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第四話 アンバーは好きになれない
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ルシアスパパとのブランチを終えると、王家・公爵家御用達の外商がやって来て、様々な品を披露した。ジュエリーやドレス、コスメ、部屋の装飾品など、リアン様の喜びそうな品々が次から次へと目の前に運ばれる。生憎私の趣味はリアン様とかけ離れているし、そもそも物欲がそこまでない。首を横に振り続けていると商人の顔がどんどん青ざめてきた。
(リアン様だったらぽんぽん買っていくはずなのに、調子狂うよね……。でもごめん、こっちに来たばっかでまだ混乱してるのに、いきなり何か買えって言われても欲しい物も思いつかないんだよね……)
残りの品物が少なくなる中、商人はかわいらしいウサギのブローチを運んできた。ブローチ本体はシルバーでできており、ウサギの瞳には瑠璃色に輝くラピスラズリがあしらわれている。私は思わず指をさし商人に告げる。
「とってもかわいい! こちらいただけますか?」
ようやく注文が入り、商人は、こちらが見ても分かるほど安堵の表情を浮かべている。
「エマ、これパパにプレゼントしたいと思うのだけれど……パパにこのデザインはかわいすぎかしら? ウサギの目の色がパパの瞳と同じだから、是非プレゼントしたいなと思ったのだけれど」
エマはリアン様の侍女。ロマプリではリアン様の隣にいるモブキャラだ。作中セリフも多少はあったような気がするが、キャラデザも用意していなかったため、先ほど起こしてもらったときは、どのキャラなのか全然分からなかった。性格についてもそこまで細かく設定しておらず、この世界でどれくらい私と気が合うかは未知数だ。
「まさかお嬢様が私めに意見を聞いてくださるとは……。あ、いえ! 失礼いたしました! 旦那様はリアンお嬢様の選ばれたプレゼントであれば喜びむせび泣き、家宝にする勢いで大切になさると思いますが……」
ちらりと横の品に目をやり、おずおずと続ける。
「同じ作家のデザインした、こちらのトラのブローチを旦那様にお送りし、お嬢様がウサギのブローチをおつけになるというのはいかがでしょうか? 虎の瞳に用いられているアンバーはお嬢様の瞳の色と同じ琥珀色。きっと旦那様も喜ばれるかと思います」
琥珀か……私の元の名前がこはくということもあり、アンバー=琥珀は親近感のある宝石だ。でもなぁ……琥珀って樹液が固まって化石化したものだよ? それにアンバーっていうとかっこいいけど、琥珀って茶色だよ? 瑠璃色の方が綺麗じゃないかな……。でも、そうかリアン様の瞳の色って思えば美しい気もしてくるし、ルシアスパパも喜んでくれるかも。それにウサギのブローチを私がつけるっていうのはナイスアイデアだ。寮生活で訪れるであろう様々な試練を思うと憂鬱だけど、このウサギのブローチをルシアスパパだと思えば心強い。
長考しているとエマは青ざめた顔で
「お嬢様にご意見するなど出過ぎた真似を……! 大変申し訳ございません……!」
と勢いよく床に膝をつけ、土下座を始めた。
「エマ! ああ、顔を上げて? 違うのよ、琥珀より瑠璃色の方が美しいように思って少し悩んでいたの。でもお互いの瞳の色をイメージしたアクセサリーをパパとつけあいっこするのは素敵だわ!」
続けて商人に向かい
「二つともいただきましょう。トラのブローチの方は何か包みに入れてくださる? うさぎのブローチは早速つけるわ!」
と伝えた。
エマは目を見開き私を見つめる。
「お嬢様……」
さらに私は続ける。
「エマ、これまできつく当たってしまってごめんね、私どうかしていたわ。パパが何でも許してくれるからって調子に乗りすぎていたと思う。これからはなるべくワガママは言わないって約束するわ。だからね、できればエマには友だちみたいに接してほしいの。お願いできるかしら……?」
エマがどんな子かはまだはっきりとは分からないけれど、きっとエマとは仲良くなれる気がする。だって、わがまま放題でどんな仕打ちをするかも分からないリアン様こと私に、自分がいいと思ったものをまっすぐ伝えてくれたもの。
「リアンお嬢様……。もったいなきお言葉をありがとうございます……! 友だち……というのはなかなか難しくはございますが、誠心誠意リアンお嬢様のために尽くしてまいりたいと存じます……!」
言葉遣いこそは変わらないが、先ほどまでの怯えた表情からは一変し、頬には紅が差し、目をキラキラさせていた。
「あと……」
エマは伏し目になったのち私を見つめ
「リアンお嬢様の瞳の色はとっても綺麗です! それは譲れません」
と小さく、けれどはっきりと言い切った。
買ったトラのブローチをルシアスパパに渡すと、目に涙をためて喜んでくれた。案の定家宝にしようとし、他の貴金属を保管している金庫よりはるかに厳重なものを用意させようとしたので、慌てて私の胸元を指さし、ルシアスパパの瞳に似た宝石をあしらったブローチはリアンがつけており、ルシアスパパにあげたこのプレゼントはお揃いみたいなものなのだと告げると、ルシアスパパはトラのブローチをすぐに胸につけ、上機嫌で公務に戻った。
