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自分達の物語に決着をつける編
152-農都襲撃 ― 兄
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「キサマ!名乗り中に攻撃するとは!」
アウゲルは大見得を切っている途中での攻撃にありえないと憤慨している。一方アリッサは、次の隙を虎視眈々と狙っている。
両者の間に緊張が走る。
先に動いたのはアウゲルだ、空へと飛び上がりアリッサを眼下に見おろす。亡霊は肉体がないため楽に空を飛行できる。高位の風魔法使いだけの世界に、身体的特徴のみで踏み込んでいるのである。
アウゲルは、高笑いと共にアリッサに向けて石の弾丸[ロックバレット]を無詠唱で連続して撃ち下ろしている。しかし鈍色空狐と化しているアリッサは、これを難なく回避している。
空からの攻撃は、非常に有効だ……しかし、今や空は、高位の風魔導師だけのものではなくなっていた。
「はあぁぁぁぁ!」
アリッサに気を取られていたアウゲルの背中をラーバルが切りつけた。アウゲルの背中は、大きく切り裂かれ魔力が漏れ出した。しかし光属性を持っているアウゲルの傷はすぐにふさがっていった。
「おのれ!」
アウゲルは、振り向きざまにラーバルに向けて、人の全身を楽々包み込むほどの極太の光線を放つ!
「きゃぁあ!」
放たれた光の中にラーバルが包み込まれる!火傷を負ったラーバルは煙を上げつつ地面へと墜落した。
詠唱のない魔法攻撃と、光ゆえの弾速の速さに対応しきれずにラーバルは、まともにこれを受けてしまった。
「ラーバル!」
アリッサは、すぐに回復に駆け寄りたいが、アウゲルの土魔法攻撃で思うように近寄れない。
「ほらほら!どうした!騎士の娘が死んでしまうぞ?」
アウゲルは尚も笑いながら石の弾丸を連射している。アリッサは、回避しながらも対処法を考える。 回復をしながらの障壁で耐えられるか?それとも攻撃で動きを止めるか?悩んだ末にアリッサは答えを出す。
「空狐解除!光よ障壁となれ!」
ラーバルに素早く駆け寄り鈍色空狐状態を解除しすぐに光の障壁を張った。
「白狐!黒狐!戻れ!そして、迦楼羅招来!」
アリッサは障壁を張りつつ白狐と黒狐を戻すとすぐにカルラを召喚した。状況を見たカルラは一瞬でアリッサがしてほしいことを理解した。
「法輪よ強固な盾となれ!」
カルラは背負っている法輪を大きくすると前面に構えた。すると法輪は炎をまとい激しく回転し始める。そしてその法輪をアウゲルとアリッサの間に滑り込ませた。
法輪はアウゲルの攻撃にびくともせず完全に防ぎ切っている。手が空いたアリッサは直ぐにラーバルを治療し始めた。
ラーバルの火傷は酷かったが、熱に強い邪竜の手先の革のおかげで深度は低く、すぐに治療を終えた。
「うぐぐ、すまない不覚を取った。」
「もう大丈夫ね!あんなやつ消し飛ばしてやるわ!」
アリッサは傷が癒えたのを確認するとすぐに、アウゲルに向かう。アリッサは、ありったけの魔力をカルラへと譲渡した。
「おおおおお!力がみなぎる!霊峰より離れた場所でこれほどの力を出せるとは!」
カルラは、霊峰タカオの力を借りなくても、全力が出せることに驚きを隠せないでいる。そして彼は、アリッサの心意気を受け取り新の姿をあらわにする。
「思いは受け取ったぞ!オン・ガルダヤ・ソワカ!」
カルラは、光の塊へと変化しそれは大きくなり炎の鳥ガルーダへと姿を変えた。金色の炎に包まれた巨大な鳥は空いっぱいに翼を広げる。
「邪なる者よ消え去るが良い!迦楼羅炎!」
ガルーダの口から放たれた、まぶしいほどの金色の業火はアウゲルを焼き尽くす。
「グルウォアアアアア!」
アウゲルは身を焼かれ魔力が霧散した……
「やったね!カルラ様!」
魔力が切れたアリッサは、ラーバルに支えられながら何とか立っている状態になってしまったがアウゲルを散らすことに成功した。
魔力を放ちきったカルラも天に登るようにふわっと姿を消した。
「こちら片付いたようですね」
「そうだね~向こうがどうなってるか見に行こうか……」
アリッサトラーバルが、ファーダ達の方を見に行こうとしたその瞬間……
辺りに、不快な笑い声が響いた。
「ハハハハハハハ!どうやら力を使い果たしたようだな!」
周囲に散ったアウゲルのマナが、うすぼんやり見える小さな青い光へと集まってゆく……
「まさか!」
「しまった!闇の原石がなければ!」
小さな青い光は再びアウゲルの姿へと戻った。退治されたかに見えたアウゲルは、マナの体を周囲に散らし、この世の者に干渉されない魂だけの姿になり迦楼羅炎をやり過ごしたのだった。
「フフフ!闇の原石か……はてそんな物が光属性の私に効くと思っているのか?」
アリッサは、容易に想像がついてしまった。光属性は、簡単に闇を払う事ができる。一度見た限りだが、闇の原石の黒い手は、それほど強力なものには見えなかった……
アウゲルは、強力な攻撃を魂だけになり受け流してしまう上に無防備な魂だけになっても、闇の原石は手出しができない……
つまりは、アウゲルは不滅……
「なかなか楽しかったぞ!」
そう言いながらアウゲルはアリッサを抱えて身動きが取れないラーバルに巨大な石の剣を振り下ろした!
