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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。

帰宅

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 四月八日。ルークス王国に健在する多くの騎士団に新しい部隊が配備された。
 その名も騎士師団。どうやら、一人の騎士が単独で行動できるという珍しい部隊だ。
 配属されたのは一人の女騎士と書かれているのでどう考えてもディアさんだろう。つまり、上流騎士第一次師団長ディア・アマダスという通り名になったわけだ。これでディアさんも少しは働きやすくなったかな。

「にしても、ニクスさんは偉いですね。そんな活字ばかりの記事を読むなんて……。私は何度も挑戦しましたが無理でしたよ」

 ロミアさんはパンを頬張りながらジャムを口もとに付けてミルクティー出流しこんでいる。

「ま、見れるなら見ますね。いつもは記事なんて見れないですから、こういう時くらい、眼を通しておこうと思っただけですよ」

 僕は苦いブラックコーヒーを飲み、顔を顰める……。

「ニクス、無駄にコーヒーなんて飲まなくていいのに……。はい、牛乳」

 ルパは自分が飲んでいた牛乳の入ったカップを僕に渡す。

「あ、ありがとう」

 僕はルパから牛乳を貰い、ブラックコーヒーに注ぎ入れた。カフェオレにして何とか飲めるようになり、料理を完食する。記事をもと合った位置に戻し、お金を払って部屋に戻る。

「さてと……、ロミアさんはこれからどうするんですか? 僕とルパは家に帰りますけど」

「どうしましょう……。私には帰る家もないですし、仕事は冒険者くらいしかできませんし……。行く当てもなければしたいこともない……。まぁ、以前言われた友達巡りというのも面白そうなので、いったんルークス王国の王都にでも向かおうと思います。多分、仕事も王都に行った方が沢山ありますし、護衛なんかも出来ると思うんです」

「いい考えですね。仕事があれば、人は生きて行けます。何かあれば王城で働いている僕の兄を訪ねれば仕事探しくらいなら手助けしてくれると思いますよ」

「本当ですか。貴重な情報を教えていただき、ありがとうございます。騎士の位をはく奪された時はどうなるかと思いましたが……、案外生きていけるみたいですね」

「そうですよ。別に騎士が全ての仕事な訳じゃないんですから、好きなように生きればいいんです。でもロミアさんはドジですから、周りをしっかりと確認して生きないと危ないですよ」

「わかっています。自分でも嫌なくらいどんくさいですから、頭を使って生き残りますよ」

 ロミアさんは握り拳を作り意気込んでいる。

「えっと、どうしようもなくお金に困った時はこれでも売ってお金に換えてください」

 僕はプルスの糞をロミアさんに差し出した。

「な、何ですかこれ……? も、もしかしてダイヤモンドの原石……」

「ん~、ダイヤモンドの原石と言ってもいいのかわかりませんが、魔石に近い物質です。少なからず売れると思います。金貨五〇枚くらいで売れると思うので、ただの石だからと言われて取られそうになったら詐欺ですからね。別の鑑定士にお願いして正しい金額を貰ってください」

「うぅ……。何から何までありがとうございます……。このお礼はいつか必ずしますから、その日まで元気でいてください」

「はい。僕はそう簡単に死にません。なので、焦らなくてもいいですから、ロミアさんの生活が安定したら少しずつ返してください」

「わかりました。頑張って生活費を稼げるようになります。今以上に強くなってニクスさんに恩を返しますよ」

 ロミアさんは目をたぎらせており、とてもやる気満々だった。僕とルパが部屋から荷物を持って宿の外に出たあと、ロミアさんは僕達から離れ、ルークス王国の王都へと旅立っていった。どんくさい人なので、王都までたどり着けるか不安だが、なんやかんや生き残ると思うので、気にしなくても大丈夫だろう。

「じゃあ、ルパ。僕たちも鳥籠に帰るよ」

「うん。今日はもう、ビューンって帰ろう。早く帰りたすぎて仕方ないよ」

 ルパは無理して人と付き合っていたので限界が近かった。何なら、初日から無理をさせてしまっていた。

 僕達は人気のない街の外で炎の翼を背中に発生させ、空を飛ぶ。プルスにお願いして鳥籠まで帰ってもらうことにした。

 自動飛行機能が付いているなんてとても楽だ。ものの一時間で鳥籠まで帰って来てしまった。行き二週間、帰り一時間。プルスの移動速度が早すぎる……。

「あぁ……、我が家……」

 ルパは無骨な四角形の家に抱き着き、家の中に飛び込む。僕もルパに続いて家の中に入った。すると、僕とルパのにおいが混ざった我が家のにおいがした……。
 とんでもなく落ち着く。もともと引きこもり属性の僕はとても居心地がいい空間で、旅をしている時も楽しかったが、家のいる時間も同じくらい心地いいと実感できた。

「ルパ、朝風呂でも行こうか。何なら朝サウナもやっちゃおう」

「うん! 行こう行こう!」

 ルパは帰って来て早々疲れたと言って眠っていたのだが、すぐに起き上がり、僕の手を掴む。

 鶏たちが小屋の中に戻っており、卵を温めていた。どうやら繁殖したようだ。他の動物達も欲しいなと思いながら半年過ぎたが、ルパと鶏だけで十分楽しいので、今のところ購入は考えていない。

 僕とルパはお湯の湧き出る泉に移動し、全裸になって飛び込んだ。

「ふわぁ……。最高ぅ……。旅の疲れが解れるぅ……」

 ルパの顔がスライムのようにふやけ、心がトロトロになってしまったようだ。まぁ、わからなくもない。
 透き通ったエメラルドグリーンのお湯が湧き出る広大な泉に、辺り一面木々だらけで、心が落ち着く。プルスやルパが強いので魔物が出てもさほど問題ない。
 そう思うと、心から大自然に開放されているような気分になる。

「ふぐぐぐぐ~。はぁ~。こうやってルパと一緒にお湯に浸かっているだけでも幸せだなぁ」

「もう、こんなに広いんだから無駄にくっ付いてこなくてもいいでしょ」
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