怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

148-[バリット]と[カニマ]

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「もう!いい加減に機嫌直しなさいよ」
「別に怒ってませんよ!」

 うさぎ亭に一泊した私達に会いに、食堂の机に私とアリッサ、ラーバルそれと完全にすねてしまったファーダがいます。

「怒ってるじゃない……」
「マルレ~、そんなのほっておきなよ、を探すんでしょ」

 そんなのって……まあ今は、ファーダにかまってる暇ありませんね。

「そうでしたわね、やはりトラディネント領でしょうか?」
「この度の戦争の主導者ですから、その可能性は高いでしょう」
「じゃ~またマルレが先に行って記録板よろしくー」

 アリッサは、また私を先行させるようですね。その方が早いから別にいいですけどね。

「わかりましたよ」
「トラディネントにはアーク率いる枢密院が当たっているはずですので、お会いしたら他の地域は制圧済みだと伝えてください」
「わかりましたわ、着替えたら出発しますわ」

 私は、そう言って席を立つ、アリッサはラーバルに枢密院が戦えるのか?と疑問をぶつけているのが気になったけど、宿の自室に戻って着替えることにした。

 部屋に入ると、変装する必要もなくなったので当世具足を脱いで、次元リュックへと保管し、代わりに拳法着を取り出して着替える。

 肩を回したり足を上げたりして、動きが阻害されないのを確認する。

 うん!やっぱりこれね!とっても動きやすいわ。

 着替えも終わり、部屋から出ると、そこには、ファーダがいた。

「お嬢は、また前線に行くんですか?」
「とりあえず先乗りして場所を記録してくるだけよ」
「なら俺も一緒に行きます!」

 うーんファーダと一緒に行くより待っててもらってアリッサに送ってもらったほうが絶対早いわよね……

「でも、一緒に行くより待っててもらったほうが……」

 あ!もしかしたらファーダなら私の速度でも耐えられるかも!

「そうだ!ファーダなら私が抱えて跳んでも急加速の衝撃に耐えれるんじゃないかしら?」
「……は?」

 え?ファーダを抱える……それって抱きつくってことよね……それも私から……

「どどどどどど、どうかしっらっ私と一緒に行きますか!?」

 そう言いながら私はぐぐっとファーダに顔を近づけた。

「うわ、どうしたんですかお嬢!?」

 ああああああ!恥ずかしい!やっぱり無理!
 
「なし!やっぱり今の無し!忘れてちょうだい!」

 私は、そう言い残すと慌てて宿の外にでた。

「ちょっと!まって!」

 脚壁垂直ジャンプで、ファーダの静止を振り切り、空歩壁をフルバーストで蹴りものすごいスピードで農都を離れた。

 あ~恥ずかしかった。なんであんな提案しちゃったんだろ。別に縄で縛って吊るしていけばよかたんだわ!そうよファーダにはそれがお似合いよ!

 って違うわ!それじゃまるで私がファーだと一緒に行きたいみたいじゃない!おとなしく待ってろって言えばよかっただけよ!

 はぁ……二人きりは、まずいわね……頭がおかしくなるわ。

 ぐちゃぐちゃな思考に見切りをつけて隅っこに追いやると、やるべき事を進める。

 私は、谷の道を眼下に北へと飛んでいく。

 アークの一団と入れ違いにならないように、きっちりと道を監視しながら北上した。焦ってフルバーストで蹴ってしまったのでものすごいスピードがでて、あっという間にトラディネント領に到着した。

 ここから急に地面が乾いているから、きっとトラディネント領に入ったのでしょうね。

 目を凝らすとそこには、巨大なゴーレムがこれまた巨大なシャベルで、穴をほっているのが見えた。

「うわ、何アレ凄い!」

 近くにある赤い塊をどうにかするための穴をほっているみたいね。

 空歩壁を蹴りどんどん近づくと私が想像してたよりずっと大きかった。やっと見下ろせる場所までくるとその大きさがよくわかった。この巨大ゴーレムは、砦より大きいようです。

