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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

大量の角ウサギを討伐する

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「はぁ、面倒な仕事を受けちゃったよ……。何で僕が不祥事の後始末なんてしないといけないんだ。あと、騎士団が来ないのは何でなんだ。もう一日経っているのに。もしかして昼の一二時にならないと一日になってませんよ。みたいな感じなのかな。だとしたらもう少し待つしかないな。角ウサギを燃やすのは簡単だと思うけど、騎士団が来るのかを確かめないと」

「つまり、昼まで肉弾戦で行くわけですね」

 プルスは僕の頭上で呟いた。

「うん。昼まであとどのくらいあるかな?」

「そうですねあと三時間ぐらいでしょうか」

「三時間か。ギリギリ早いかな。いや、今のルパにとっては長く感じるかも。出来るだけ早めに切り上げたいから、騎士団が来る気配がなかったら角ウサギたちを燃やそう」

「そうですね。私も騎士のような輩が向かって来たら主に知らせます」

「よろしく頼むよ。騎士団の気配がしたらぱっと身を引くから。出来るだけ早く教えてね」

「了解です」

 僕は剣を左腰に掛け、一本の石槍を持っている。すたすたと歩き、角ウサギたちの背後に向った。

 聴覚が優れている角ウサギたちは連携をとり、耳を動かして辺りの音を拾っている。僕が気づかれるのも時間の問題だ。

――もう少し近づいて僕の方におびき寄せれば街に向う角ウサギを少なく出来るはず……。

 僕は少しずつ確かに近づいていく。

『ギュッツ!』

 一体の角ウサギが僕に気づいた。すると、視界に映っている角ウサギ全個体が、僕の方を向く。今の一鳴きで、一万羽を超える角ウサギがこちらを向いたのだ。昨日の偽物とは威圧感が違う。一個体が自分は強いと言う意思を持ち、大量に集まることによって危険度が跳ね上がるのだろう。

「僕は一羽ずつ戦うだけ。僕は一羽ずつ戦うだけ。僕は一羽ずつ戦うだけ」

 戦い方は変わらない。どんなに攻め込んできても一対一の状況にすればいいだけだ。

『キュキュ!!』

 角ウサギは移動し、僕の方になだれ込んでくる。その姿はまさしく土砂崩れそのものだった。この地域に生息する角ウサギは地面に同化するため毛の色が茶色っぽい。そのため土砂にそっくりだった。

「主、来ます。構えてください」

「わかってる。移動しながら戦わないと囲まれそうだ。この前みたく囲まれたら戦いにくい。出来るだけ正面からの攻撃に専念したい」

『キュキュ!』

 大量の角ウサギたちが移動を始め、獲物の僕に向って走ってくる。

「さすがに増えすぎだよな。短期間でこんなに増えるものなのか。それとも、元から個体が多かったのか、どっちだろう」

「両方だと思いますよ。やはりウサギですから繁殖能力が高いですし、魔物なので成長も早いです。集まらなければそこまで増えませんけど、一度大量に集まってしまったら一気に増えてしまいます」

「そうなんだ。なら、個体数を減らすしか方法は無いんだね」

「そのはずです。増えすぎたら駆除するしかありません。人にとっては危険な魔物ですから」

「わかった。頑張って駆除するよ」

 僕は正面を向く。角ウサギが猛烈な勢いで突進して来ていた。

「数が増えると強くなったと思ってしまうのは人間と同じだね。僕も群れたら恐怖心を無くせるのかな……」

『キュキュッツ!』

 角ウサギが僕の目の前に跳躍し、角を突き刺そうとしてくる。

「ふっ!」

 僕は角ウサギの真横から拳を打ち込み、首の骨を折った。大きな木が折れるような音が鳴る。首が折られた一羽は横に弾き飛び、二度と立ち上がらない。どうやら絶命したようだ。だが一羽倒しただけでは何の意味もない。

『ギュギュッツ!!』

 角ウサギが僕に攻撃を次から次に仕掛けてくる。

 戦いが始まってから三時間。骨の折れる音と地面を蹴る音、大量の角ウサギが移動する音が響き続けた。すると角ウサギたちは見るからに減っている。日が真上に来ても騎士団がやっては来なかった。どうやらグラスさんの言っていたことは本当らしい。

「プルス、数羽を残して燃やそう。地面に転がっている個体も、肉を燃やして素材だけにして」

「了解です」

 プルスは地面に下りて『燃え移る炎(バーニングフレイム)』を放った。

 僕は夕食に残しておこうと思い、十体の角ウサギを掴み、自分の手で内臓を取り出した。

「よし、これで今日は持つはずだ。ルパのおみ上げも出来たし、大量の素材も手に入ったぞ。これでルパに色々買ってあげられる。喜んでくれるかな~」

 僕が角ウサギの血抜きを行っている間に、大量の角ウサギが燃え、街の周りが火の海になっていた。昨日見た光景と全く一緒でこの世の光景とは思えない。草木まで燃えているかと思いきや、角ウサギだけ燃えている。自然に優しい炎のようだ。

 僕が三時間戦って倒した数よりも、プルスが火を履いて燃やし、五分ほど待っただけの方が多く倒しているみたいだ。生き残っている個体はもう一〇体くらいしかおらず、散らばって逃げてしまった。

 地面には角ウサギの皮と角が残っており、皮の中に灰が残っている状態だった。ナイフで腹を裂くと灰が出てくる。ここまであられもない姿になると可哀そうという感情があふれ出てきた。

 この素材が今、地面に溢れかえっており、一枚銅貨一枚だとしても一万枚集まれば金貨一〇〇枚だ。同じ量の角があるので同じく金貨一〇〇枚。もし一枚銅貨二枚で売れたら金貨二〇〇枚。三時間体術の鍛錬をしてお金がもらえた。何て素晴らしい時間だったんだろうか。僕はグラスさんに感謝しなければならないかもしれない。金欠だったのでありがとうと。

「さてと、これだけあると集めるのも一苦労だね」

「集めるのはあの男達にやらせればいいんじゃないですか。主にこれだけ働かせたんですから、それくらいやってもらわないと」

「そうだね。じゃあ、呼んでこようか」

 僕はルパの待つ洞穴に向った。

 洞窟を見つけ、中に入っていく。

「な……、もう帰ってきたのか……」

「あ、グラスさん。ちゃんと捕まったままでいてくれたんですね。ありがとうございます」

「ニクスっ!」

 ルパは僕に抱き着いてきた。手足が震えている。どうやら相当怖かったみたいだ。
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