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第四章 戦争争議

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四国中三国が接する国境に地図に載らない砦がある。
そこは二十四家の代表が集まり、秘密の会議を行う場であり、現在は、四国の代表となった四家による未来への話し合いが行われている。

スピア国の代表はレイフ・マクガ。傍に控える魔導士はオーウェン・マクガ。
ヤネス国の代表はエイサ・ヒル。傍に控える魔導士はウォーレン・ヒル。
サイラ国の代表はデニス・バスカ。傍に控える魔導士はベイジル・バスカ。
ミデオ国の代表はゴード・リドリー。傍に控える魔導士はマルコム・リドリー。

円卓を囲む八人のうち、発言権があるのは四人。四国の代表者のみである。
目の前には地図があり、それぞれの代表者の前には金貨が積み上げられている。
これからどこの国に統合させていくかという話し合いのわりに、物々しい雰囲気が漂う。

最年少はレイフであった。
三国の代表たちは、年少者のレイフを値踏みし、見下す素振りを見せる。
三者は結託しているのだろう。しかし、彼らはどこか若い。
この場に、年長の助言者がいてもいいようなものの、なぜそのような人物がいないのか。

三年後に統一すると決めているにしては、その導き手として視野が狭そうな面々が揃っている。

未来を見通すには、過去を学ぶ必要があると前世で考えたことがあった。
人は過去を知る分だけ未来を見れる。
人生を刹那的に生きるなら、歴史に学ぶ必要はない。
今日と明日があればいい人生に、歴史は不要だ。

彼らが俺たちを値踏みするのと同じように、俺たちも相手を値踏みする。
どうも世界の行く末を話し合う面々にしては、場当たり的にしか思考できそうにない顔ぶれに見えてしまう。

とはいえ、これは俺の知らない歴史だ。

前前世で奴隷として見てきたのは地べたに這いつくばって生きる人々だ。
辛うじて生きている状況では、今日と明日だけで精一杯だ。
このような会議が同じ時代に開かれていることも知らないまま死んでいく。
同じ時代、同じ時間を共有しているのに、今の俺の立ち位置と、前前世の俺の立ち位置のなんと真逆な事か。

さらに、前世ではスピア国が統一するはるか未来で生きたいた。
この時代の遺物をいくつも見ている。写真資料や博物館で。歴史だって学んできた。
学んだ歴史に、この時代に二十四家なる家々の存在は記されていない。

歴史とはずれるが、この世を統べる十二の家々があるとか、ないとか、まことしやかに言われていたものの、俺自身はそんな資料もない世迷言は歴史に当たらないとして学んでいなかった。

ともかく、この会議で何が話されるのか、何が行われるのかは分からないものの、これから三年間、なにがおこるのかは、前前世の記憶と前世の年表から少し分かる。

戦乱だ。

小さな理由を見つけては、戦いに明け暮れる。
おそらく、ここにいる三人がその戦乱を主導するのだろう。



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