何でもその後どこへ行くにもそのブローチは欠かさず身につけ、眠るときまで胸につけようとしたらしい。ただ、寝返りを打って壊したらとんでもない! ということで、寝ている間は透明な箱に入れて枕元に飾っているそうだ。
(リアン様だったらぽんぽん買っていくはずなのに、調子狂うよね……。でもごめん、こっちに来たばっかでまだ混乱してるのに、いきなり何か買えって言われても欲しい物も思いつかないんだよね……)
残りの品物が少なくなる中、商人はかわいらしいウサギのブローチを運んできた。ブローチ本体はシルバーでできており、ウサギの瞳には瑠璃色に輝くラピスラズリがあしらわれている。私は思わず指をさし商人に告げる。
「とってもかわいい! こちらいただけますか?」
ようやく注文が入り、商人は、こちらが見ても分かるほど安堵の表情を浮かべている。
「エマ、これパパにプレゼントしたいと思うのだけれど……パパにこのデザインはかわいすぎかしら? ウサギの目の色がパパの瞳と同じだから、是非プレゼントしたいなと思ったのだけれど」
エマはリアン様の侍女。ロマプリではリアン様の隣にいるモブキャラだ。作中セリフも多少はあったような気がするが、キャラデザも用意していなかったため、先ほど起こしてもらったときは、どのキャラなのか全然分からなかった。性格についてもそこまで細かく設定しておらず、この世界でどれくらい私と気が合うかは未知数だ。
「まさかお嬢様が私めに意見を聞いてくださるとは……。あ、いえ! 失礼いたしました! 旦那様はリアンお嬢様の選ばれたプレゼントであれば喜びむせび泣き、家宝にする勢いで大切になさると思いますが……」
ちらりと横の品に目をやり、おずおずと続ける。
「同じ作家のデザインした、こちらのトラのブローチを旦那様にお送りし、お嬢様がウサギのブローチをおつけになるというのはいかがでしょうか? 虎の瞳に用いられているアンバーはお嬢様の瞳の色と同じ琥珀色。きっと旦那様も喜ばれるかと思います」
琥珀か……私の元の名前がこはくということもあり、アンバー=琥珀は親近感のある宝石だ。でもなぁ……琥珀って樹液が固まって化石化したものだよ? それにアンバーっていうとかっこいいけど、琥珀って茶色だよ? 瑠璃色の方が綺麗じゃないかな……。でも、そうかリアン様の瞳の色って思えば美しい気もしてくるし、ルシアスパパも喜んでくれるかも。それにウサギのブローチを私がつけるっていうのはナイスアイデアだ。寮生活で訪れるであろう様々な試練を思うと憂鬱だけど、このウサギのブローチをルシアスパパだと思えば心強い。
長考しているとエマは青ざめた顔で
「お嬢様にご意見するなど出過ぎた真似を……! 大変申し訳ございません……!」
と勢いよく床に膝をつけ、土下座を始めた。
「エマ! ああ、顔を上げて? 違うのよ、琥珀より瑠璃色の方が美しいように思って少し悩んでいたの。でもお互いの瞳の色をイメージしたアクセサリーをパパとつけあいっこするのは素敵だわ!」
続けて商人に向かい
「二つともいただきましょう。トラのブローチの方は何か包みに入れてくださる? うさぎのブローチは早速つけるわ!」
と伝えた。
エマは目を見開き私を見つめる。
「お嬢様……」
さらに私は続ける。
「エマ、これまできつく当たってしまってごめんね、私どうかしていたわ。パパが何でも許してくれるからって調子に乗りすぎていたと思う。これからはなるべくワガママは言わないって約束するわ。だからね、できればエマには友だちみたいに接してほしいの。お願いできるかしら……?」
エマがどんな子かはまだはっきりとは分からないけれど、きっとエマとは仲良くなれる気がする。だって、わがまま放題でどんな仕打ちをするかも分からないリアン様こと私に、自分がいいと思ったものをまっすぐ伝えてくれたもの。
「リアンお嬢様……。もったいなきお言葉をありがとうございます……! 友だち……というのはなかなか難しくはございますが、誠心誠意リアンお嬢様のために尽くしてまいりたいと存じます……!」
言葉遣いこそは変わらないが、先ほどまでの怯えた表情からは一変し、頬には紅が差し、目をキラキラさせていた。
「あと……」
エマは伏し目になったのち私を見つめ
「リアンお嬢様の瞳の色はとっても綺麗です! それは譲れません」
と小さく、けれどはっきりと言い切った。
買ったトラのブローチをルシアスパパに渡すと、目に涙をためて喜んでくれた。案の定家宝にしようとし、他の貴金属を保管している金庫よりはるかに厳重なものを用意させようとしたので、慌てて私の胸元を指さし、ルシアスパパの瞳に似た宝石をあしらったブローチはリアンがつけており、ルシアスパパにあげたこのプレゼントはお揃いみたいなものなのだと告げると、ルシアスパパはトラのブローチをすぐに胸につけ、上機嫌で公務に戻った。
何でもその後どこへ行くにもそのブローチは欠かさず身につけ、眠るときまで胸につけようとしたらしい。ただ、寝返りを打って壊したらとんでもない! ということで、寝ている間は透明な箱に入れて枕元に飾っているそうだ。
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