5 / 45
第五話 身嗜みを整える。
しおりを挟む
奴隷の三人娘たちは、その日の午前中は休息を取ることを強要され、それ以外の行動はしてはいけないと念を押された。
もちろん、現在三人娘の事実上の保護者、ストライダーIKUMIにである。
IKUMIは、三人娘が指示通りに休息に入ると、早速、野営地の整備に取り掛かった。まず取り掛かったのは、三人娘の排泄用の簡易トイレである。
手刀で切り落とした手頃な長い枝の枝葉末節を取り除き、それを複数用意する。続いて野営地外れに突き刺し、掘っ立て小屋の骨組み、枠組みを組み立てた。
その後、地面に穴を掘って、野営地の外へと排泄物を流す溝を整備。足場に手頃な石を敷き詰め、溝の前に小水が跳ねないように板も取り付ける。簡易和式トイレである。
(うむ、これで良い。後はすぐ終わる)
そこまで終わったら後は簡単だ。長い布を四方に垂らして簡易トイレの中を覗けないようにし、容器に水洗用の水を汲み起きにする。最後に下腹部、お尻拭き用の紙を置く。
(良し。これで完了)
ここまで、ストライダーの行動は手慣れていて、すごく素早かった。
こうした作業は慣れているのか、IKUMIは30分も掛けず、それらを無駄のない動きでやり切ってしまった。今から何をするのかと声を掛けようとした三人娘に、その隙を与えないほどである。
実際、IKUMIに声を掛けたなら、三人娘はそれらの作業の邪魔になったことだろう。
そんなIKUMIの手並みと隙のなさからか、最初は簡易ベッドからポカーンとした表情をして、作業を眺めていた三人娘であった。
しかし、それも飽きたのか、手の指でキツネやらオオカミやらヘビの形を作り、バウバウ、アオ―ン、シャーッと睨み合いをさせる遊びを始めた。遊び道具がなければ、ないなりに遊びの方法を見つけるのが子供なのである。
それを含めた幼女たちの色々な遊びは、IKUMIが三人娘の着替えを準備をしている間も続き、先の朝食から約3時間後の、二度目の食事まで終わらなかった。
彼女らは、自由な時間を使った遊びにも飢えていたのだろう。奴隷身分から離れて、幼女らしい遊びを満喫していた。
IKUMIにも、それは理解できた。
そのため、IKUMIは三人娘に大人しく休息を取ってもらいたい所であったが、敢えて遊びを止めはしなかった。
なお、IKUMIが食事を複数回に分けて三人娘に与えるのは、彼女たちの弱った胃に無理なく栄養を補給させ、回復を早めるためだ。
◇ ◇ ◇
そして、ストライダーが三人娘に二度目の食事を与え終え、次の食事はお昼だと伝えた後、その異変は起こった。
(何だ? 今までとは違う視線を感じるぞ?)
ストライダーが次の作業、三人娘の髪飾りを作り始めてすぐのことだ。気になったIKUMIが、三人娘のいる簡易ベッド側へと振り向くと、手元の髪飾りの材料がガン見されていた。
(ああ、そういうことか。まあ、当然だな)
「今、太陽、三日月、星を模したデザインの髪飾りを用意している。出来上がったら一人一人髪に付けてやる」
振り向いたIKUMIがそう伝えると、三人とも頬を上気させてコクコクと肯く。
本当に嬉しそうな様子で、元々声の不自由なアマナだけでなく、リューコ、マリティアも嬉しくて声が出せない状態であった。
「誰がどれを髪に付けるかは、自分たちで話し合え」
そう言ってストライダーは作業に戻った。もう三人娘の視線やテンションアップを気にする様子もない。
(今更ながら、この世界のルールは難儀だな)
そう思うIKUMI。コツッ、コツッと、髪飾りの素材となる装甲狼を叩き、成形を続ける。そんなIKUMIの側の簡易ベッドで、嬉し涙を流しそうな勢いでIKUMIの手元を見守る、テンションの高い三人娘であった。
この現象は、別に三人娘が変だからではない。
所変われば、土地のルールも変わる。まして世界が違えば当然なのだ。三人娘が暮らす世界は、地球の少し前までの中華圏、日本などに似ているところがある。
まだ近代化以前、見た目の恰好は、敵味方の証明、属するコミュニティでの身分の証明で、重要な役割を果たしていた。
例えば日本の公家や侍の烏帽子親制度などは、パッと見の身分分けが重要であったことから尊重されていた。
まず、それの有る無しで、敵か味方か、どのコミュニティに属しているか判断する。その次に、礼儀作法が出来ているかどうかで、目の前の人物が味方の重要人物かを判断するという調子である。
それは、やはり異世界でもまかり通る理屈、ルールである。いや、こちら側の世界こそ、昔の地球のどの地域より、その理屈、ルールがまかり通っていた。
この世界は、異種族の知的生命体が跋扈し、それらが入り乱れて殺し合ってきた世界である。
だからこそ、見た目でパッと敵味方、種族、所属、身分を示す服装、装飾品が、地球のそれ以上に重要な意味を持っていた。
たとえば、たまたま茂みを通ってきて、大路に出たところで味方と出会ったらどうなるか?
