売春婦

zebra

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仕事

先生

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 「あの、伺ってもいいですか?」

 「何?」

 「先生、って何者なんですか?」

 「売春婦よ」

 少年の様子が目に見えて変わった。

 「売春婦って、男の人とセックスしてお金をもらうという?」

 「そうよ。いろいろな人がいて、私の場合どんな男性でも相手にするわけではないけどね」

 「ぼくの相手をしてくれるために来たんですか?」

 「そういうことになるかもしれないわね」

 「なるかもしれないって?」

 「あなた次第。相手をしてあげるかどうかは私が決めます。ご両親も承諾済みよ」

 がっかりしたのが分かった。今まで想像でしかなかったセックスを出来るものだと思い込んでいたに違いない。

 「はっきり言っておきます。私はあなたの性欲処理のためのおもちゃになりに来たわけではありませんから」

 「でも、それが先生のお仕事なんじゃないですか?」

 「私は、お金さえ出せばだれでも相手にするような売春婦とは違います。はっきり言ってお金に困っているわけでもありません。お金を積み上げて偉そうな態度をとるような人は私の方からお断りしています。「お客様は神様です」なんて考えは私にはありません。あくまでも対等な立場で「それでもよろしくお願いします」という人でなければそもそも私のお客になる価値さえ無いという考えです。あなたの親御さんもそのことは百も承知で私に依頼してきました。
 ですから、あなたの相手をするかどうかはあなた次第です。今日はそれを確認するために参りました。あなたが私のお客になるかどうか見定めるための面接です。あなたにその覚悟はありますか。

 私が相手にする方たちは、私の面接を通った方ばかりです。面接を通らずに落ちた方はいくらでもいます。それでも私を相手にすることは価値があると考える方だけを相手にしているんです。面接を通った方の中には涙を流して喜ぶ方もたくさんいます。

 覚悟が無いのであれば、私はここでお暇します。ご両親にはそうお話しします。出張費はいただきますが、それ以外のお金はいただきません。そして二度とお会いすることは無いでしょうね」

 少年は黙り込んだ。ここまで大事だとは思っていなかったのだろう。

 「どうします?」

 「面接、よろしくお願いします」
 
 覚悟ができたのだな、と思う。私としても無駄足になるよりはその方がいいのは確かだ。

 「わかりました。次に伺う時に試験と面接を行います。今日はそのためのテキストをお渡ししておきます。しっかり勉強しておいてください」

 「今日は何もさせてもらえないんですか」

 「当たり前です。女性のカラダを手に入れるということはそんなに簡単なことではありません。初めて会った日にすぐ触らせてもらえるなんて考えたらとんだ間違いです。今日はこれで帰ります」

 持ってきた本を少年に渡す。私が自ら書き上げたオリジナルのテキストである。こう言ったら失礼かもしれないが、市販の性教育の本に満足させられるものは無かったからである。

 少年に渡し、両親に挨拶する。
 
 「お子様、私を希望されるそうです。私のスケジュールはこの通りです。この中から本人、それとご両親のいずれかご在宅の日時を選んでください」

 「わかりました」

 「それではこの日に伺います。本日はお邪魔いたしました」

 「ありがとうございました」

 帰宅の途に就いた。
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