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帰宅
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私は家に帰って来たらしい。
母を起こさないように静かにドアを開けると、誰もいなかった。
「お帰り」
声に振り返ると、後ろに母はいた。
「あれからもう5年になるのね」
父が飛行機事故で行ってからもう5年経ったとのこと。
しかし、私にはその記憶は無いし、葬儀に参加した記憶すらない。
「どんな状態だったの?」
「世の中には知らないほうがいいこともあるのよ。私も思い出したくない位想像もつかないくらいひどい状態で見つかったんだから」
そんなものなのだろうかと思った。それにしても、父親が死んだことを5年も知らないなんてありえることなのだろうか。
ここで、自分が今どこから帰ってきたのか思い出した。
私は数日前にある会社に就職し、二つの工場に勤務先がある。そのうちの一つが本来の勤務先だが、今日はもう一つの工場から帰ってきた。仕事はなぜか工場の一室で政治活動をしている。そこで物凄い難しい名前の政治団体に入って政治献金のことを研究しているのである。違法なはずだが、そこのメンバーは皆
「こんなの当たり前だ」
と一切問題ないかのごとく平然としている。
ひょっとして、この会社に勤務している間に浦島太郎のように5年間経過してしまったのだろうか。そう思った時にもう一つおかしな点に気が付いた。
母はもうかなり前に亡くなっているはず。ということは、死んだのは実は私で父の方が生きているのではないか。そんな気がしてきた。
母を起こさないように静かにドアを開けると、誰もいなかった。
「お帰り」
声に振り返ると、後ろに母はいた。
「あれからもう5年になるのね」
父が飛行機事故で行ってからもう5年経ったとのこと。
しかし、私にはその記憶は無いし、葬儀に参加した記憶すらない。
「どんな状態だったの?」
「世の中には知らないほうがいいこともあるのよ。私も思い出したくない位想像もつかないくらいひどい状態で見つかったんだから」
そんなものなのだろうかと思った。それにしても、父親が死んだことを5年も知らないなんてありえることなのだろうか。
ここで、自分が今どこから帰ってきたのか思い出した。
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