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嵐
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今日も同じ一日のはずだった。起きて、朝ご飯を食べて、任された仕事をこなして、昼ごはんを食べて、色んな人と喋って、働いて。
だが嵐はいつも突然にやってくるものだ。
「今日からここに客人としてやってきたユートという者だ。ユートは異世界人で、突然この世界に迷い込んでしまったらしい。私が預かることとなった」
王命を受けて登城していたオルガートは後ろにいた小柄な少年の背中を優しく押し、前に出した。初めて見るような顔立ちをしている少年に内心怪訝そうにする使用人たちだがプロと言うに相応しい、表面はピクリとも動かなかった。
「す、すみません、いきなり……!今日から、よろしくお願いします……っ!」
艶やかな黒髪と黒目を潤ませたユートと呼ばれる少年は不安そうに肩身を狭くしてきゅっと小さくオルガートの袖を掴んだ。
そんなユートにノルドはどこか胸がちくりと痛んだ。謎の痛みに胸に手を当てる。だがやはりなんともない。気の所為だろうと前を向き直した。
「いらっしゃいませ、ホーノルド邸へ。ユート様のお部屋へ案内させて頂くフレンと申します。今日からユート様付きの侍女となりますゆえ、なにか申し付けたいことがありましたらわたくしめに言いつけてください」
金髪と豊満な胸が特徴的なおっとり美人、フレンがふわりと微笑みながらユートの前に立った。頭を下げ、カーテシーをすると困ったようにぶんぶんと頭を振るユート。
「ふぇっ、ぼ、僕にこんな美人さんが……っ!?そ、そんな、手を煩わせてもいけないので、僕一人でも……!」
「この世界ではあなたは守られるべき存在だ。侍女がつくのも普通のことだから、そんなに遠慮することではない」
「す、すみません、僕なにも知らなくて……」
「いや、そうだな、まだ何も知らない。講師を呼ぶか、この世界について学ぶ意思があるのなら」
「いえっ、そんな……僕は一人で学べます、……本さえあれば!」
慌てて講師を拒否するユートに訝しげに相槌を打つオルガート。講師を呼んだ方がより早く学べるのではという言葉を飲み込んで、フレンへ指示を出す。
「そうか……?フレン、書物庫への案内も含めておけ」
「かしこまりました。それではユート様、こちらへ。いきなりこの世界に来て疲れているでしょう、まずはお休みください」
「あっありがとうございます!」
ようやくオルガートの袖から手を離したユートを見て、無意識にほっと息をつくノルド。
「……えっ?」
やはりどこかおかしい自身の身体に疑問が湧いた。だがその疑問は、オルガートに声をかけられたことで頭を切り替えたノルドに頭の隅に追いやられた。
「ノルド?……大丈夫か?顔色が悪い」
「ええっ?そんなことないですだ、オラさこんなに元気なんだ!」
「いえ、顔色は悪いですよ。お休みになられては……?」
サラにまでそう言われたノルドは、そんなにか……?と疑問を持ちつつ自分で気が付かないうちに疲れているのかもしれないと頷いた。
「……わかっただ。変に疲れて心配かけるのも嫌だだな。じゃあお言葉に甘えて休んできますだ!」
「待て」
「旦那様?なんですだ?」
「僕も行こう」
一瞬、その場に沈黙が落ちた。ノルドはオルガートの言っていることを理解できなかったのだ。だが周りの人はそれがいいと目で頷いている。
「旦那様が?オラと?どうしたんですだ、急に。一介の使用人に旦那様が付き添うことはないですだよ!」
「ノルドが心配だ。僕は医師でもある、使用人の体調管理は主の仕事に含まれている」
いち早く沈黙を破ったノルドは笑って様子のおかしいオルガートを笑って流そうとする。だがここで無駄にハイスペックなオルガートの様々な称号を掲げられて思わず黙り込む。
「ノルド、それがいいです。あなたが心配なんですよ、みんな。オルガート公爵はおかしなことは言ってないですし、大人しく診断されては?」
なんとも言えずに困惑するノルドに助け舟を出すフェルノはオルガートの意思を汲み取って微笑んだ。確かに周囲の人達はノルドを心配そうに見ている。
