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実家に向かう
泥酔している親子
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「黒髪の男性と赤髪の長髪の男性。どちらも、ガイアス様に似ておられます……。ということは、ニクスさんとクワルツさんですね! うわ~、お会いできて光栄です!」
童顔の女性は僕とクワルツ兄さんの手を握ってブンブンと振ってくる。元気過ぎる。ガイアス兄さんと性格や体格が正反対な気もするが、本当に婚約者さんなのだろうか。
「え、えっと……。あなたがマリア・ライオートさんですか?」
クワルツ兄さんは女性の名前を知っていたらしく、尋ねる。
「あ、自己紹介が遅れてしまい申し分けありません。初めましてマリア・ライオートと申します。ガイアス・ガリーナ様と婚約している者です」
マリアさんはスカートを摘まみ、少し持ち上げて会釈をする。
「こちらこそ初めまして、ガリーナ家次男、クワルツ・ガリーナと申します」
クワルツ兄さんは踵を合わせ、右手を胸の前に当てて軽く会釈をした。
「えっと……。ガリーナ家を追放されたニクス・フレイズです。よろしくお願いします」
「追放?」
マリアさんは首を傾げた。
「ん、んんっ……。えっと、立ち話もなんですから、家の中に入ってもよろしいですか?」
クワルツ兄さんは咳払いをしながら、僕の腕を抓る。
「あ、どうぞどうぞ。すみません、立たせっぱなしで」
マリアさんは扉を押して開き、僕達を招き入れた。
「なんで、マリアさんが玄関を開けられたんですか? ガイアス兄さんか父さんが……」
「えっと……、お二人共久しぶりに会ってお酒が進んでしまい、現在泥酔中です」
「あぁ……。お恥ずかしい」
クワルツ兄さんは額に手を置いて頭を振っていた。
「いえいえ、ガイアス様は普段お酒を滅多に飲まないので新鮮な体験が出来ました。寡黙なガイアス様もお酒が入ると甘々になるんですね。すごく可愛かったです」
「え?」
僕とクワルツ兄さんは反応が被る。
「クワルツ兄さん、僕は一七年間生きて来たけど、ガイアス兄さんに可愛いなんて表現を使う人初めて見たよ」
「わ、私もだ。でも確かに、私達もガイアス兄さんがお酒に酔っている場面を見た覚えがないから、実際はわからない」
「見ますか?」
「是非」
僕達は綺麗になった家の中を歩き、居間に向かう。扉を開けると、懐かしい食卓があり、ガイアス兄さんと父さんが椅子に座っていた。父さんがガイアス兄さんの持っているジョッキに瓶エールの中身を注ぎながら、こっちを見た。すでに顔が赤い。相当酔っている。
「ん~? ニクス……」
父さんは椅子から立ちあがり、近寄ってくる。
「た、ただいま、父さん」
「ニクス! お前、ヒヨコになっちまったのか~!」
父さんは僕の頭上に座っていたプルスを両手で掴む。僕の顔が無表情になったのが自分でもわかった。
「クワルツ~、ニクス~。久しぶり~!」
僕の視界の先には赤髪の短髪で顔がほのかに赤くなっている、ガイアス兄さんの姿があった。椅子から立ち上がり、僕達を大きな体で抱きしめてくる。
一八八センチメートルもある巨漢で父さんの体格を受け継いでいた。抱き着かれただけでもわかるが、筋骨隆々で僕の骨が軋む。
「あぁ~、俺の弟たち~。元気だったか~、俺は元気だったぞ~」
「が、ガイアス兄さん、今日は相当酔っぱらっていますね……」
クワルツ兄さんはガイアス兄さんに頬擦りされてうっとおしそうに押しのけている。
「うん~、今日は少しだけ飲むつもりだったんだが、親父との話しがついつい弾んでな~」
「ガイアス兄さんが物凄く喋ってる……。相当気分がいいんだ……」
「ニクス~、元気だったか~。もう、ずっと心配していたんだぞ~。ちゅっちゅ~」
ガイアス兄さんは普段しない頬キスまでしてくるしまつ。印象が違い過ぎて身が震える。
「あ~ん、ガイアス様~。ニクスさんにだけチュッチュずるいです~」