たまたま普段は身に付けている衣服と違ったため、敵と間違われて殺されてしまった。そんなことになったら目も当てられない。
そうならないためにも、パブリックで共通認識が出来ている衣服や装飾品、特に目立つ頭部の品が重要だった。
そして、奴隷身分にされた不幸な者たちに、貴人の烏帽子や貴婦人の十二単に相当するものなど与えられる訳もない。
みすぼらしい恰好、装飾品を与えられてないシンプル過ぎる姿が、奴隷の証明になっているのである。
つまり、三人娘がIKUMIに髪飾りを与えられるということは、奴隷からその上の身分にランクアップされることを意味していた。
だからこそ、三人娘は髪飾りがIKUMIによって製造されていることを認識し、その意味に気付いて尋常ならざる反応を示したのである。
◇ ◇ ◇
そして、お昼前の時間帯となり―――
「良し…これで完成だ」
―――そんなストライダーの声が発せられた。
!
!
!
髪飾りの完成を告げるIKUMIの声にき気付くと、三人娘はバッと跳ね起き、寝ていた簡易ベッドから飛びだしてきた。
早速、完成品を間近で見ようとする三人娘。
「だから来るなと言った。髪飾りはそちらに持って行ってやる。寝ていろ」
しかし、その気配を感じていたIKUMIは、そう言って三人娘の行動を制してみせた。
「…はい」
「…ですの」
「…う…ん」
言葉少なに、渋々とIKUMIの言葉に従う三人娘。逸る意識と、うずうずとする身体を素直に押さえ込む。今のIKUMIの言葉は、三人の幼女たちにとって絶対だった。
もう、その素直さは、親や飼い主に従う従順な飼い犬レベルである。
たった二回の食事、それに衣服と髪飾りの用意、野営地の整備であったが、それで十分以上に、三人娘はIKUMIに対して従順になっていた。
ただ、彼女たちは親に必要以上に甘えて噛み付く、幼い駄犬とは違う。
課されたルールは言われた通りに守るのであった。
「気持ちは解るが、俺はお前たちに早く健康になって欲しい。だから、今は寝ていろ。排泄以外は俺が面倒を見てやる」
そう聞いて、リューコはじめマリティアとアマナも、コクコクと肯く。
昨夜から一緒だっただけではあるが、三人はIKUMIの人の良さを感じていた。
そのため、三人の娘は本当に従順に言うことを聞くようになっていた。
もちろん、そうした方が念願の髪飾りの完成品を早く手に入れられるという計算もあったが、それは愛嬌というものである。
その程度のことはIKUMIでも理解できたし、受け入れる度量もあった。
だから変に咎めだてもせず、IKUMIは三人娘のいる簡易ベットの上にある長方形テーブルへと、出来上がった髪飾り三つを静かに置いた。
コトンと、僅かな音が響く。
三人娘は目に見えて、幸福そうな表情となる。自然とIKUMIの表情も柔和なものになった。
そんな合間も、IKUMIは一人考える。
(良い感じに好感を得たな。これは駄目押しに、他の手段でも好感を稼ぐとするか)
ここは押す場面だと、IKUMIは新たな三人娘従順化の手段に訴えることにした。
「どれを身に付けるかは、三人で決めろ。それと俺の言うことを聞けば、これとは別に髪飾りも衣服も製造してやる」
ビクンッ!
ビクッ!