だが、たかだか一人の使用人の顔色が悪いだけでこうまでも過保護になることがあるだろうか?不思議に思いながらも頷いた。
「え……わ、わかっただ。じゃあ……行くだか?」
「ああ」
◇◆◇
「……心配ですね。また知らず知らずのうちに無理をして以前のことのようにはならないといいのですが」
主人と主人が大事そうに見ていた一人の人がいなくなった途端ぽつりと落とされるフェルノの独り言。
「今はあの方々もいらっしゃらないのでノルドに被害が及ぶなんてことはないと思いますが……」
サラがフェルノの独り言を拾って悩ましげに眉を顰める。
「……今は、今の私たちがいます。あの時のようにはならないでしょう。なにより旦那様が過保護すぎます」
ふふ、と去り際にそれとなくノルドの腰に手を回したオルガートを思い出して顔がほころんだ。相変わらずノルドは田舎者で、過度でないスキンシップ以外普通だと感じているのか狼狽えもしなかったが。
「そうですね。……さ、私たちも仕事に戻りましょう。トクシミアンは?……ああ、しっかりついていってますね」
オルガートの護衛の責務をしっかり果たしているトクシミアン。本当に頼りになりますと笑みを零した。俺がオルガート様の護衛を怠るだなんてするわけないでしょ!というトクシミアンのドヤ顔さえ頭に浮かぶ。
いつのまにか日の入る時間になった頃、ようやくいつもの業務に皆が戻って行った。
◇◆◇
「……なにを躊躇っている?」
ノルドは自室の前でうろうろと視線を宙に彷徨わせる。
ノルドは思案していた。このまま旦那様を自室に入れてもいいのか。……片付けを怠っていて部屋が汚かった気がする。そんなズボラな場面を見せて幻滅されたくないな……。
なにより、このまま入られるとオラの心臓が持たない気がする。憧れの公爵様、そんな人がオラの部屋に!ダメだ!旦那様の吐いた空気が充満した部屋になんの煩悩もなくいつも通り過ごせるか!?否!過ごせるわけが無い!!!
よし、と意気込んでノルドを待ってくれていたオルガートに振り返って向き合う。
だが口から出たのは想像よりだいぶ弱っちいひょろひょろな声色だった。
「いやぁ……躊躇って……ないだ。んだが……今は、そのぉ、部屋を片付けてなくてだなぁ……」
「そんなものどうでもいい」
「旦那様ァー!!」
オラの意見は!?そう言う暇もなく遠慮なしに扉を開けられズンズン部屋へ進んでいくオルガートに、強引な旦那様もカッコイイ……と心の涙を流すノルド。
「座れ」
「んだぁ……」
促されるままにベットに腰を下ろす。
「なにをするんですだ?」
「フェルノが言わなかったか?診断だ」
「診断……」
体調も悪くないのに、そんな大袈裟に……。
オルガートは徐にノルドの額に手を当てる。熱がないことを確認すると、次は腕をとって脈を測った。その後も様々な診断とやらを受けている最中、ノルドはエイのようななんとも言えない顔をしてされるがままになっていた。
「……なんだその顔は」
「いやぁ……旦那様ぁそんなシンパイショウだったんだべなぁと……」
ようやく終わった診断にんわぁーっと伸びをして肩をクルクル回す。
「心配性……そうだな、お前に関してはそうなんだろう」
「オラさ関しては?んだ……?」
それだとオラにだけ、心配性になってしまうというふうに聞こえるだ……。
謎の言い回しに首を傾げて、それはどういう意味で……と問おうとするが、存外、そのままの意味なのかもしれなかった。
オルガートの、その表情を見てぐっと息を詰まらす。
「ん、だ……っ、……そんな他の人が見たら誤解されるような目で見ねェでくださいだべ……」
「ん?それはどういう目だ?」
「……」
思わず赤くなってしまった顔をふんと横に向け、見られないようにしてオルガートの表情を咎めたが、当の本人は無意識だったようで、きょとんとした顔で覗き込もうとしてくる。
不敬を恐れない流石の精神で有無を言わさず押し退けたノルドは、はいはい!といきなり大きな声を出す。
「診断は終わったべ!んだ、顔色悪そうに見えるさ早く一人にして寝かせるのが普通だべ!」
「……ふ、今はそう悪くなさそうだな」
「……だっ、誰のおか、所為だと……」
安心したように微笑を浮かべるオルガートにまたも赤くなった顔を背け、もごもごと口の中で呟く。
これ以上ここにいさせたら自分がなんの失態をするかわかったもんじゃない!
