私がエロ小説を書き始めるようになった理由

金曜スペシャル（４）

　「エーゲ海に捧ぐ」という映画が作られたことがある。テーマや内容や舞台はヨーロッパ風だが、池田万寿夫という日本のマルチ芸術家が監督した作品である。

　内容は明らかにポルノだが、規制が緩かった当時は、テレビ放送されたこともある。

　この映画に出演する女優のプロモーション映像を作るため、映画の作成前に池田が撮影に臨むところが番組で放送された。モデルになったのは、ポルノ女優だったチッチョリーナではなく、それまで脱いだことのない普通の女性である。


　撮影スタッフとともにビーチに来たものの、やはりなかなか脱ぐ勇気が出ない。池田も強要することはなく、着衣のままの写真を撮り続ける。

　数日後、彼女はビキニ姿で撮影スタッフの前に現れる。写真を撮り続けるうち、ようやく決意する。

　ついにその時が来る。ビキニのブラ、パンツを撮影スタッフの前で脱ぎ捨て、自らポーズを取り続ける。

　池田にとっては満足のいく作品になったが、彼には不満なことがあった。

　それは、日本国内では彼女の写真を全て公開することが不可能なこと。当時はヘアヌード（そんな言葉自体無かった）が認められるようになる遥か前で、股間を隠すようなポーズか、角度で撮ったものしか許されていなかったのである（アンダーヘアが生えていない少年少女については野放しだったのは既に別項で書いた通り）。

　ヘアヌード解禁後に造られていたらどんな作品になったのか、個人的には気になる。その後写真集を出したことは聞かないが、篠山紀信に相当する才能があったのではないかとも思う。池田は1997年に亡くなっているが、映画作成に携わったのはこの時だけである。