クラリ…
本当に幸せそうに、出来上がった髪飾り三つを見詰めていた三人娘。同時に、本当にこれを身に付けて良いの?と半信半疑となり、自分から手に取ることができないでいた。そんな三人娘に、IKUMIが予想外の言葉を投げ掛けた。不意打ちというやつである。
これに仰天したリューコとマリティアが、嬉しさで身体をビクつかせ、アマナが嬉し過ぎて失神しそうになった。その身体をリューコとマリティアが慌てて支えた。
(おう、奴隷身分だった幼女に過分な希望を与えてしまったか………だが、倍プッシュだ)
なでなで。
なでなで。
なでなで。
おもむろに、IKUMIは三人娘の頭の髪を優しく撫でていった。予想外のことに三人娘はまた仰天し、目を白黒させる。そして、それぞれ自分の仲間がなでなでと撫でられていく光景を見守った。
最初は言葉もなく、されるがままだった三人娘は、IKUMIが最後にアマナの髪を撫で終わると、頬を上気させ、上目遣いにストライダーの顔を見詰めるようになっていた。
だが、IKUMIはそんな三人娘の態度を気にもせずに、無言のまま簡易ベッドの側から離れて、次の作業である昼食の準備に移った。
もうすぐ、そんな時間なのである。
(その後は、身体を洗ってやらんとな。午後になれば気温もより暖かくなる。水の精霊術の出番だな)
そう思いながら、IKUMIは焚火用の石組みの前で作業を開始した。三人娘を驚かせないために、吸血植物の蔦の中から取り出して、この場で保存していた装甲狼の肉を、小さく切り刻むのである。
ちなみに昼食分の病人食はすでに用意してあり、これは午後以降用の肉である。夜の屋台用の肉は、三人娘を寝かしつけてから、吸血植物がいる場所に取りに行くことになる。
(ん?…)
そこでストライダーはあることを思い出した。
(…そういえば、異性の頭を優しく撫でることは、こっちの世界では求婚の意味があったような………まあ良いか、相手は幼女だ)
ストライダーIKUMIにロリコンの趣味はない。あくまでも頭を撫でたことは、三人娘を従順にする以外の意味は持たない。だからIKUMIは気にも留めなかった。
「…」
「…」
「…」
しかし、何故か三人娘のストライダーIKUMIを見詰める視線は、劇的に違うものになっていたのだった。もし、感の鋭い者がこの場にいたならば、幼女たちの瞳の中に、ハートマークの幻想を見ただろう。
もちろん、現在三人娘の事実上の保護者、ストライダーIKUMIにである。
IKUMIは、三人娘が指示通りに休息に入ると、早速、野営地の整備に取り掛かった。まず取り掛かったのは、三人娘の排泄用の簡易トイレである。
手刀で切り落とした手頃な長い枝の枝葉末節を取り除き、それを複数用意する。続いて野営地外れに突き刺し、掘っ立て小屋の骨組み、枠組みを組み立てた。
その後、地面に穴を掘って、野営地の外へと排泄物を流す溝を整備。足場に手頃な石を敷き詰め、溝の前に小水が跳ねないように板も取り付ける。簡易和式トイレである。
(うむ、これで良い。後はすぐ終わる)
そこまで終わったら後は簡単だ。長い布を四方に垂らして簡易トイレの中を覗けないようにし、容器に水洗用の水を汲み起きにする。最後に下腹部、お尻拭き用の紙を置く。
(良し。これで完了)
ここまで、ストライダーの行動は手慣れていて、すごく素早かった。
こうした作業は慣れているのか、IKUMIは30分も掛けず、それらを無駄のない動きでやり切ってしまった。今から何をするのかと声を掛けようとした三人娘に、その隙を与えないほどである。
実際、IKUMIに声を掛けたなら、三人娘はそれらの作業の邪魔になったことだろう。
そんなIKUMIの手並みと隙のなさからか、最初は簡易ベッドからポカーンとした表情をして、作業を眺めていた三人娘であった。
しかし、それも飽きたのか、手の指でキツネやらオオカミやらヘビの形を作り、バウバウ、アオ―ン、シャーッと睨み合いをさせる遊びを始めた。遊び道具がなければ、ないなりに遊びの方法を見つけるのが子供なのである。
それを含めた幼女たちの色々な遊びは、IKUMIが三人娘の着替えを準備をしている間も続き、先の朝食から約3時間後の、二度目の食事まで終わらなかった。
彼女らは、自由な時間を使った遊びにも飢えていたのだろう。奴隷身分から離れて、幼女らしい遊びを満喫していた。
IKUMIにも、それは理解できた。
そのため、IKUMIは三人娘に大人しく休息を取ってもらいたい所であったが、敢えて遊びを止めはしなかった。
なお、IKUMIが食事を複数回に分けて三人娘に与えるのは、彼女たちの弱った胃に無理なく栄養を補給させ、回復を早めるためだ。
◇ ◇ ◇
そして、ストライダーが三人娘に二度目の食事を与え終え、次の食事はお昼だと伝えた後、その異変は起こった。
(何だ? 今までとは違う視線を感じるぞ?)