「ラーバル!私を置いて逃げて!」
ラーバルは、振り下ろされる石の剣を見つめながら考える。アリッサを離せば自分は、助かる……だが残されたアリッサは死をま逃れないであろう……
「そんな事できません!」
ラーバルは無謀にも盾を構えてそれを受け止めようとする。
質量こそ強さ……巨大な石の剣を相手に、そんな無茶が通るはずもなく……
ついに二人の命は尽きた……
と思われたその時だった。
二人の影が大きくなり、その影がぐぐと持ち上がり人の形を作ってゆく……影から現れたその人物は、腕に影をまとわせると巨大な影の腕を作り出し石の剣を受け止めた!
「ふむ……ギリギリと言ったところか……」
影の中から現れたのは、腰ほどまである黒く長い髪、鋭い目つきは金色の瞳。日に当たってないように肌は白く華奢な体格は黒いローブに包まれている。
それはマルレの兄であるヴィクトル・ドレストレイルであった。
「ああ……ヴィクトル様……助かりました」
「うううう!マルレのお兄ちゃんありがとう、私死んだかと思ったよ~」
二人がヴィクトルにお礼を言っていると影から二人分の影が盛り上がる。盛り上がった影が降りるとそこには、二人の人物が現れていた。
一人は、白をベースとしたかなり、ぶ厚い金属製の全身鎧を身につけ、身長よりも大きな両手剣を持った人物だ。髪は緑色の短髪で、濃くはっきりとした眉に薄めのアゴひげそして力強い目、何よりその恵まれた体型には目を見張る物がある。
「ガハハハ!よくぞ俺の妹を救ってくれたヴィクトルよ!」
ラーバルを妹と呼んだこの人物は、ルーバード・バルトレイス元近衛兵のバルトレイス家の長男だ。
「なに、先に俺を出してくれれば俺が受け止めたさ」
次に現れたのは、革製のスタイリッシュな鎧に腰には長剣、背には赤いマントがひらめく人物だ。耳に掛かるほどの長さの青い髪に、筋の通った鼻、綺麗な顎のラインに細めの目、万人が美しいと思うような顔立ちをしていた。
後からきたこの人物は、カヴァナント・セイントレイトだった。アークの兄で元王太子であったが、今は棟梁と名乗っている。
「うはぅぅ……タイプ別イケメンの頂点が目の前に……」
アリッサは、魔力を使い切ったのと、助けが来て安心したこともあり、妙なことを口走り意識を失った。
「……アリッサ嬢……気絶したか」
「フッまた僕の美しさで女子を骨抜きにしてしまったようだね」
「あ?うるせーぞ、カヴァ!そんなことより、ラーバルはその子を連れて離れていてくれ」
兄3人組は、ラーバルにアリッサを任せると、巨大な石の剣を押し返し、アウゲルをにらみつける。
「ふん!誰が来ようが同じだ!私は不滅なのだからな!」
「その余裕……いつまで持つかな……」
余裕の表情のアウゲルに立ち向かう3人は、戦争には参加せず秘密裏にある物を探していたのだ、そして彼らは、それをついに見つけたのである。
ヴィクトルは、発見した物を影から取り出すとアウゲルに見せつけた。
「なんだと!キサマ!何故それを!」
不滅の身で余裕のはずのアウゲルの顔に初めて陰りが見えた。
アウゲルは大見得を切っている途中での攻撃にありえないと憤慨している。一方アリッサは、次の隙を虎視眈々と狙っている。
両者の間に緊張が走る。
先に動いたのはアウゲルだ、空へと飛び上がりアリッサを眼下に見おろす。亡霊は肉体がないため楽に空を飛行できる。高位の風魔法使いだけの世界に、身体的特徴のみで踏み込んでいるのである。
アウゲルは、高笑いと共にアリッサに向けて石の弾丸[ロックバレット]を無詠唱で連続して撃ち下ろしている。しかし鈍色空狐と化しているアリッサは、これを難なく回避している。
空からの攻撃は、非常に有効だ……しかし、今や空は、高位の風魔導師だけのものではなくなっていた。
「はあぁぁぁぁ!」
アリッサに気を取られていたアウゲルの背中をラーバルが切りつけた。アウゲルの背中は、大きく切り裂かれ魔力が漏れ出した。しかし光属性を持っているアウゲルの傷はすぐにふさがっていった。
「おのれ!」
アウゲルは、振り向きざまにラーバルに向けて、人の全身を楽々包み込むほどの極太の光線を放つ!
