効果があると言った方が良いかもしれません。なので、傷口に魔力を無意識に集めれば攻撃しながらでも体の治療が可能です。私が治療することもできるので、役割分担ができますよ」
「そうなんだ。体の傷が治せるのはほんとありがたいな。これからほぼ毎日傷が出来そうだからさ」
「ルパの攻撃を食らってですか?」
「そう。今日は食べ過ぎて動けなくなってたけど、明日は今日のことを踏まえて殺しに来るだろうから、捕まえるのに苦労しそうだよ」
「そこまでして、あの獣族と仲良くなりたいなんて主はほんとうに変わった人ですね」
「僕の友達いない歴は一六年だからね。プルス以外に家族みたいに仲良く出来そうな友達が作れそうなのに、行動に移さないのはもったいないでしょ。だからさ、プルスもルパと友達になれるよう協力してよ」
僕は頭上にいるプルスを両手で包み込むようにして持って顔の前に持ってくる。
「わかりましたよ。主の友達第一号がしっかりと手伝ってあげます」
「ありがとう、プルス。やっぱり友達がいると頼れていいね」
僕はプルスの頬を親指で撫でる。
「ぴよ~。きもちぇ~」
この日から僕とプルス対ルパの戦いが始まった。
「ねぇ、プルス。ルパと友達になるにはどうしたらいいのかな?」
「素直に友達になりたいと言っても、肩を噛まれてしまうほど嫌われているみたいですから、間を一気に詰めるより時間を掛けていくのが得策なんじゃないでしょうか。主と友達になれば、いいことが沢山あるとルパにわからせるんですよ。そうすれば、向こうから寄ってくるはずです」
「僕と友達になったらいいこと……。服、食事、家、は与えられるから最低限の生活は保障できる。これだけだと弱いのかな」
「獣族族にとっては最高だと思うんですけどね。でも、ルパが主をめっぽう嫌っていますから、やはり時をかけて主の必要性を証明するしかありませんね」
「難しいな……」
その日の夜。ルパは食事時にも家に帰ってこなかった。
「ルパ、どうしたんだろう。森の中に入っていっちゃって戻ってこれなくなったのかな」
「いや……、獣族ですから鼻は効くはずです。主の匂いは嫌でも嗅いでいると思うので、家の場所を見失うなんてありえませんよ。何か魔物に怪我を負わされたのかもしれません」
「大変だ……。早く助けに行かないと」
僕は立ち上がって雨宿に置いてあった石槍を持つ。そのまま森の方を向いたら、ルパが鹿を背負って戻ってきていた。
「ルパ、遅かったじゃないか。何をしてたんだよ」
「見ればわかるでしょ。狩りしてた」
「狩りって……。僕も狩ってきたのに」
「私でもお腹が膨れていれば狩りくらい出来る。ニクス、必要ない」
「うぐ……」
ルパは衣食住のうち、食は完全に僕を必要としなくても生活できるみたいだ。
「その鹿、どうやって解体するの?」
「もう、内臓は取ってきた。あとは皮を剥いで焼いて食べるだけ」
ルパは僕の買ってきた一本の剣を持っており、それを使って狩りをしていたみたいだ。
「ルパは剣も使えたの?」
「剣の使い方は知らない。でも、解体するのは刃物が必要だった。だから使った」
「そう……」
ルパは鹿をあっという間に解体した。解体した鹿の皮を胸と下半身に合うように切分け、簡単な服を作ってしまった。
「これも要らない」
ルパは僕が着せた服を炎の中に投げ捨てた。
「はは……。ガラが嫌だったのかな」
ルパは衣食住のうち、食だけでなく、衣も僕を必要としなくなった。
「凄いですね……。主の必要性がどんどんなくなっていきます」
――うぐ……。衣食住のうち、住なんて獣族にとって森は家みたいなものでしょ。つまり……、僕の必要性は皆無。僕からルパに与えられるものが今、手もとにある金平糖しかなくなってしまった。
ルパは僕が頭の中で自分の必要性を考えている時に鹿の肉を綺麗に切りわけていき、遠火で焼き出した。
数分経ち、肉の焼けるいい匂いが広がる。ルパは焼き具合を見て食べようとした。
「あ、そうだルパ。調味料を買ってきたんだよ。使ってみる?」
「調味料?」
僕は塩の入った袋を手に取り、袋口を開ける。
塩を一つまみ取って、ルパの持つ肉にふりかけた。
「今の粉、何? 毒、それとも薬……」
ルパは僕に疑いの眼差しを向けてきた。
「違う違う、そんな物騒なものじゃないよ。塩を振りかけただけだから、安心して」
「塩……。あのしょっぱいやつ?」
「そう、しょっぱい塩だよ。だから、お肉に合うはず」
ルパは恐る恐る塩を振りかけた肉に噛みつく。
「モグモグ…………」
「どう……。味は変わった?」
「…………」
ルパは無言で肉を差し出してきた。
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