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本編
24,二日後までどうするか
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セシルとデュレクは、再び並んで歩き始める。
「殿下の件が終わったら家を借りる。もしくは寮に入る手続きをする。厄介になるのはほんの数日だ」
「急がなくていいよ。家を借りるとなると、条件もあるだろう。色々、精査したらいいさ」
「長く世話になる気は無い」
セシルは歩調を早める。
後ろから追うデュレクが、組んだ手を頭部に当てて、悠々とついてゆく。
二人は報告も兼ねて、団長の執務室へと戻る。殿下と話した内容を伝えても団長は驚かなかった。話は通じていたのだと理解し、セシルとデュレクは確かめることなく暗黙する。
執務用の机に肘をつき、片手の腹で顎を支える団長が、ちょっと思案すように口元を折り曲げた。
「どうされましたか、団長」
「いやね、セシル。副長二人の予定をどうしようかなと思ってさ」
「いつも通り、部下の訓練でも、警備でも、通常通りの仕事をこなしますよ。書類関係の目通しもあります。いつ殿下に呼ばれても対応できるように書類の処理仕事を中心にこなす方が良いでしょうか」
「いや、そういう問題じゃなくてな」
「俺は、部下の訓練がいいな。体を動かす方が性に合っている。王宮に務める者の実力も知りたいしな」
「だからな、そういう問題じゃないんだよ」
団長が、眼球だけ動かし、デュレクとセシルを交互に見た。
「お前たち、これから協力するのに、互いになんにも知らないんだよなぁ……と、思ってさ」
「確かに、会ったばかりですが……」
セシルは怪訝な表情を浮かべた。
デュレクはきょとんと団長を見て、瞬いた。
「俺が二人のことを知っているから、失念していたんだよ。お前ら二人が一緒に殿下の意向に沿うて行動するのに、互いの性格もなにも知らない。これは、由々しき問題かもしれない」
へらっとデュレクが笑う。
「知らないってほど、知らないわけじゃ……っつで!」
セシルにがっと足を踏まれたデュレクが、言い切れずに呻く。
軽く背を丸め、恨みがましい目をセシルの横顔に向けた。
「二人が初対面のままというのは、まずいだろう」
思索にふけり、二人のやり取りを見過ごした団長は背もたれに深く座りなおす。腕を組んで、天井を見上げた。
「しかし、団長。あと二日ほどで霧は発生する見込みです。このような少ない日数では、いつも通り過ごすのがよろしいのではないでしょうか」
「セシルはそれでいいかもしれないがな、デュレク副長はここに異動してきたばかりだろ。殿下の希望を優先するなら、副長としての雑務を覚えるのは、後でもいいと思うんだ。優先順位を考えれば、殿下のご意向に万全の態勢で臨むことだろう。違うか?」
「団長のおっしゃる通りです」
肯定しつつも、団長の話の持って行き方にセシルは嫌な予感を覚え始める。
「デュレク副長。それとも両方同時にこなすことができるか?」
「勘弁してくれ、団長。俺はそんなに器用じゃない。それに、副長という地位ならまだしも、それに付随する雑務もあるなんて聞いてないぞ」
「それは当たり前にあるだろ」
「さも、察して当然って顔するなよ」
「いやいや、近衛騎士副団長だろ。場合によっては、副、って立場は、団長より忙しいものだぞ」
「だから、それだって聞いてねえよ」
「いちいち説明しなくちゃいけないか。子どもではないと思っていたんだが、なあ?」
「職務内容の説明なしで仕事させようとする方がおかしくないか」
何を言っている今さらと呆れる兄と、そんなことは聞いていないとうろんな目をむける弟。二人を交互にセシルは眺める。
(この二人、息があっているのか、すれ違っているのか、よく分からないな)
「よし、こうしよう」
ぽんと団長は拳と手のひらを打った。