「ん、だ!早く出ていってくださいだ!」
「そう押すな、なんだ急に」
「寝ますだ!おやすみなさいだ!」
早く早くとオルガートの背中を押してむりやり部屋から出ていかせようとする。廊下に押し出せ、扉を閉めようとしたところである事を思い出した。
「……んだ、診断、ありがとうございましただ」
「ああ」
ノルドの礼に満足したように小さく口角を釣り上げるオルガートの表情は、なんだかとても、蠱惑的で……。
「それじゃっ!」
変な気を起こそうとはしてない!決して!!
慌てて扉を閉め、光速でベットにダイブする。診断、そして、診断の最中に胸にストンと落ちてきて、妙に納得してしまったこの感情。
自覚を、してしまった。
「オラぁ……旦那様のこと好きなんだぁ……」
好きという感情の自覚がこんなにも大変な事だとは思わなかった……。診断の終わり頃、最後に見せられた安堵したような小さな笑顔が、とても綺麗だったから、だなんて……!どこの恋愛小説だ!!下町で流行ってるまんま、少女の心情と一緒じゃないか!?
「ぁあ~……っ!くそっ……猿でねぇんだから……」
つい自覚したばかりなのに、診断と言う名のふ、触れ合いを思い出してしまいいつの間にか小さく頭をもたげていた自身の陰茎に悪態をついた。しばらく待ってみたが中々収まらず、逆に先程の事を思い出してしまって更に……。
恐る恐る手を伸ばし、オカズにしてしまってごめんなさい!!と心の中で猛謝罪をした後、そっと触れた。
触れてしまうと、もう止まらなかった。
「……ん、……ぅっ、は……!」
人生で一番、気持ちよかったかもしれない。
その証拠に達するのが異常に早かった。一分もかからなかった。別に禁欲なんてしてなかったはずだが、これが恋の力……恐ろしや。
だが嵐はいつも突然にやってくるものだ。
「今日からここに客人としてやってきたユートという者だ。ユートは異世界人で、突然この世界に迷い込んでしまったらしい。私が預かることとなった」
王命を受けて登城していたオルガートは後ろにいた小柄な少年の背中を優しく押し、前に出した。初めて見るような顔立ちをしている少年に内心怪訝そうにする使用人たちだがプロと言うに相応しい、表面はピクリとも動かなかった。
「す、すみません、いきなり……!今日から、よろしくお願いします……っ!」
艶やかな黒髪と黒目を潤ませたユートと呼ばれる少年は不安そうに肩身を狭くしてきゅっと小さくオルガートの袖を掴んだ。
そんなユートにノルドはどこか胸がちくりと痛んだ。謎の痛みに胸に手を当てる。だがやはりなんともない。気の所為だろうと前を向き直した。
「いらっしゃいませ、ホーノルド邸へ。ユート様のお部屋へ案内させて頂くフレンと申します。今日からユート様付きの侍女となりますゆえ、なにか申し付けたいことがありましたらわたくしめに言いつけてください」
金髪と豊満な胸が特徴的なおっとり美人、フレンがふわりと微笑みながらユートの前に立った。頭を下げ、カーテシーをすると困ったようにぶんぶんと頭を振るユート。
「ふぇっ、ぼ、僕にこんな美人さんが……っ!?そ、そんな、手を煩わせてもいけないので、僕一人でも……!」
「この世界ではあなたは守られるべき存在だ。侍女がつくのも普通のことだから、そんなに遠慮することではない」
「す、すみません、僕なにも知らなくて……」
「いや、そうだな、まだ何も知らない。講師を呼ぶか、この世界について学ぶ意思があるのなら」
「いえっ、そんな……僕は一人で学べます、……本さえあれば!」
慌てて講師を拒否するユートに訝しげに相槌を打つオルガート。講師を呼んだ方がより早く学べるのではという言葉を飲み込んで、フレンへ指示を出す。
「そうか……?フレン、書物庫への案内も含めておけ」