ストライダーが次の作業、三人娘の髪飾りを作り始めてすぐのことだ。気になったIKUMIが、三人娘のいる簡易ベッド側へと振り向くと、手元の髪飾りの材料がガン見されていた。
(ああ、そういうことか。まあ、当然だな)
「今、太陽、三日月、星を模したデザインの髪飾りを用意している。出来上がったら一人一人髪に付けてやる」
振り向いたIKUMIがそう伝えると、三人とも頬を上気させてコクコクと肯く。
本当に嬉しそうな様子で、元々声の不自由なアマナだけでなく、リューコ、マリティアも嬉しくて声が出せない状態であった。
「誰がどれを髪に付けるかは、自分たちで話し合え」
そう言ってストライダーは作業に戻った。もう三人娘の視線やテンションアップを気にする様子もない。
(今更ながら、この世界のルールは難儀だな)
そう思うIKUMI。コツッ、コツッと、髪飾りの素材となる装甲狼を叩き、成形を続ける。そんなIKUMIの側の簡易ベッドで、嬉し涙を流しそうな勢いでIKUMIの手元を見守る、テンションの高い三人娘であった。
この現象は、別に三人娘が変だからではない。
所変われば、土地のルールも変わる。まして世界が違えば当然なのだ。三人娘が暮らす世界は、地球の少し前までの中華圏、日本などに似ているところがある。
まだ近代化以前、見た目の恰好は、敵味方の証明、属するコミュニティでの身分の証明で、重要な役割を果たしていた。
例えば日本の公家や侍の烏帽子親制度などは、パッと見の身分分けが重要であったことから尊重されていた。
まず、それの有る無しで、敵か味方か、どのコミュニティに属しているか判断する。その次に、礼儀作法が出来ているかどうかで、目の前の人物が味方の重要人物かを判断するという調子である。
それは、やはり異世界でもまかり通る理屈、ルールである。いや、こちら側の世界こそ、昔の地球のどの地域より、その理屈、ルールがまかり通っていた。
この世界は、異種族の知的生命体が跋扈し、それらが入り乱れて殺し合ってきた世界である。
だからこそ、見た目でパッと敵味方、種族、所属、身分を示す服装、装飾品が、地球のそれ以上に重要な意味を持っていた。
たとえば、たまたま茂みを通ってきて、大路に出たところで味方と出会ったらどうなるか?
たまたま普段は身に付けている衣服と違ったため、敵と間違われて殺されてしまった。そんなことになったら目も当てられない。
そうならないためにも、パブリックで共通認識が出来ている衣服や装飾品、特に目立つ頭部の品が重要だった。
そして、奴隷身分にされた不幸な者たちに、貴人の烏帽子や貴婦人の十二単に相当するものなど与えられる訳もない。
みすぼらしい恰好、装飾品を与えられてないシンプル過ぎる姿が、奴隷の証明になっているのである。
つまり、三人娘がIKUMIに髪飾りを与えられるということは、奴隷からその上の身分にランクアップされることを意味していた。
だからこそ、三人娘は髪飾りがIKUMIによって製造されていることを認識し、その意味に気付いて尋常ならざる反応を示したのである。
◇ ◇ ◇
そして、お昼前の時間帯となり―――
「良し…これで完成だ」
―――そんなストライダーの声が発せられた。
!
!
!
