怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!

タハノア

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自分達の物語に決着をつける編

149-タカミムスビ

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 未だに穴を彫り続けている巨大ゴーレムの頭の上から、ゲートを通り見知らぬ場所へと移動する。

 無理やり通った以前とは違い、体をこねられるような感覚は無くすんなりと通り抜けた。

 ゲートを通り抜けたその先は、少し肌寒く、左右に無数の黒い柱が均等感覚に並ぶ空間だった。

 黒い柱は、所々チカチカと緑色に光っていた。そして先にゲートに入った神の使いさんが、こちらを向いて待っていた。

「オホン!では、あらためまして、私は、スペクトルイブの雨降 梅アメフリ・ウメと申します」

 スペクトルイブ?最初のスペクトルという意味でしょうか……それに、アメフリ・ウメって完全に日本人ネームよね。彼女も転生者なのかしら?

 私は、もう一度あたりを見回す。私はここへ来る前は神話的な雰囲気のところに神様でもいるのかと思ったがそんな雰囲気は一切なく、黒い柱が並んでいるだけだった、でも何処かで見たことあるような気がする……

「なんですかここは?」
「ここは、この星いえ……星間移民船JP-538の中心部です。」

 星間移民船………そうか、この場所になんとなく既視感があるのは、前世で見たことがあったサーバールームにそっくりだからだ。

「星間移民船?それってなんですか?」
「すべての日本人を乗せ新天地を求め地球を旅立った船です」

 あれか!ファンタジーの最終回付近で急にSFになるやつね!ってことは……

「えっと……もしかして私のいる世界はシュミレーションとかだったり?」
「いえ、現実です。あなた達は生物……そして日本人の子孫です」

 えーっと?船の中に空があってそこに住んでいるってこと?それに日本人!?もう何がなんだかわかりませんわ!

「全く意味がわかりません」
「では、説明しますね」

 彼女の話は衝撃的なものだった。

 まずこの世界いえ、この星間移民船は、惑星型の移民船で、この場所を中心にマントルや地表があり小さな地球と言っても良いものだそうです。月と太陽は、完全制御された衛星であり、夜空の星が毎晩変わるのは、宇宙を航行しているかららしいです。

 そして地球を旅立ったこの船に乗り込んだのは日本に暮らしていた全員だそうです。

「この船については分かっていただけましたか?」
「もしかして私が暮らしていた地球より……かなり未来?」
「そうです。西暦だと5714年で、移民船出向から3374年になります」
「西暦ごせ……ん」

 驚くことばかりで考えがまとまらないですが、当初の目的である物語に誘導する理由を聞いてみることにしました。

「肝心なことを教えてください、この世界はなぜ、物語に誘導されているのかを」
「ではまず。誘導している張本人をご紹介しますのでついてきてください」

 私は、神の使いさん……いえ雨降さんの後について黒い柱郡の中を進む。暫く進むとより大きな黒い柱にたどり着いた。

 雨降さんは、その大きな黒い柱を手のひらで示しながら紹介した。

「こちらがこの世界のすべての出来事をコントロールしている……」

 彼女は時折緑色の光を放つ大きな黒い柱を見上げた。

「移民船管理AI”タカミムスビ”です 」

 AIですか……傲慢な神とかのほうがマシだったかもしれませんね……

「このAIは、現在私達の制御下から離れています」
「暴走しているということですか?」
「いえ、正常稼働中です」

 制御下にないのに正常とはいったいどういうことだろうか?

「歴史の話をしても、しかたがありませんので簡潔に申します」

 そう言うとこの世界の現状を話し始めた。

 旅立ってから数百年後この移民船の住民は、東西に別れ戦争を起こし、最終的に究極破壊兵器の交差発射により両陣営が文明と共に滅び残ったのは数名だったそうです。

 人類存亡の危機を感知したAIは設定どおり[人類再生モード]に移行しました。このモードは、危機に陥った原因の人間からの指示を受けずに、AIが今までの人類の歴史を参考に誘導し人類の再建に動くことだったのです。

 生き残った中から男女のペアが[人類再生モード]を手助けするスペクトルアダムとスペクトルイブとして選ばれたそうです。

 ある程度は順調に行っていたのですが、様々な困難を乗り越えた人類は進化し魔法を得たそうです。

 するとAIはエラーを起こした。誘導すべき歴史に魔法が存在していなかったからです。AIは外部の助けを得ずに思考により結論を出した。

 アーカイブ内にあった創作物を歴史と認定しエラー状態から回復したのです。その後は創作物を手本に誘導を始めたそうです。

「それで……物語に沿って誘導しているのですね……」
「ええ、細かい表記がない場合は代わりに日本の歴史で代用しています。例えば料理に細かい描写のなかったレイグランドは、本場の料理ではなく日本人に合うように改良された料理になっていたりします」

 クロービの中華も本場じゃなくて餃子定食とかがあったのはそのせいですか。

「そもそも選ぶ基準は何なのですか?」
「主なものは平和ですね、それに英雄がいればついでにそちらもという感じですね。そして平和に向かう誘導は強力ですが不幸に向かう誘導は、たった一人が変えられるほど弱いです。レイグランドは300年の平和が終わりその誘導力はほぼない状態です」

 ということは、レイグランドは……

「あなたとアリッサがいたのでレイグランドは改変され放題でしたよ」

 やっぱりそうなのね。全然強制力っぽいのがなくて自分からやらなくても良い追放裁判とか開催しちゃったものね……

「あれ?そういえば、外道丸さんから聞いたこの世界の3つ目の物語は?」
「散り散りに再現されてしまってもう欠片も残っていませんよ……というか、あの物語の英雄はもう誕生していますよね?」
「え?」

 英雄といえばラーバルよね?どういうことかしら?

「納得いってないようですね?いまデータを出しますから見てみると良いですよ」

 彼女はそう言うと大きな黒い柱を触り一つの文章を出した。

 それは、外道丸さんが言っていたトレイルが暴れた後の物語りだった。外道丸さんは中途半端に覚えていたらしく続きがあった。

 あの話のなかで乙女ーゲーからずっと存在する唯一死んでいない人物がいたのです。

 それが国からヒロインを連れて逃げ、勇者と共に戦った女騎士でした。彼女は激闘の末に自身の先祖の亡霊である黒幕を退治して国を立て直したという話だった。

「ああ、ラーバルがスルーベルを倒したことが誘導でしたのね……」
「そういうことです」
「でもまだ、アウゲルとかいう厄介なのが残っていますが?」

 今読んでいる文章ではアウゲルは、スルーベルの謀反にあって殺されていた……

「誰かさんのせいで、アウゲルはスルーベルが太刀打ち出来ないほど力をつけましたからねぇ……」

 あー……そうか……結局は私が撒いた種ってことですね。

「どう?進んで手伝う気になりましたか?」 
「ええ、何もかも納得しました!世界を平和の方向にひん曲げてみせますわよ!」
「フフフ頑張ってください。きっとタカミムスビも協力してくれますよ」

 私が総決意表明したそのときでした。

 機械制御された全身鎧のようなものを着込んでいる大男が怒鳴り込んできた。

「おい!ウメちゃん!レイグランドでトレイルが暴れてるぞ!どうなってやがる!」

 トレイルが暴れてる、その言葉に私と雨降さんは、血相を変えた。
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