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仲間が増えた生活

正月に実家に帰省

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 僕は薄でのシーツを棚にかけ、磨いた石を隠す。
 毎日生み出されるプルスの糞が溜まり、バケツの中がダイヤモンドだらけになっているため、いかにも偽物臭いが全て本物だ。
 世界のダイヤモンドの物価が壊れてしまいそうなので、たまに、海に向って投げ捨てている。ときおり空気混じりのダイヤモンドが出てくるので綺麗な品と汚い品を分け、本当に透明度の高い品だけを残し、あとは捨てる。

 大晦日に大掃除を終わらせ、家の中がすっきりと片付いた。
 結局、ルパのごみとミアの服はプルスに燃やされたらしい。プルスは二名に何度か殺されていた。

 一二月三一日の夜、お供え物を持って火山の中に向かい、皆で祈った。この土地に住む神様にお供え物をして来年もいい年になるよう祈願するのだ。

 一月一日。元旦、僕は早めに起きた。両手はルパとミアに抱かれ、離れられない。プルスのお尻が鼻に当たっており、少々不快だ。

 日が出ていないため、時刻が判断しずらいが体内時計だと午前四時頃。
 以前、フランツの街からこの場まで一三時間かかった。その時は気づかなかったが、空の気流を使えば、もっと早く着いたのではないかと考え、高度八〇〇〇メートル付近で浮遊すると一秒で三〇メートル西に流された。秒速三〇メートルの風が西に向って吹いている。
 この風に乗っていけば一分間で一八〇〇メートル移動できる。一時間で一〇八キロメートル移動できた。
 ここに炎の翼の速度を加えれば、もっと早くつくはずだ。この空域を飛んでいる生き物や人間はおらず、僕が独占している。
 実家があるのは世界の反対側。つまり、僕は一日もあればもあれば世界を一周してしまうことが出来ると言う事実に今気づいた。飛行船だと何日かかるのやら……。でも、僕ならあっという間に飛んでいける。

 ルパとミアは目を覚まし、起き上がった。そのまま、服を着替え、暖かい恰好をする。

「ルパ、肌を露出しすぎると寒いよ。炎の衣は他の人にはあまり見せたくないし、厚着をして行かないと」

「でも、厚着をしたら動きにくい……。ニクスの熱い視線も感じれなくなる……」

 ルパは今から海にでも入るのかなと言うくらい、肌の露出した格好をしている。膨らみが強調された体は美しいの一言に尽きるが、他の人には見せたくない。そのため、服を着せた。

「うぅ……。動きづらい。こんな分厚い服を着ないといけないなら、ブラジャーとパンツ、脱いでもいい?」

「駄目。下着を着けていないと、はしたないと思われるよ」

 ルパは嫌々分厚い服を着て、肩からローブを羽織る。

「んー、んー、んー、んー」

 ミアは着ていく服を決めていなかったのか、なかなか決まらない。どれでもいいのにと言うと、怒られるので言わないが、待っているこっちの身にもなってほしい。

「これに決めましたっ!」

 ミアは毛糸で編まれたセーターに足首まで隠れるロングスカートを着て毛皮で作られたトレンチコートを羽織り、出発の準備を終えた。火はしっかりと消し、戸締りは完璧。あとは外に出て空に飛びたつだけだ。

「はあー。やだなー、やだなー。ニクスに抱き着くなんてー」

 ルパは言っていることと行動が全くあっておらず、僕にすぐに抱き着き、脚まで絡ませてくる。尻尾が大きく振られ、顔がすでに笑っていた。

「ううぅ……。高い所怖い……、高い所怖い……」

 ミアは僕に抱き着きながら、震えていた。高所が相当怖いらしい。僕は縄で二名の体をしっかりと結び、落ちないように配慮する。

「プルス、炎の翼」

「了解です」

 頭上に乗っていたプルスは背中に落ちていき、僕の背後に燃え盛る翼が生えた。二名と三つのボンサックを持ち、跳躍。翼を羽ばたかせ、高度八〇〇〇メートルまで浮上。息苦しくないよう、口もとに炎を生み出し、吸い込んだ水蒸気を燃やし、息がしやすいように変えながら飛ぶ。僕達はこのまま気流に乗り、西に飛んで空を移動しフランツの街にいくつもりだ。

 どれほどの速度が出ているのか、自分じゃ全くわからない。でも、すごく早く移動していることは感覚でわかる。体に当たる風は冷たく、凍えるが炎の衣によって丁度いい温度に調節されていた。

 僕はプルスに頼み、進行方向や速度、障害物の回避など、ある程度任せた。僕が眠っていても勝手に移動してくれるので楽で仕方がない。
 でも、プルスに全て任せるのは少々不安なので、目は開けている。気流に乗りながらだと、速度は上がったが移動距離が伸びたので、たいして変わらないかもしれないなと思いながら、移動した時間は八時間だった。どうやら、障害物が無いお陰で、速度が止まらず、移動時間が早まったらしい。

 出発時刻は午前六時頃。初日の出を空で堪能し、午後二時にフランツの街に到着した。

「はー。疲れた疲れたー。もう、さっさとニクスと離れたかったよー」

 ルパは未だに僕にくっ付いており、身を摺り寄せてくる。言葉と全く違い、縄を解いても尻尾を振りながら未だに擦り寄ってくる。頬にキスをして追い払おうとしたら、逆にもっとくっ付いてきた。

「うぅ……。やっと、やっと地面に足が尽きました……」

 ミアはプルプルと震えながら靴裏を地面に付け、よちよち歩きを見せる。

 実家に挨拶に向かうと、マリアさんが扉を開けた。

「あ、ニクスさん、ルパちゃん、ミアちゃん。お帰りなさい。外は寒いでしょ、さ、入って入って」

「た、ただいま……」

 僕は実家に帰って来てただいまと言うのがあまりにも違和感だった。別に変じゃないのだが、鳥籠の家が今の住処だからだろうか。はたまた、マリアさんにお帰りと言われたからだろうか。

「お、お邪魔します……」

 ルパはぎこちない言葉を放ち、僕の背後から一緒についてくる。

「お邪魔します」

 ミアはしっかりと発音し、僕の隣から、玄関に入った。
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