 中に部屋とかあったら住めそうね……

 何処に着地しようと考えていたら、ゴーレムの頭の上に白いローブを着た人が大の字に寝そべっているのが目に入った。

 私は、ゴレームの頭の上に着地しその人に近付いた。

 そこには、息を切らして寝そべっている神の使いさんがいました。

「あなたこんなところで何をしているんですか?」
「ああ、マルレさんですか、ちょっと疲れたので休憩しています」

 いやそう言うことではなく、どちらかというと何をして疲れたのか聞きたかったのですが……

「冗談よ、いま丁度スペクトルの成りそこないの魂を800人分ほどを処理したところよ」
「処理……ですか……」

 やっぱり消されちゃったりしたのかな……

「きっとあなたが思っているようなことではないですよ、ちょうどあなた一人だし、どうせあなたもこちら側に来るんだから説明しておいてもいいでしょうね」

 彼女はそう言うと、この世界について少し教えてくれた。

 人の体には、魂のようなものが2種類入っているとのことです。

 1つ目は、[バリット]で、一般的にイメージする魂で、意識や精神といった役目を持っているそうです。
 2つ目は、[カニマ]で、肉体を動かすための魂で、言い換えると生命力になるそうです。

 そして、その2つの魂が離れる事によって死というものが訪れるそうです。

 離れた[バリット]と[カニマ]は、共に審判の場に行き、その罪を量られた後に再び一つになるそうです。善人なら記憶を維持したまま次の世界に行き、悪人なら記憶を抹消されて、新しく生まれた魂と同じくこの世界に再び生まれる。つまりやり直しだそうです。

 まるで留年みたいね……
 
「魂について分かっていただけたと思いますが、私がいった処理というのは無理やり融合された[バリット]と[カニマ]を分離していたんですよ、このままだと審判の場にいけませんからね」
「へぇ……そんな仕組みになっていたんですね」

 そういえば、コテを拾ったときも息が上がってましたわね。分離処理した後で疲れていたのね。

 あれ?そうなるとアンデットや亡霊そしてスペクトルとは、いったいどのようなものなのか?と疑問に思い聞いてみることにした。

 まずアンデットは、[バリット]だけが先に審判の場に行ってしまい、恨みと憎しみを[バリット]代わりにして[カニマ]が体を動かしている状態だそうです。

 次に、亡霊は、強い意識で[バリット]がこの世に留まっている状態で[カニマ]は遺体に残っているそうです。遺体が存在しない場合は[カニマ]だけが先に審判の場に行くらしいです。

 最後にスペクトルですが、審査をせずに[バリット]と[カニマ]をこの世で融合させるのだそうです。その際に、[バリット]と[カニマ]をあわせた力が一定以上に達していないと意識がなくなり元の肉体に戻ってアンデットと似た状態になってしまうのだそうです。

「それでスペクトルは功績(バリットの力)か強さ(カニマの力)が必要なのですね!」
「そう言うことです」

 私はふと思い出した……トモカの魂は確か肉体の力を変換してこちらに来たのですよね……もしかして自力でスペクトルに?

「その顔は気がついたようですね、あなたは既に三分の二がスペクトルなんですよ」
「なんですって!」

 おおう……異常に強いからおかしいとは、思っていたけどほぼ人間やめてたみたいね……あとは、マルレリンドの[カニマ]を取り込んだら完全にスペクトル化してしまうということなんですね。そうだ、もしかしたら……

私が、クロービに行く前にお母様から聞いた話を思い出した。

『本来のあなたは魂の力が弱くて流魔血に意識を潰されて人形のように何にも興味を示さない人間になってしまう運命だったの』

 もしかしたらこれも関係があるのではないでしょうか?

「お母様が私は、流魔血が強すぎて意識が食われると聞いたのですが……」
「ええとですね、[カニマ]が強すぎて[バリット]が追い出される事があるのよ。つまりはアンデットと似たような状態になります。その場合は日常生活を普通に送りたいが原動力となるので、感情はないけど健康状態は保ちます」

 そっか、やはり何事にもバランスは大切なのですね……って!マルレのカニマ強すぎじゃない!?なんかいろいろごちゃごちゃ入ってるのに平常を保てるなんて……

 ここまで恵まれていると、何かを成し遂げなければ、いけないような気になってきますね……

「説明を聞けば聞くほど、私達の手伝いをしたくなってきたでしょ?」

 おっと!危ない!まんまと思考誘導にハマってましたわ!

「いえ!物語に誘導するというこの世界に納得がいっていないのでまだ進んでやる気はしませんわ!」

「だったら説明……いや、もう見てもらった方が早いわね……」

 神の使いさんはそう言って立ち上がると、コンパスと、各定規を取り出して、ゲートを開いた。

 どうやら私は、ついにこの世界の真理に対面するようです。

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