「お前たち、丸二日、二人で過ごせ。霧の様子は俺が見ておく。二日後の昼に登庁してくるまで、自由にしてていいぞ」
「殿下の件が終わったら家を借りる。もしくは寮に入る手続きをする。厄介になるのはほんの数日だ」
「急がなくていいよ。家を借りるとなると、条件もあるだろう。色々、精査したらいいさ」
「長く世話になる気は無い」
セシルは歩調を早める。
後ろから追うデュレクが、組んだ手を頭部に当てて、悠々とついてゆく。
二人は報告も兼ねて、団長の執務室へと戻る。殿下と話した内容を伝えても団長は驚かなかった。話は通じていたのだと理解し、セシルとデュレクは確かめることなく暗黙する。
執務用の机に肘をつき、片手の腹で顎を支える団長が、ちょっと思案すように口元を折り曲げた。
「どうされましたか、団長」
「いやね、セシル。副長二人の予定をどうしようかなと思ってさ」
「いつも通り、部下の訓練でも、警備でも、通常通りの仕事をこなしますよ。書類関係の目通しもあります。いつ殿下に呼ばれても対応できるように書類の処理仕事を中心にこなす方が良いでしょうか」
「いや、そういう問題じゃなくてな」
「俺は、部下の訓練がいいな。体を動かす方が性に合っている。王宮に務める者の実力も知りたいしな」
「だからな、そういう問題じゃないんだよ」
団長が、眼球だけ動かし、デュレクとセシルを交互に見た。
「お前たち、これから協力するのに、互いになんにも知らないんだよなぁ……と、思ってさ」
「確かに、会ったばかりですが……」
セシルは怪訝な表情を浮かべた。
デュレクはきょとんと団長を見て、瞬いた。
「俺が二人のことを知っているから、失念していたんだよ。お前ら二人が一緒に殿下の意向に沿うて行動するのに、互いの性格もなにも知らない。これは、由々しき問題かもしれない」
へらっとデュレクが笑う。
「知らないってほど、知らないわけじゃ……っつで!」
セシルにがっと足を踏まれたデュレクが、言い切れずに呻く。
軽く背を丸め、恨みがましい目をセシルの横顔に向けた。
「二人が初対面のままというのは、まずいだろう」
思索にふけり、二人のやり取りを見過ごした団長は背もたれに深く座りなおす。腕を組んで、天井を見上げた。
「しかし、団長。あと二日ほどで霧は発生する見込みです。このような少ない日数では、いつも通り過ごすのがよろしいのではないでしょうか」
「セシルはそれでいいかもしれないがな、デュレク副長はここに異動してきたばかりだろ。殿下の希望を優先するなら、副長としての雑務を覚えるのは、後でもいいと思うんだ。優先順位を考えれば、殿下のご意向に万全の態勢で臨むことだろう。違うか?」
「団長のおっしゃる通りです」
肯定しつつも、団長の話の持って行き方にセシルは嫌な予感を覚え始める。
「デュレク副長。それとも両方同時にこなすことができるか?」
「勘弁してくれ、団長。俺はそんなに器用じゃない。それに、副長という地位ならまだしも、それに付随する雑務もあるなんて聞いてないぞ」
「それは当たり前にあるだろ」
「さも、察して当然って顔するなよ」
「いやいや、近衛騎士副団長だろ。場合によっては、副、って立場は、団長より忙しいものだぞ」
「だから、それだって聞いてねえよ」
「いちいち説明しなくちゃいけないか。子どもではないと思っていたんだが、なあ?」
「職務内容の説明なしで仕事させようとする方がおかしくないか」
何を言っている今さらと呆れる兄と、そんなことは聞いていないとうろんな目をむける弟。二人を交互にセシルは眺める。
(この二人、息があっているのか、すれ違っているのか、よく分からないな)
「よし、こうしよう」
ぽんと団長は拳と手のひらを打った。
「お前たち、丸二日、二人で過ごせ。霧の様子は俺が見ておく。二日後の昼に登庁してくるまで、自由にしてていいぞ」
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