「きゃぁあ!」
放たれた光の中にラーバルが包み込まれる!火傷を負ったラーバルは煙を上げつつ地面へと墜落した。
詠唱のない魔法攻撃と、光ゆえの弾速の速さに対応しきれずにラーバルは、まともにこれを受けてしまった。
「ラーバル!」
アリッサは、すぐに回復に駆け寄りたいが、アウゲルの土魔法攻撃で思うように近寄れない。
「ほらほら!どうした!騎士の娘が死んでしまうぞ?」
アウゲルは尚も笑いながら石の弾丸を連射している。アリッサは、回避しながらも対処法を考える。 回復をしながらの障壁で耐えられるか?それとも攻撃で動きを止めるか?悩んだ末にアリッサは答えを出す。
「空狐解除!光よ障壁となれ!」
ラーバルに素早く駆け寄り鈍色空狐状態を解除しすぐに光の障壁を張った。
「白狐!黒狐!戻れ!そして、迦楼羅招来!」
アリッサは障壁を張りつつ白狐と黒狐を戻すとすぐにカルラを召喚した。状況を見たカルラは一瞬でアリッサがしてほしいことを理解した。
「法輪よ強固な盾となれ!」
カルラは背負っている法輪を大きくすると前面に構えた。すると法輪は炎をまとい激しく回転し始める。そしてその法輪をアウゲルとアリッサの間に滑り込ませた。
法輪はアウゲルの攻撃にびくともせず完全に防ぎ切っている。手が空いたアリッサは直ぐにラーバルを治療し始めた。
ラーバルの火傷は酷かったが、熱に強い邪竜の手先の革のおかげで深度は低く、すぐに治療を終えた。
「うぐぐ、すまない不覚を取った。」
「もう大丈夫ね!あんなやつ消し飛ばしてやるわ!」
アリッサは傷が癒えたのを確認するとすぐに、アウゲルに向かう。アリッサは、ありったけの魔力をカルラへと譲渡した。
「おおおおお!力がみなぎる!霊峰より離れた場所でこれほどの力を出せるとは!」
カルラは、霊峰タカオの力を借りなくても、全力が出せることに驚きを隠せないでいる。そして彼は、アリッサの心意気を受け取り新の姿をあらわにする。
「思いは受け取ったぞ!オン・ガルダヤ・ソワカ!」
カルラは、光の塊へと変化しそれは大きくなり炎の鳥ガルーダへと姿を変えた。金色の炎に包まれた巨大な鳥は空いっぱいに翼を広げる。
「邪なる者よ消え去るが良い!迦楼羅炎!」
ガルーダの口から放たれた、まぶしいほどの金色の業火はアウゲルを焼き尽くす。
「グルウォアアアアア!」
アウゲルは身を焼かれ魔力が霧散した……
「やったね!カルラ様!」
魔力が切れたアリッサは、ラーバルに支えられながら何とか立っている状態になってしまったがアウゲルを散らすことに成功した。
魔力を放ちきったカルラも天に登るようにふわっと姿を消した。
「こちら片付いたようですね」
「そうだね~向こうがどうなってるか見に行こうか……」
アリッサトラーバルが、ファーダ達の方を見に行こうとしたその瞬間……
辺りに、不快な笑い声が響いた。
「ハハハハハハハ!どうやら力を使い果たしたようだな!」
周囲に散ったアウゲルのマナが、うすぼんやり見える小さな青い光へと集まってゆく……
「まさか!」
「しまった!闇の原石がなければ!」
小さな青い光は再びアウゲルの姿へと戻った。退治されたかに見えたアウゲルは、マナの体を周囲に散らし、この世の者に干渉されない魂だけの姿になり迦楼羅炎をやり過ごしたのだった。
「フフフ!闇の原石か……はてそんな物が光属性の私に効くと思っているのか?」
アリッサは、容易に想像がついてしまった。光属性は、簡単に闇を払う事ができる。一度見た限りだが、闇の原石の黒い手は、それほど強力なものには見えなかった……
アウゲルは、強力な攻撃を魂だけになり受け流してしまう上に無防備な魂だけになっても、闇の原石は手出しができない……
つまりは、アウゲルは不滅……
「なかなか楽しかったぞ!」
そう言いながらアウゲルはアリッサを抱えて身動きが取れないラーバルに巨大な石の剣を振り下ろした!