「かしこまりました。それではユート様、こちらへ。いきなりこの世界に来て疲れているでしょう、まずはお休みください」
「あっありがとうございます!」
ようやくオルガートの袖から手を離したユートを見て、無意識にほっと息をつくノルド。
「……えっ?」
やはりどこかおかしい自身の身体に疑問が湧いた。だがその疑問は、オルガートに声をかけられたことで頭を切り替えたノルドに頭の隅に追いやられた。
「ノルド?……大丈夫か?顔色が悪い」
「ええっ?そんなことないですだ、オラさこんなに元気なんだ!」
「いえ、顔色は悪いですよ。お休みになられては……?」
サラにまでそう言われたノルドは、そんなにか……?と疑問を持ちつつ自分で気が付かないうちに疲れているのかもしれないと頷いた。
「……わかっただ。変に疲れて心配かけるのも嫌だだな。じゃあお言葉に甘えて休んできますだ!」
「待て」
「旦那様?なんですだ?」
「僕も行こう」
一瞬、その場に沈黙が落ちた。ノルドはオルガートの言っていることを理解できなかったのだ。だが周りの人はそれがいいと目で頷いている。
「旦那様が?オラと?どうしたんですだ、急に。一介の使用人に旦那様が付き添うことはないですだよ!」
「ノルドが心配だ。僕は医師でもある、使用人の体調管理は主の仕事に含まれている」
いち早く沈黙を破ったノルドは笑って様子のおかしいオルガートを笑って流そうとする。だがここで無駄にハイスペックなオルガートの様々な称号を掲げられて思わず黙り込む。
「ノルド、それがいいです。あなたが心配なんですよ、みんな。オルガート公爵はおかしなことは言ってないですし、大人しく診断されては?」
なんとも言えずに困惑するノルドに助け舟を出すフェルノはオルガートの意思を汲み取って微笑んだ。確かに周囲の人達はノルドを心配そうに見ている。
だが、たかだか一人の使用人の顔色が悪いだけでこうまでも過保護になることがあるだろうか?不思議に思いながらも頷いた。
「え……わ、わかっただ。じゃあ……行くだか?」
「ああ」
◇◆◇
「……心配ですね。また知らず知らずのうちに無理をして以前のことのようにはならないといいのですが」
主人と主人が大事そうに見ていた一人の人がいなくなった途端ぽつりと落とされるフェルノの独り言。
「今はあの方々もいらっしゃらないのでノルドに被害が及ぶなんてことはないと思いますが……」
サラがフェルノの独り言を拾って悩ましげに眉を顰める。
「……今は、今の私たちがいます。あの時のようにはならないでしょう。なにより旦那様が過保護すぎます」
ふふ、と去り際にそれとなくノルドの腰に手を回したオルガートを思い出して顔がほころんだ。相変わらずノルドは田舎者で、過度でないスキンシップ以外普通だと感じているのか狼狽えもしなかったが。
「そうですね。……さ、私たちも仕事に戻りましょう。トクシミアンは?……ああ、しっかりついていってますね」
オルガートの護衛の責務をしっかり果たしているトクシミアン。本当に頼りになりますと笑みを零した。俺がオルガート様の護衛を怠るだなんてするわけないでしょ!というトクシミアンのドヤ顔さえ頭に浮かぶ。
いつのまにか日の入る時間になった頃、ようやくいつもの業務に皆が戻って行った。
◇◆◇
「……なにを躊躇っている?」
ノルドは自室の前でうろうろと視線を宙に彷徨わせる。
ノルドは思案していた。このまま旦那様を自室に入れてもいいのか。……片付けを怠っていて部屋が汚かった気がする。そんなズボラな場面を見せて幻滅されたくないな……。
なにより、このまま入られるとオラの心臓が持たない気がする。憧れの公爵様、そんな人がオラの部屋に!ダメだ!旦那様の吐いた空気が充満した部屋になんの煩悩もなくいつも通り過ごせるか!?否!過ごせるわけが無い!!!
