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第十九話 にどめましてのアン・ドゥ・トロワ
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夏休み最終週。他の学生たちより早く寮に戻った私たちは、食堂で分けてもらった氷でかき氷をつくったり、カイトが持ってきてくれた手持ち花火で遊んだり、夏休みの締めくくりに思いっきり夏を楽しんだ。
遊ぶだけではなく、「白い光」についての調査結果も発表し合った。ただ、残念ながら手がかりを掴んだ者は誰もいなかった。
「白い光を見たのって、ミカ王子だけなのかもしれないわ~」
「だからこそ、ミカ先輩の願いが天に届いたのかもしんないっすね……」
「それか、見たことを忘れてるのかもしんないな。アタシたちも含めてさ」
「そうだね……。白い光についての調査は続けていくとして……今日は何をしようか」
「あのー、オレの剣術見てもらえませんか? ひとりで稽古しても、どこを直せばいいのかイマイチ分かんなくって……」
「うん、いいよ! 行こうか、ハリー」
「やはり俺もか……」
「ありがとうございます! オレ、去年の大決闘会でハリー先輩の剣さばきを見て……! それで聖ロマネス学園に入りたいって思ったんですよ! ふたりに指導してもらえたら、もう怖いモンなしです!」
「……行くぞ」
「え! もう行くんですか⁈」
「ふふ、さぁハリーの気が変わらないうちに僕らも行こうか」
颯爽と出ていったハリーを追って、ミカとカイトも決闘場へと急ぐ。
「嵐のように去っていったな……」
「うふふ、3人ともすっかり仲良くなったわね~」
「アタシたちも決闘場に行くか?」
「そうね~、今日はちょっと暑いから、冷たいものでも食べにいきたい気分だわ~」
「いいな! この前メニューに入ったタピオカミルクティーってやつ、飲んでみたいと思ってたんだ」
「あー、ごめん! 今日は別行動でもいい? 舞踏の練習をしておきたくて」
「あら、そうなの? それならナディアも付き合うわよ~?」
「いいの、いいの! ちょっと一人で復習しておきたくて」
「そうか? そんなに根詰めなくてもいい気もするけどなぁ……。まぁでも、お茶はいつでも行けるしな! 夕飯時に食堂集合な」
「うん、ありがとう!」
ノートを見返しながら、ひとりダンスの練習をする。舞踏会で誰とペアになるかは分からないが、誰となっても大丈夫なように、最低限踊れるようにしておかないと……!
「……あれ? この前の」
見上げると、ノエル先生が立っていた。
「ノエル先生……! どうしてこちらに?」
「劇団の公演を観にね。あそこの劇場、在校生だけじゃなく卒業生も入れるんだ。途中で辞めてるから無理かなーとも思ってたんだけどね、大丈夫だった」
「そうだったんですね! 何の演目をご覧になったんですか?」
「んー、『ロミオとジュリエット』をね」
「あ! 私も前に観ました! 主役のおふたりも素敵だったんですけど、死のダンサーさんに目を奪われちゃいました」
「へぇ……」
「あ……ノエル先生はそう思われなかったですかね……」
「いいや? むしろ同じことを考えていたからびっくりしちゃったよ。……キミこそ今日はこんなところでどうしたの?」
「舞踏会に備えてダンスの練習をしておこうと思いまして……」
「あの後、レッスンに行けなくてごめんね? 志願したんだけれど、全くお声がかからなくてね」
……ルシアスパパのしわざかな。
「いえ、いいんです! 約束を守ろうとしてくれたことが嬉しいですから! それに今日こうしてまた会えましたし!」
「よかったらレッスンしようか? 毎週この時間に、ここで」
「え! いいんですか⁈ 是非お願いしたいです!」
「じゃあ、決まりだね。かわいい女の子との約束が守れてほっとしてるよ」
「ふふふ! よろしくお願いします!」
「うん、前より上手くなってる。たくさん練習したんだね? えらいえらい」
「ふふ! ありがとうございます! 相手役のひとに迷惑をかけないくらいには踊れておかないとまずいなと思いまして……」
「お相手の子はそんなに上手なの?」
「あ、いえ、誰と踊るかはまだ決まってないんですけどね……」
「へぇ! そうなんだ。てっきりミカあたりがもう誘っているのかと思ってたな」
「いやー、ミカと踊るのは……他の女の子たちの視線が怖いですね、正直」
「ははは、なるほどね。……じゃあさ、俺と踊る?」
「へ?」
「何てね、俺なんかと踊りたいわけ」
「踊ります」
「ん?」
「ぜひ躍らせてください! 舞踏会はペアの片方が聖ロマネス学園の在校生だったら参加OKなんです! ……ってノエル先生も卒業生だから知ってるか。あの! はい、是非! 一緒に踊りたいです! わー! 何だか夢みたい!」
「……本気?」
「はい! もちろんです! ノエル先生のペアにふさわしくなるよう、私これから一段と頑張りますね!」
「うん、分かった。あー、もし、他に踊りたい子が出てきたら、遠慮なくその子と踊っていいからね?」
「いえ! そんなひとは出てきません! 引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」
「そう……」
最推しと舞踏会に出られるなんて!これはダイエットも頑張らないとな~!
