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実家に向かう

結婚の予定

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「えっと、この三枚の手紙を速達でお願いします」

「確かに受け取りました」

 ギルドの受付さんは僕の描いた手紙を三枚受け取り、速達箱に入れて保管する。

「じゃあ、このギルドカードから金貨五〇〇〇を下ろしてもらえますか。えっと、虹硬貨四枚と大金貨一〇枚でお願いします」

「き、金貨五〇〇〇枚ですか……。少々お待ちください」

 受付さんは金額の高さによってギルドマスターに話を通した。すると、いきなり金貨五〇〇〇枚は渡せないと言う。日程を合わせてないといけないそうだ。別に三日程度なら、待っても良いと思い、ギルドを出る。

「三日後にお金を貰いにくれば問題なしっと」

 僕は家に帰り、結婚式の準備をする。と言っても僕達に出来ることは家の掃除や片付け、庭の整備などだ。
 食材を用意するのはマリアさんの家の料理人なので僕達は家が汚くならないようにして過ごせばいいだけだ。
 まあ、ガイアス兄さんとマリアさんは他の人よりも忙しそうにしており、引き出物の準備や花、結婚式の流れなどを念入りに計画している。

 ウェディングドレスや白い燕尾服、神父はその日だけお金を払い、借りることになっており、結婚指輪はすでに作ってもらっているそうだ。

 僕の仕上げて来た指輪、どうしよう……。

 お金を受け取る日になり、ギルドで好待遇を受け、金貨を受け取った。
 僕は特に気にせず、家に帰って父さんとガイアス兄さんに渡す。

「はい、父さん。ガイアス兄さん。二人のお金」

「ありがとう。ニクスがいて助かった。もう少し時間が経っていたら金利がとんでもないことになっていたところだ」

 父さんはお金が入った袋を大切そうに抱え、感謝してきた。

「ニクスがここまで成長するとは……。時の流れが早いな」

 ガイアス兄さんははにかんで僕からお金を受け取った。
 ガイアス兄さんと遊んでいた時期は短く、最後にしっかりと喋ったのは本当に八年前くらいだ。

 ガイアス兄さんが騎士養成学校を卒業して家を出ていくときに甘えていたような気がする。

「まあ、ガイアス兄さんとしっかりと暮らす日が来るとは思ってなかった。当時は普通に帰って来なくなるかもしれないと聞かされてたし……。でもガイアス兄さんも結婚するときが来るなんて……。時間の流れは本当に早いね」

 父さんとガイアス兄さんはお金を借りている銀行に返済しに行った。

「次はクワルツ兄さんかな。クワルツ兄さんは借金なんてしてないよね?」

「借金するほど高級な品に興味がないのと、ミートさんの方が高給取りだから、お金を使う必要がない。まぁ男としては彼女の方が、給料が高いと言うのは心に来るんだけど」

 クワルツ兄さんは椅子に座りながら落ち込んでいた。

「なにを言っているんですか。私はもう、五年、一〇年したら冒険者なんてできなくなります。そもそも結婚して子供が出来たら冒険者なんて危険な職業はできません。そんな時、クワルツさんの職業は安定しすぎているじゃないですか。私は自分が働けなくなった時、クワルツさんがいてくれるだけで安心できます。何も落ち込む必要なんてないですよ」

 ミートさんはクワルツ兄さんの頭を撫でて甘やかしていた。

「うぅ、ミートさん」

 クワルツ兄さんはミートさんに抱き着き、甘えていた。優等生の兄さんも誰かに甘えたくなる時があるんだなと人間味を感じる。

「にしても……、ニクス君はとんでもない穴場ね」

「本当ですね。一人で年収金貨三〇〇〇〇枚とか、そこらへんの大貴族を抜いている気がします。なのに鼻を高くせず、秘境でひっそりと暮らしているんですもんね。ルパちゃんとミアちゃんの肌や毛色を見ても、獣族の奴隷ですら乱暴に扱わない誠実さ。彼女さんがいないのが不思議です」

 ミートさんとマリアさんは僕を褒めて来た。

 僕は臆病で情けない男なんだけどな。

「ニクス、気になる女性とか、いないのかい?」

「ん~。今のところいない。まぁ、ゆくゆくはルパとミアの二人と結婚しようかなって思ってる。でも、二人からはまだ了承を貰ってないから、僕が勝手に言ってるだけなんだけどね」

 僕はルパとミアの頭を撫でる。

「け、結婚とかよくわからんし……。そもそも私は人間じゃないし」

「私は奴隷ですし……、ニクスさんと結婚なんて恐れ多いと言うか……。全然嫌じゃないんですけど、今の気持ちが何なのかわからなくて」

「ニクス……。ルパちゃんとミアちゃんと結婚するつもりなの?」

「いつも一緒にいるんだから結婚しようがしまいがどっちでもいいと思うんだけど、指輪を付け合ったほうが仲が深まるかなと……」

「なんか私達と考えがずれてる……」

 ミートさんは苦笑いを浮かべながら呟いた。

「本当ですね。そもそも獣族の者と結婚しようとする時点で多くの人間からずれてます。本当にごく少数いるかもしれませんがそれでも珍しいですね。人種は人種としか惹かれ合わないと教会書でも言われています。なのに、獣族に興味を持つなんて……」

 マリアさんも苦笑いを浮かべながら言う。

「まぁ、変り者と言われても仕方ないですね。でも僕はルパとミアが仲間としても好きですし、異性としても好きです。今はミアの心が安定していないので、お願いしてませんけど、出会った当初は良くお世話をしてくれました。まぁ、本番はまだしてませんけどね」

 僕はミアの頭を撫でながら呟く。
 ミアは赤面しつつも、口角を上げていたので嫌な気はしていないのだろう。なんせ僕とルパ以外は皆、経験者なのだ。
 ミアもすでに性奴隷の研修で経験している。大人の会話と言うのはこういうことを言うのだろうか。
 いや、違うか……。

「ニクスはいったい何の話しをしてるの? ミアと夜何かしてたって?」

「いや……、ルパにはまだ関係のないことだから、気にしないでいいよ」

「むぅ~、なんか隠してる~。私に隠し事するなよ。なんか……除け者の気分になる……」

 ルパは視線を下げ。不貞腐れた。でも、何となくわかっているような雰囲気を醸し出し、顔が赤くなっていた。

 僕はルパの頭に手を置いて毛並みを整えるように撫でる。
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