「マリア……。もちろんマリアにもチュッチュするぞ~」
ガイアス兄さんはマリアさんを抱き上げて唇にキスをする。
「えへへ、ありがとうございます~」
マリアさんはニコニコ笑顔でガイアス兄さんにお礼を言う。ただ、その顔が少々卑猥だ。
「クワルツ兄さん……」
「なんだい、ニクス……」
「僕、思ったんだけどさ、なんか僕達と深い中になる相手、エッチな方多くない?」
「……き、気のせいなんじゃないか」
クワルツ兄さんは僕から視線を反らし、小さな声で呟いた。
父さんとガイアス兄さんは酔いつぶれてしまい、ぐーすかと眠りに落ちる。僕とクワルツ兄さんの二人で寝室に運び、好きなだけ寝てもらおう。
「えっと、マリアさん。話しを聞いてもいいですか?」
僕とクワルツ兄さんは居間に戻ってきて新調された綺麗な椅子に座る。
「はい、もちろんです。何を聞きたいんですか?」
「マリアさんはガイアス兄さんと本当に結婚したいんですか?」
「愚問ですね。私はガイアス様と結婚したいからここにいるんですよ」
「でも、初級騎士のガイアス兄さんと……、結婚なんて」
「もう、中級騎士です。私と結婚しても何ら問題ありません。逆に、何でそのようなことを質問するのですか?」
「い、いやぁ、ガイアス兄さんは戦闘狂ですし、戦いに明け暮れて家に帰ってこないなんてしょっちゅうでした。結婚しても騎士の遠征で何カ月も帰ってきませんし、ここで父さんと暮らすのも辛いかなと思いまして」
クワルツ兄さんはガイアス兄さんの少年時代を話した。今と変わらず、戦いに明け暮れていたようだ。あんなに戦いに行っていたらいつ死んでもおかしくない。
「ガイアス兄さんは確かに強いですけど、不慮の事故でなくなるかもしれませんし、中級貴族のご令嬢であらせられるマリアさんなら、上級騎士の方や上級貴族の方とご結婚できますよね。兄さんを選ぶ必要があるのかなと……」
「はぁ、お二方ともわかっていませんね~。ガイアス様の男らしさと勇ましさ、子供から大人まで分け隔てなく接し、上流階級の者にも悪い時は悪いと言える心の強さ。私は一目見た時からこの方しかいないと直感したんです」
マリアさんは両手を握り合わせ、神に祈る。
童顔の女性は僕とクワルツ兄さんの手を握ってブンブンと振ってくる。元気過ぎる。ガイアス兄さんと性格や体格が正反対な気もするが、本当に婚約者さんなのだろうか。
「え、えっと……。あなたがマリア・ライオートさんですか?」
クワルツ兄さんは女性の名前を知っていたらしく、尋ねる。
「あ、自己紹介が遅れてしまい申し分けありません。初めましてマリア・ライオートと申します。ガイアス・ガリーナ様と婚約している者です」
マリアさんはスカートを摘まみ、少し持ち上げて会釈をする。
「こちらこそ初めまして、ガリーナ家次男、クワルツ・ガリーナと申します」
クワルツ兄さんは踵を合わせ、右手を胸の前に当てて軽く会釈をした。
「えっと……。ガリーナ家を追放されたニクス・フレイズです。よろしくお願いします」
「追放?」
マリアさんは首を傾げた。
「ん、んんっ……。えっと、立ち話もなんですから、家の中に入ってもよろしいですか?」
クワルツ兄さんは咳払いをしながら、僕の腕を抓る。
「あ、どうぞどうぞ。すみません、立たせっぱなしで」
マリアさんは扉を押して開き、僕達を招き入れた。
「なんで、マリアさんが玄関を開けられたんですか? ガイアス兄さんか父さんが……」
「えっと……、お二人共久しぶりに会ってお酒が進んでしまい、現在泥酔中です」
「あぁ……。お恥ずかしい」
クワルツ兄さんは額に手を置いて頭を振っていた。
「いえいえ、ガイアス様は普段お酒を滅多に飲まないので新鮮な体験が出来ました。寡黙なガイアス様もお酒が入ると甘々になるんですね。すごく可愛かったです」
「え?」
僕とクワルツ兄さんは反応が被る。
「クワルツ兄さん、僕は一七年間生きて来たけど、ガイアス兄さんに可愛いなんて表現を使う人初めて見たよ」