でもこの展開、何だか既視感があるような……?
遊ぶだけではなく、「白い光」についての調査結果も発表し合った。ただ、残念ながら手がかりを掴んだ者は誰もいなかった。
「白い光を見たのって、ミカ王子だけなのかもしれないわ~」
「だからこそ、ミカ先輩の願いが天に届いたのかもしんないっすね……」
「それか、見たことを忘れてるのかもしんないな。アタシたちも含めてさ」
「そうだね……。白い光についての調査は続けていくとして……今日は何をしようか」
「あのー、オレの剣術見てもらえませんか? ひとりで稽古しても、どこを直せばいいのかイマイチ分かんなくって……」
「うん、いいよ! 行こうか、ハリー」
「やはり俺もか……」
「ありがとうございます! オレ、去年の大決闘会でハリー先輩の剣さばきを見て……! それで聖ロマネス学園に入りたいって思ったんですよ! ふたりに指導してもらえたら、もう怖いモンなしです!」
「……行くぞ」
「え! もう行くんですか⁈」
「ふふ、さぁハリーの気が変わらないうちに僕らも行こうか」
颯爽と出ていったハリーを追って、ミカとカイトも決闘場へと急ぐ。
「嵐のように去っていったな……」
「うふふ、3人ともすっかり仲良くなったわね~」
「アタシたちも決闘場に行くか?」
「そうね~、今日はちょっと暑いから、冷たいものでも食べにいきたい気分だわ~」
「いいな! この前メニューに入ったタピオカミルクティーってやつ、飲んでみたいと思ってたんだ」
「あー、ごめん! 今日は別行動でもいい? 舞踏の練習をしておきたくて」
「あら、そうなの? それならナディアも付き合うわよ~?」
「いいの、いいの! ちょっと一人で復習しておきたくて」
「そうか? そんなに根詰めなくてもいい気もするけどなぁ……。まぁでも、お茶はいつでも行けるしな! 夕飯時に食堂集合な」
「うん、ありがとう!」
ノートを見返しながら、ひとりダンスの練習をする。舞踏会で誰とペアになるかは分からないが、誰となっても大丈夫なように、最低限踊れるようにしておかないと……!
「……あれ? この前の」
見上げると、ノエル先生が立っていた。
「ノエル先生……! どうしてこちらに?」
「劇団の公演を観にね。あそこの劇場、在校生だけじゃなく卒業生も入れるんだ。途中で辞めてるから無理かなーとも思ってたんだけどね、大丈夫だった」
「そうだったんですね! 何の演目をご覧になったんですか?」
「んー、『ロミオとジュリエット』をね」
「あ! 私も前に観ました! 主役のおふたりも素敵だったんですけど、死のダンサーさんに目を奪われちゃいました」
「へぇ……」
「あ……ノエル先生はそう思われなかったですかね……」
「いいや? むしろ同じことを考えていたからびっくりしちゃったよ。……キミこそ今日はこんなところでどうしたの?」
「舞踏会に備えてダンスの練習をしておこうと思いまして……」
「あの後、レッスンに行けなくてごめんね? 志願したんだけれど、全くお声がかからなくてね」
……ルシアスパパのしわざかな。
「いえ、いいんです! 約束を守ろうとしてくれたことが嬉しいですから! それに今日こうしてまた会えましたし!」
「よかったらレッスンしようか? 毎週この時間に、ここで」
「え! いいんですか⁈ 是非お願いしたいです!」
「じゃあ、決まりだね。かわいい女の子との約束が守れてほっとしてるよ」
「ふふふ! よろしくお願いします!」
「うん、前より上手くなってる。たくさん練習したんだね? えらいえらい」
「ふふ! ありがとうございます! 相手役のひとに迷惑をかけないくらいには踊れておかないとまずいなと思いまして……」
「お相手の子はそんなに上手なの?」
「あ、いえ、誰と踊るかはまだ決まってないんですけどね……」
「へぇ! そうなんだ。てっきりミカあたりがもう誘っているのかと思ってたな」
「いやー、ミカと踊るのは……他の女の子たちの視線が怖いですね、正直」
「ははは、なるほどね。……じゃあさ、俺と踊る?」
「へ?」
「何てね、俺なんかと踊りたいわけ」
「踊ります」
「ん?」
「ぜひ躍らせてください! 舞踏会はペアの片方が聖ロマネス学園の在校生だったら参加OKなんです! ……ってノエル先生も卒業生だから知ってるか。あの! はい、是非! 一緒に踊りたいです! わー! 何だか夢みたい!」
「……本気?」
「はい! もちろんです! ノエル先生のペアにふさわしくなるよう、私これから一段と頑張りますね!」
「うん、分かった。あー、もし、他に踊りたい子が出てきたら、遠慮なくその子と踊っていいからね?」
「いえ! そんなひとは出てきません! 引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」
「そう……」
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