「ラーバル!私を置いて逃げて!」
ラーバルは、振り下ろされる石の剣を見つめながら考える。アリッサを離せば自分は、助かる……だが残されたアリッサは死をま逃れないであろう……
「そんな事できません!」
ラーバルは無謀にも盾を構えてそれを受け止めようとする。
質量こそ強さ……巨大な石の剣を相手に、そんな無茶が通るはずもなく……
ついに二人の命は尽きた……
と思われたその時だった。
二人の影が大きくなり、その影がぐぐと持ち上がり人の形を作ってゆく……影から現れたその人物は、腕に影をまとわせると巨大な影の腕を作り出し石の剣を受け止めた!
「ふむ……ギリギリと言ったところか……」
影の中から現れたのは、腰ほどまである黒く長い髪、鋭い目つきは金色の瞳。日に当たってないように肌は白く華奢な体格は黒いローブに包まれている。
それはマルレの兄であるヴィクトル・ドレストレイルであった。
「ああ……ヴィクトル様……助かりました」
「うううう!マルレのお兄ちゃんありがとう、私死んだかと思ったよ~」
二人がヴィクトルにお礼を言っていると影から二人分の影が盛り上がる。盛り上がった影が降りるとそこには、二人の人物が現れていた。
一人は、白をベースとしたかなり、ぶ厚い金属製の全身鎧を身につけ、身長よりも大きな両手剣を持った人物だ。髪は緑色の短髪で、濃くはっきりとした眉に薄めのアゴひげそして力強い目、何よりその恵まれた体型には目を見張る物がある。
「ガハハハ!よくぞ俺の妹を救ってくれたヴィクトルよ!」
ラーバルを妹と呼んだこの人物は、ルーバード・バルトレイス元近衛兵のバルトレイス家の長男だ。
「なに、先に俺を出してくれれば俺が受け止めたさ」
次に現れたのは、革製のスタイリッシュな鎧に腰には長剣、背には赤いマントがひらめく人物だ。耳に掛かるほどの長さの青い髪に、筋の通った鼻、綺麗な顎のラインに細めの目、万人が美しいと思うような顔立ちをしていた。
後からきたこの人物は、カヴァナント・セイントレイトだった。アークの兄で元王太子であったが、今は棟梁と名乗っている。
「うはぅぅ……タイプ別イケメンの頂点が目の前に……」
アリッサは、魔力を使い切ったのと、助けが来て安心したこともあり、妙なことを口走り意識を失った。
「……アリッサ嬢……気絶したか」
「フッまた僕の美しさで女子を骨抜きにしてしまったようだね」
「あ?うるせーぞ、カヴァ!そんなことより、ラーバルはその子を連れて離れていてくれ」
兄3人組は、ラーバルにアリッサを任せると、巨大な石の剣を押し返し、アウゲルをにらみつける。
「ふん!誰が来ようが同じだ!私は不滅なのだからな!」
「その余裕……いつまで持つかな……」
余裕の表情のアウゲルに立ち向かう3人は、戦争には参加せず秘密裏にある物を探していたのだ、そして彼らは、それをついに見つけたのである。
ヴィクトルは、発見した物を影から取り出すとアウゲルに見せつけた。
「なんだと!キサマ!何故それを!」
不滅の身で余裕のはずのアウゲルの顔に初めて陰りが見えた。
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