夢十夜

鳥

　私は毎日学校に行くのが苦痛だった。

　クラスメイトには毎日のように虐められ、担任にも嫌われている。

　家でも父親は私のことを嫌いらしく、いないほうがいいなどと平気で言う。

　私はどこにも居場所が無かった。

　そして思った。

　「鳥になって自由に空を飛んでいたい」

　ある日、奇妙なチラシを見た。

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　クラスにいつも虐められているやつがいる。気弱な感じで常に暗い目をしている。

　友人とは言えない関係だけど、家が同じ方向なので帰宅時にはよく見かける。

　ある日、奇妙なことに気付いた。　

　方向が同じなので、俺もやつも同じ電車に乗る。やつの家が何処なのかは知らないけど、俺の家よりも遠いらしく、俺が降りる駅ではまだ乗っている。

　やつが、俺の降りる駅より三つ前で降りるようになった。

　初めはどこかに寄っていくのかと思った。別にそれ自体はおかしなことではない。

　当初は週に一日程度だった。それが少しずつ増えていき、やがて学校の帰りには毎日その駅で降りるようになった。

　気にはなっていたけど、聞きだすような関係ではない。学習塾にでも通い始めたのかと思っていた。

　ある日、やつは学校に来なくなった。

　担任に言われた。

　「あなた、同じ方向なんでしょ？電話を掛けてみてくれない？」

　あまり気が進まなかったが、担任に頼まれたので電話を掛けてみた。携帯の番号など知らないので自宅の電話である。

　やつは出て来なかった。母親が出て、部屋の中に閉じこもっているらしい。

　それ以上できることは何も無かったし、担任も何も言ってこなくなった。

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　私は家を出た。もう二度とここに戻ってくることはない。今までの全てを捨て去って旅立つ日。

　やがてあるところに辿り着いた。ここが私の来るべき場所だったのだとすぐに理解した。

　誰一人いない白い宮殿。廃墟にしてはやけに清潔。周囲は見渡す限り大平原が広がっている。

　そのベランダに一人私は立った。

　私の衣服がみるみる羽毛に変わっていく。そして私は鳥になった。

　もう二度と私をいじめた奴らと顔を合わすことはない。性格の合わない父親の声を聞くこともない。

　私はゆっくりと広い大空を飛びながら緑の大地を見渡した。

　私は永遠の自由を手に入れた。