並行世界で悪魔とゲーム

誇高悠登

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並行世界の日常 (正大 継之介)

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 翌朝。
 俺は買い起きしている缶コーヒーを片手に、昨晩、〈悪魔〉と戦ったビルへと足を運んでいた。派手に窓ガラスを割ったのだから、騒ぎになっても可笑しくはないが、誰も騒ぐ人間はいなかった。むしろ、そのビルを避けるよう顔を背けて歩いて行く。
 避けているのは、テレビやネットも同じだった。
 どれだけ調べても、話題は見つからない。情報に溢れたネットワークの中で、俺の前に建つビルは隔離されているようだった。

〈悪魔〉について話題に上げれば、罰を受ける。
 それがこの世界のルールだった。
 表現の自由など〈並行世界ここ〉にはなかった。

「なんて不自由な世界なんだ……」

 例え〈並行世界〉だろうと、やはり、俺にとっては異世界だ。缶コーヒーのタブをあけた俺は、無糖のコーヒーを一気に飲み干す。
 自販機の横に置かれたゴミ捨て場に、空き缶を投げ入れて俺は歩き始める。

「それにしても、昨日のあいつはなんだったんだ?」

 俺が現場に来たのは、青い鱗を持った〈悪魔〉を探すためだった。少しでも手掛かりを得ようとしたのだが、怪しい人物は一人もいなかった。

「〈悪魔〉か……」

 青い鱗の〈悪魔〉。
 同族を殺した〈悪魔〉は〈ポイント〉と言っていた。
 それは――俺達が求めているモノと同じである。
 何故、〈悪魔〉が同じものを集めているのかは分からないが、今後とも邪魔をされたら俺達の目的が叶わなくなる。

「一度、公人と相談して、情報を買った方が良いのかも知れないな」

 俺は職場に向けて歩き始める。
 まあ、職場というかバイト先だけど。俺が勤めているバイト先は洋食店。俺は、そこでウェイターとして働いている。
 食事処故に、俺の出勤時間は遅めの10時なのだが、たまには早く出勤して仕事を手伝うのも悪くない。日頃、お世話になってるからな。

〈悪魔〉からバイトへとシフトが変わった俺に、街を歩く一人の女子高生が手を振りながら近づいてきた。

「あ、ツッギーじゃん。こんなとこで偶然だねー! なに、なにしてんの? 仕事は?」

「ツッギーって言うな! 俺はお前より5歳は年上なんだよ、誠子(せいこ)!」

 俺に話しかけてきた女子高生の名前は柚木(ゆずき) 誠子(せいこ)。
 これから学校や仕事が始まる時間帯だというのに、憂鬱ゆううつさを感じさせない爛漫な笑顔は、太陽に負けないほど輝いていた。

 元気が良いのは悪いことではないが、年上に対して変な呼び名を付けるモノではないと、俺は会うたびに注意するのだが、改善される兆しは見えない。

 頭の上で纏められた髪の毛が、動くたびに揺れる。

「あー、じゃあ、ツッギーは3歳だ」

「23な! 5歳年上って言ったのにどうやったら3歳になるんだよ!!」

「冗談だよー。もう、一々、本気で答えるからツッギーは可愛いねー」

 女子高生としては少しばかり小柄な誠子が、つま先で立って俺の頭を撫でてくる。スーツを着た男が女子高生に頭を撫でられる図に、如何わしい視線を向けて通り過ぎていく通行者たち。
 そんな視線に誠子の手を払って、「か、かわいいだと……。う、ウン」と俺は咳払いをした。
 全く。
 大人の俺を子供扱いするなんて、ここはビシっと言ってやらないとな。

「そうだ。折角だから、今日一日頑張れるようにコンビニで好きなだけお菓子を買って上げよう」

 別に俺は、可愛い女子高生に可愛いって言われ喜んでいる訳ではない。
 誠子の細すぎる身体を心配しての発言なのだ。
 何故ならば、彼女の両親こそ、俺のバイト先の洋食店を経営している雇い主なのだから。
 俺の言葉に、ぴょんぴょんと俺の手を掴んで跳ねる。

「本当!? もう、ツッギーはチョロ……、優しいなー! あ、ついでにさ、今日、純(じゅん)姉さんのところ行くからって伝えておいてよ」

「おー、任せろ、任せろ」

 俺は女子高生に腕を引かれ、近くにあったコンビニに入っていった。
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