「わ、私もだ。でも確かに、私達もガイアス兄さんがお酒に酔っている場面を見た覚えがないから、実際はわからない」
「見ますか?」
「是非」
僕達は綺麗になった家の中を歩き、居間に向かう。扉を開けると、懐かしい食卓があり、ガイアス兄さんと父さんが椅子に座っていた。父さんがガイアス兄さんの持っているジョッキに瓶エールの中身を注ぎながら、こっちを見た。すでに顔が赤い。相当酔っている。
「ん~? ニクス……」
父さんは椅子から立ちあがり、近寄ってくる。
「た、ただいま、父さん」
「ニクス! お前、ヒヨコになっちまったのか~!」
父さんは僕の頭上に座っていたプルスを両手で掴む。僕の顔が無表情になったのが自分でもわかった。
「クワルツ~、ニクス~。久しぶり~!」
僕の視界の先には赤髪の短髪で顔がほのかに赤くなっている、ガイアス兄さんの姿があった。椅子から立ち上がり、僕達を大きな体で抱きしめてくる。
一八八センチメートルもある巨漢で父さんの体格を受け継いでいた。抱き着かれただけでもわかるが、筋骨隆々で僕の骨が軋む。
「あぁ~、俺の弟たち~。元気だったか~、俺は元気だったぞ~」
「が、ガイアス兄さん、今日は相当酔っぱらっていますね……」
クワルツ兄さんはガイアス兄さんに頬擦りされてうっとおしそうに押しのけている。
「うん~、今日は少しだけ飲むつもりだったんだが、親父との話しがついつい弾んでな~」
「ガイアス兄さんが物凄く喋ってる……。相当気分がいいんだ……」
「ニクス~、元気だったか~。もう、ずっと心配していたんだぞ~。ちゅっちゅ~」
ガイアス兄さんは普段しない頬キスまでしてくるしまつ。印象が違い過ぎて身が震える。
「あ~ん、ガイアス様~。ニクスさんにだけチュッチュずるいです~」
「マリア……。もちろんマリアにもチュッチュするぞ~」
ガイアス兄さんはマリアさんを抱き上げて唇にキスをする。
「えへへ、ありがとうございます~」
マリアさんはニコニコ笑顔でガイアス兄さんにお礼を言う。ただ、その顔が少々卑猥だ。
「クワルツ兄さん……」
「なんだい、ニクス……」
「僕、思ったんだけどさ、なんか僕達と深い中になる相手、エッチな方多くない?」
「……き、気のせいなんじゃないか」
クワルツ兄さんは僕から視線を反らし、小さな声で呟いた。
父さんとガイアス兄さんは酔いつぶれてしまい、ぐーすかと眠りに落ちる。僕とクワルツ兄さんの二人で寝室に運び、好きなだけ寝てもらおう。
「えっと、マリアさん。話しを聞いてもいいですか?」
僕とクワルツ兄さんは居間に戻ってきて新調された綺麗な椅子に座る。
「はい、もちろんです。何を聞きたいんですか?」
「マリアさんはガイアス兄さんと本当に結婚したいんですか?」
「愚問ですね。私はガイアス様と結婚したいからここにいるんですよ」
「でも、初級騎士のガイアス兄さんと……、結婚なんて」
「もう、中級騎士です。私と結婚しても何ら問題ありません。逆に、何でそのようなことを質問するのですか?」
「い、いやぁ、ガイアス兄さんは戦闘狂ですし、戦いに明け暮れて家に帰ってこないなんてしょっちゅうでした。結婚しても騎士の遠征で何カ月も帰ってきませんし、ここで父さんと暮らすのも辛いかなと思いまして」
クワルツ兄さんはガイアス兄さんの少年時代を話した。今と変わらず、戦いに明け暮れていたようだ。あんなに戦いに行っていたらいつ死んでもおかしくない。
「ガイアス兄さんは確かに強いですけど、不慮の事故でなくなるかもしれませんし、中級貴族のご令嬢であらせられるマリアさんなら、上級騎士の方や上級貴族の方とご結婚できますよね。兄さんを選ぶ必要があるのかなと……」
「はぁ、お二方ともわかっていませんね~。ガイアス様の男らしさと勇ましさ、子供から大人まで分け隔てなく接し、上流階級の者にも悪い時は悪いと言える心の強さ。私は一目見た時からこの方しかいないと直感したんです」
マリアさんは両手を握り合わせ、神に祈る。
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