夢十夜

空き巣

　帰宅すると、玄関が開いていた。

　鍵がかかっていなかったとかではなく、引き戸の玄関が全開になっていた。

　出かけるとき、何度も鍵がかかっていることを確認する習慣がある。かけ忘れたということはあり得ないし、ましてや開けっ放しで出かけるなどあるはずがない。

　思考が凍り付く。いったいどうやって開けたのだろうか。

　家の中に入って確認したが、特に変わった様子は無い。通帳や印鑑といった物は出かける時にいつも持ち出しているから、盗まれてはいない。もっとも、私は片付けが苦手なので普段から家の中がとり散らかっている。ただ、誰かが入り込んで勝手に物を動かしたりしようものなら確実に分かる。

　何時私が帰ってくるか分からないのに、長時間探すようなリスクが高いことはしまい。入ってはみたものの、盗むようなものが見つからなかったのであきらめて帰ったのだろうか。

　もっとも、パソコンを開いてデータを盗み見られたのだとしたら確認のしようがない。これが恐ろしい。

　いずれにしても誰か入り込んだだけは間違いない。鍵を盗まれたことは無いし、どうやって開けたのか、それだけが気になって仕方がない。

　出先で、私のカギを盗み取り、合鍵を作って、元鍵は私が気付く前に戻したのだろうか。私は鍵をキーホルダーでバッグに括り付けているので、私に気付かれること無くそれを外すのは簡単ではないはずだ。

　謎は深まるばかりである。