よし、と意気込んでノルドを待ってくれていたオルガートに振り返って向き合う。
だが口から出たのは想像よりだいぶ弱っちいひょろひょろな声色だった。
「いやぁ……躊躇って……ないだ。んだが……今は、そのぉ、部屋を片付けてなくてだなぁ……」
「そんなものどうでもいい」
「旦那様ァー!!」
オラの意見は!?そう言う暇もなく遠慮なしに扉を開けられズンズン部屋へ進んでいくオルガートに、強引な旦那様もカッコイイ……と心の涙を流すノルド。
「座れ」
「んだぁ……」
促されるままにベットに腰を下ろす。
「なにをするんですだ?」
「フェルノが言わなかったか?診断だ」
「診断……」
体調も悪くないのに、そんな大袈裟に……。
オルガートは徐にノルドの額に手を当てる。熱がないことを確認すると、次は腕をとって脈を測った。その後も様々な診断とやらを受けている最中、ノルドはエイのようななんとも言えない顔をしてされるがままになっていた。
「……なんだその顔は」
「いやぁ……旦那様ぁそんなシンパイショウだったんだべなぁと……」
ようやく終わった診断にんわぁーっと伸びをして肩をクルクル回す。
「心配性……そうだな、お前に関してはそうなんだろう」
「オラさ関しては?んだ……?」
それだとオラにだけ、心配性になってしまうというふうに聞こえるだ……。
謎の言い回しに首を傾げて、それはどういう意味で……と問おうとするが、存外、そのままの意味なのかもしれなかった。
オルガートの、その表情を見てぐっと息を詰まらす。
「ん、だ……っ、……そんな他の人が見たら誤解されるような目で見ねェでくださいだべ……」
「ん?それはどういう目だ?」
「……」
思わず赤くなってしまった顔をふんと横に向け、見られないようにしてオルガートの表情を咎めたが、当の本人は無意識だったようで、きょとんとした顔で覗き込もうとしてくる。
不敬を恐れない流石の精神で有無を言わさず押し退けたノルドは、はいはい!といきなり大きな声を出す。
「診断は終わったべ!んだ、顔色悪そうに見えるさ早く一人にして寝かせるのが普通だべ!」
「……ふ、今はそう悪くなさそうだな」
「……だっ、誰のおか、所為だと……」
安心したように微笑を浮かべるオルガートにまたも赤くなった顔を背け、もごもごと口の中で呟く。
これ以上ここにいさせたら自分がなんの失態をするかわかったもんじゃない!
「ん、だ!早く出ていってくださいだ!」
「そう押すな、なんだ急に」
「寝ますだ!おやすみなさいだ!」
早く早くとオルガートの背中を押してむりやり部屋から出ていかせようとする。廊下に押し出せ、扉を閉めようとしたところである事を思い出した。
「……んだ、診断、ありがとうございましただ」
「ああ」
ノルドの礼に満足したように小さく口角を釣り上げるオルガートの表情は、なんだかとても、蠱惑的で……。
「それじゃっ!」
変な気を起こそうとはしてない!決して!!
慌てて扉を閉め、光速でベットにダイブする。診断、そして、診断の最中に胸にストンと落ちてきて、妙に納得してしまったこの感情。
自覚を、してしまった。
「オラぁ……旦那様のこと好きなんだぁ……」
好きという感情の自覚がこんなにも大変な事だとは思わなかった……。診断の終わり頃、最後に見せられた安堵したような小さな笑顔が、とても綺麗だったから、だなんて……!どこの恋愛小説だ!!下町で流行ってるまんま、少女の心情と一緒じゃないか!?
「ぁあ~……っ!くそっ……猿でねぇんだから……」
つい自覚したばかりなのに、診断と言う名のふ、触れ合いを思い出してしまいいつの間にか小さく頭をもたげていた自身の陰茎に悪態をついた。しばらく待ってみたが中々収まらず、逆に先程の事を思い出してしまって更に……。
恐る恐る手を伸ばし、オカズにしてしまってごめんなさい!!と心の中で猛謝罪をした後、そっと触れた。
触れてしまうと、もう止まらなかった。
「……ん、……ぅっ、は……!」
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