髪飾りの完成を告げるIKUMIの声にき気付くと、三人娘はバッと跳ね起き、寝ていた簡易ベッドから飛びだしてきた。
早速、完成品を間近で見ようとする三人娘。
「だから来るなと言った。髪飾りはそちらに持って行ってやる。寝ていろ」
しかし、その気配を感じていたIKUMIは、そう言って三人娘の行動を制してみせた。
「…はい」
「…ですの」
「…う…ん」
言葉少なに、渋々とIKUMIの言葉に従う三人娘。逸る意識と、うずうずとする身体を素直に押さえ込む。今のIKUMIの言葉は、三人の幼女たちにとって絶対だった。
もう、その素直さは、親や飼い主に従う従順な飼い犬レベルである。
たった二回の食事、それに衣服と髪飾りの用意、野営地の整備であったが、それで十分以上に、三人娘はIKUMIに対して従順になっていた。
ただ、彼女たちは親に必要以上に甘えて噛み付く、幼い駄犬とは違う。
課されたルールは言われた通りに守るのであった。
「気持ちは解るが、俺はお前たちに早く健康になって欲しい。だから、今は寝ていろ。排泄以外は俺が面倒を見てやる」
そう聞いて、リューコはじめマリティアとアマナも、コクコクと肯く。
昨夜から一緒だっただけではあるが、三人はIKUMIの人の良さを感じていた。
そのため、三人の娘は本当に従順に言うことを聞くようになっていた。
もちろん、そうした方が念願の髪飾りの完成品を早く手に入れられるという計算もあったが、それは愛嬌というものである。
その程度のことはIKUMIでも理解できたし、受け入れる度量もあった。
だから変に咎めだてもせず、IKUMIは三人娘のいる簡易ベットの上にある長方形テーブルへと、出来上がった髪飾り三つを静かに置いた。
コトンと、僅かな音が響く。
三人娘は目に見えて、幸福そうな表情となる。自然とIKUMIの表情も柔和なものになった。
そんな合間も、IKUMIは一人考える。
(良い感じに好感を得たな。これは駄目押しに、他の手段でも好感を稼ぐとするか)
ここは押す場面だと、IKUMIは新たな三人娘従順化の手段に訴えることにした。
「どれを身に付けるかは、三人で決めろ。それと俺の言うことを聞けば、これとは別に髪飾りも衣服も製造してやる」
ビクンッ!
ビクッ!
クラリ…
本当に幸せそうに、出来上がった髪飾り三つを見詰めていた三人娘。同時に、本当にこれを身に付けて良いの?と半信半疑となり、自分から手に取ることができないでいた。そんな三人娘に、IKUMIが予想外の言葉を投げ掛けた。不意打ちというやつである。
これに仰天したリューコとマリティアが、嬉しさで身体をビクつかせ、アマナが嬉し過ぎて失神しそうになった。その身体をリューコとマリティアが慌てて支えた。
(おう、奴隷身分だった幼女に過分な希望を与えてしまったか………だが、倍プッシュだ)
なでなで。
なでなで。
なでなで。
おもむろに、IKUMIは三人娘の頭の髪を優しく撫でていった。予想外のことに三人娘はまた仰天し、目を白黒させる。そして、それぞれ自分の仲間がなでなでと撫でられていく光景を見守った。
最初は言葉もなく、されるがままだった三人娘は、IKUMIが最後にアマナの髪を撫で終わると、頬を上気させ、上目遣いにストライダーの顔を見詰めるようになっていた。
だが、IKUMIはそんな三人娘の態度を気にもせずに、無言のまま簡易ベッドの側から離れて、次の作業である昼食の準備に移った。
もうすぐ、そんな時間なのである。
(その後は、身体を洗ってやらんとな。午後になれば気温もより暖かくなる。水の精霊術の出番だな)
そう思いながら、IKUMIは焚火用の石組みの前で作業を開始した。三人娘を驚かせないために、吸血植物の蔦の中から取り出して、この場で保存していた装甲狼の肉を、小さく切り刻むのである。
ちなみに昼食分の病人食はすでに用意してあり、これは午後以降用の肉である。夜の屋台用の肉は、三人娘を寝かしつけてから、吸血植物がいる場所に取りに行くことになる。
(ん?…)
そこでストライダーはあることを思い出した。
(…そういえば、異性の頭を優しく撫でることは、こっちの世界では求婚の意味があったような………まあ良いか、相手は幼女だ)
ストライダーIKUMIにロリコンの趣味はない。あくまでも頭を撫でたことは、三人娘を従順にする以外の意味は持たない。だからIKUMIは気にも留めなかった。
「…」
「…」
「…」
しかし、何故か三人娘のストライダーIKUMIを見詰める視線は、劇的に違うものになっていたのだった。もし、感の鋭い者がこの場にいたならば、幼女たちの瞳の中に、ハートマークの幻想を見ただろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。
ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる