27 / 60
第五章 統一国
27:
しおりを挟む
砦に二十四家の当主たちが集まった。
最後に到着した公爵と夜半遅く、レイフとともに三者でスピア国の現状を確認する。
薬物をばらまき始め半年、早い者はそろそろマイナスの効果が表れる。
実は薬物を他国に売り始めた当初は、スピア国から売られた薬物はほぼ直接消費者に横流しされていた。
これが売れると分かった途端、それぞれの家が個別に買い付け、色をつけて売るようになった。
毎月徐々に値が上がっていく。
これもまた三家の懐を潤す助けとなった。
半年後の現在、他国で売られる価格は倍に跳ね上がる。
にもかかわらず、生産国のスピア国内では卸値のまま売られていた。
特段、宣伝はしていない。
ただ口伝えで広まる。
スピア国では安く手に入るぞと……。
これにより、人の流れが少しづつ変わる兆しが見えてきた。
儀式の前日。
二十四家が集う夜会が開かれるかと思いきや、何もなく、翌日の儀式に備え、砦は静かに眠りにつく。
翌朝、二十四家の面々が見守るなか、四人の魔導士が正方形の四隅に立ち、挨拶を交わす。
儀式の開始が宣言された。
六家の時と同じく、一騎打ち、魔導士が負けると代表者が咎を負う。
ルールは同じだった。
形骸化した儀式かもしれないが、三家の横暴を見ていた俺たちは、六家の時のような提案はしなかった。
ヒル家のウォーレンは風を得意とするものの、大きな風は扱えず、魔法を練るにも時間を要する。
ハリケーンを起すような魔力をもっていないのであれば、技量はゾーラより劣る。
バスカ家のベイジルは火を得意とするものの、小さな火の玉しか生み出せない。投ずる速さも、ボールを投げる程度のものだ。
火も風も操れれば、火の玉を風速に載せて投じることもできるというのに。
リドリー家のマルコムは水を得意とするものの、量の調整ができない。水は使い方を考えれば、少量でも人を害することができるというのに
物質を生み出す魔法とかけ合わせれば、その場で毒水を痕跡なく作れ、暗殺にも便利だというのに。
拍子抜けする俺は、簡単に三者を打ち負かした。
三戦全勝。
俺は衣類についた土埃をほろうまでもなかった。
スピア国が勝つことは目に見えていたとはいえ、呆気ない幕切れに、ため息しかでない。
二十四家の当主たちは、これは神聖な儀式であると宣言し、魔導士の主が責任を取る不文律を遂行するため、全勝のレイフ以外の主三人を縛り上げた。
公爵家で見た敗者の姿を俺は思い出した。
三敗のゴード。
二敗のデニス。
一敗のエイサ。
三者はこんなはずではないと吠えた。
なにが起こったのか分からないといいたげに、わめいていた。
卓上で不幸を量産していた者たちであっても、己がその責を負う段階になれば、不条理を叫ぶのは滑稽極まりなかった。
最後に到着した公爵と夜半遅く、レイフとともに三者でスピア国の現状を確認する。
薬物をばらまき始め半年、早い者はそろそろマイナスの効果が表れる。
実は薬物を他国に売り始めた当初は、スピア国から売られた薬物はほぼ直接消費者に横流しされていた。
これが売れると分かった途端、それぞれの家が個別に買い付け、色をつけて売るようになった。
毎月徐々に値が上がっていく。
これもまた三家の懐を潤す助けとなった。
半年後の現在、他国で売られる価格は倍に跳ね上がる。
にもかかわらず、生産国のスピア国内では卸値のまま売られていた。
特段、宣伝はしていない。
ただ口伝えで広まる。
スピア国では安く手に入るぞと……。
これにより、人の流れが少しづつ変わる兆しが見えてきた。
儀式の前日。
二十四家が集う夜会が開かれるかと思いきや、何もなく、翌日の儀式に備え、砦は静かに眠りにつく。
翌朝、二十四家の面々が見守るなか、四人の魔導士が正方形の四隅に立ち、挨拶を交わす。
儀式の開始が宣言された。
六家の時と同じく、一騎打ち、魔導士が負けると代表者が咎を負う。
ルールは同じだった。
形骸化した儀式かもしれないが、三家の横暴を見ていた俺たちは、六家の時のような提案はしなかった。
ヒル家のウォーレンは風を得意とするものの、大きな風は扱えず、魔法を練るにも時間を要する。
ハリケーンを起すような魔力をもっていないのであれば、技量はゾーラより劣る。
バスカ家のベイジルは火を得意とするものの、小さな火の玉しか生み出せない。投ずる速さも、ボールを投げる程度のものだ。
火も風も操れれば、火の玉を風速に載せて投じることもできるというのに。
リドリー家のマルコムは水を得意とするものの、量の調整ができない。水は使い方を考えれば、少量でも人を害することができるというのに
物質を生み出す魔法とかけ合わせれば、その場で毒水を痕跡なく作れ、暗殺にも便利だというのに。
拍子抜けする俺は、簡単に三者を打ち負かした。
三戦全勝。
俺は衣類についた土埃をほろうまでもなかった。
スピア国が勝つことは目に見えていたとはいえ、呆気ない幕切れに、ため息しかでない。
二十四家の当主たちは、これは神聖な儀式であると宣言し、魔導士の主が責任を取る不文律を遂行するため、全勝のレイフ以外の主三人を縛り上げた。
公爵家で見た敗者の姿を俺は思い出した。
三敗のゴード。
二敗のデニス。
一敗のエイサ。
三者はこんなはずではないと吠えた。
なにが起こったのか分からないといいたげに、わめいていた。
卓上で不幸を量産していた者たちであっても、己がその責を負う段階になれば、不条理を叫ぶのは滑稽極まりなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる