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第七章 駆落ち
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スピア国の兵はミデオ国の首都に一気に攻め上り、王族や首都にいた貴族達を一掃した。
使者を送り出した王族が軒並み粛清され、ミデオ国の使者も意味をなさなくなる。
帰国する国もなくなった使者はおろおろするばかりだったそうだ。
疲弊していた国民はスピア国の統治を受け入れた。
歴史上もこの統治の成功が、サイラ国やヤネス国を統合する足掛かりになる。
ミデオ国内の二十四家や地方に散っていた有力者たちの後押しもあり、スピア国への統合はスムーズに進む。予定調和であることを知らない人々によるスピア国の評価はうなぎのぼりだ。
ここまでくれば、あと一年以内に二国がスピア国内に統合されることは間違いない。前世で学んだ歴史通りだ。
そうなれば、やっと俺も本来の命題に取り組むことができる。
(一年後、遅くても二年後には俺は姿を消さなければ……)
体のいい言い訳を考え始める時期がきた。
レイフの采配で、サライ国を統合する道筋が組まれ、各国に潜む二十四家が呼応するように動く。
あとは流れるように統合が進むだけとなり、魔導士の俺の役割はほぼなくなる。
ミデオ国統合の成功を見ていた残りの二国の住民も、スピア国に取り込まれることも悪くない、と認識するようになってゆく。
今まで戦いに明け暮れていた王家に対する不満がくすぶり始める。
ミデオ国内が落ち着いていくごとに、残りの二国も浮き足立つようになった。
サライ国に恨みを抱く亡命者の将が先導し、サライ国を取り込み、その勢いのままヤネス国も取り込んでいく道筋は整った。
後は、現地にいる二十四家と協力者が役者として導き、その微調整をレイフが判断するのみとなった。
魔導士の俺だけが暇になる。
ぷらぷらと城内を散策したり、森に出かけたりと、さも権力には興味がないという素振りを見せるように心がけた。
(さて、どのタイミングで、どういった理由で暇をもらうか……)
問題はそこだった。
ふらふらしていると、井戸の水を汲んでいるジェナを見つけた。
幸い、彼女は真面目に働いており、口数は少ないそうだが、問題はないと聞いている。
俺が火球でやったことは、言うなれば殺戮。
空から見たショックで口はきけなくなったということも考えられる。
そう考えると、拾って来た手前、俺にも責任がある気がした。
俺はふらふらと木桶に井戸から水を汲んでいるジェナに近づいた。
「真面目に働いているな」
女に話しかけるのに、どうかという台詞だが、不自然にならない声掛けとして、俺はそれしか思いつかなかった。
ジェナは突然俺に話しかけられたことで驚き、両目を瞬かせる。
「オーウェン様……」
「俺の名を知っているのか?」
「もちろんです。その、あの……、助けていただきありがとうございます」
ジェナは直角に身体を曲げて、礼を告げた。
これには、俺も面食らった。
使者を送り出した王族が軒並み粛清され、ミデオ国の使者も意味をなさなくなる。
帰国する国もなくなった使者はおろおろするばかりだったそうだ。
疲弊していた国民はスピア国の統治を受け入れた。
歴史上もこの統治の成功が、サイラ国やヤネス国を統合する足掛かりになる。
ミデオ国内の二十四家や地方に散っていた有力者たちの後押しもあり、スピア国への統合はスムーズに進む。予定調和であることを知らない人々によるスピア国の評価はうなぎのぼりだ。
ここまでくれば、あと一年以内に二国がスピア国内に統合されることは間違いない。前世で学んだ歴史通りだ。
そうなれば、やっと俺も本来の命題に取り組むことができる。
(一年後、遅くても二年後には俺は姿を消さなければ……)
体のいい言い訳を考え始める時期がきた。
レイフの采配で、サライ国を統合する道筋が組まれ、各国に潜む二十四家が呼応するように動く。
あとは流れるように統合が進むだけとなり、魔導士の俺の役割はほぼなくなる。
ミデオ国統合の成功を見ていた残りの二国の住民も、スピア国に取り込まれることも悪くない、と認識するようになってゆく。
今まで戦いに明け暮れていた王家に対する不満がくすぶり始める。
ミデオ国内が落ち着いていくごとに、残りの二国も浮き足立つようになった。
サライ国に恨みを抱く亡命者の将が先導し、サライ国を取り込み、その勢いのままヤネス国も取り込んでいく道筋は整った。
後は、現地にいる二十四家と協力者が役者として導き、その微調整をレイフが判断するのみとなった。
魔導士の俺だけが暇になる。
ぷらぷらと城内を散策したり、森に出かけたりと、さも権力には興味がないという素振りを見せるように心がけた。
(さて、どのタイミングで、どういった理由で暇をもらうか……)
問題はそこだった。
ふらふらしていると、井戸の水を汲んでいるジェナを見つけた。
幸い、彼女は真面目に働いており、口数は少ないそうだが、問題はないと聞いている。
俺が火球でやったことは、言うなれば殺戮。
空から見たショックで口はきけなくなったということも考えられる。
そう考えると、拾って来た手前、俺にも責任がある気がした。
俺はふらふらと木桶に井戸から水を汲んでいるジェナに近づいた。
「真面目に働いているな」
女に話しかけるのに、どうかという台詞だが、不自然にならない声掛けとして、俺はそれしか思いつかなかった。
ジェナは突然俺に話しかけられたことで驚き、両目を瞬かせる。
「オーウェン様……」
「俺の名を知っているのか?」
「もちろんです。その、あの……、助けていただきありがとうございます」
ジェナは直角に身体を曲げて、礼を告げた。
これには、俺も面食らった。
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