ストライダーIKUMI~奴隷を助けたら求婚された。だが気にしない。

ゆっこ!

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 第二十話 道中にて友達となる。

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 旅は道連れ世は情けとは、よく言ったもの。

 地球(日本)の学校でも、疎遠だったクラスメイトの子と、就学旅行などの団体行動で仲良くなることは珍しくはない。ましてや、事の是非に係わらず、共に生活していく関係ともなれば、それは必然なのだろう。

 精霊の力溢れるその異世界に置いても、それは変わらないことであった。

 新たなホームとなる廃村へと向かう道中、出発から約三時間を経ての最初の休憩時間には、すでにリューコとノアという幼女は、互いに楽しそうに話し合う間柄になっていた。

 共に一度、奴隷の身分に落されたリューコとノアには、以前互いがどんな身分であったかなどは、もう気にならないのだった。

 そんな二人が話題にしたのは互いの容姿のことだ。それぞれ二人は、顔に傷が有るのである。

 リューコは右頬から鼻へと斜めの傷があり、ノアといえば、何と隻眼の眼帯姿である。右目が失われているのだった。その互いの容姿が二人をお互いに意識させ、近付けたようだった。
 昨日のうちから二人は、それぞれの顔の傷が気になったのか、互いを別々に見詰めて、気付かれる前にサッと視線を逸らしていた。
 今日の早朝、ノアが徒歩の警戒役に立候補したのは、同じく顔に傷があるリューコと話してみたかったからだ。

 そして少しずつ会話を交わし、休憩時間になると、こうしてゆっくりと話し合う時間を持てたのである。 

 「じゃあ、リューコちゃんはその貌の傷、自分で付けたの?」

 「うん、変態の幼女趣味に付き合うのは嫌だったからね。こうしなかったら、その人に、肉奴隷ってやつにされていたと思う」

 「なにそれカッコイイ。僕はお兄ちゃんと剣の修業中に左目を無くして、色々と片輪になった子たちの知り合いがいたんだけど、リューコちゃんみたいに、カッコイイ理由で顔に傷を負った子はいなかったなあ」

 「ええ…そんなカッコイイ話じゃないよ。それより気になったんだけど、ノアはお侍の家の子?」

 「そう。父上もお兄ちゃんも国境の守備に廻わされていて、実家の城下町は手薄だったんだ。そこをあの奴隷商人たちに狙われて、攫われちゃったの」

 「そうなんだ」

 「うん、でも自害なんてしないで良かったよ。死んじゃったらそこで終わり。こうしてストライダーさまに開放されることもなかったもの」

 「それは私も同じだよ。こんな傷有り娘の私でも、IKUMIさんは頭を撫でてくれたし…」

 「えっ!? なにそれ初耳!」

 こちら側の世界に置いて、頭は自分の人格を意味する最重要部位である。その頭を異性に撫でさせることは、女性にとって求婚を受け入れるという意味を持つ。
 そのためノアは、もうリューコとストライダーはそういう関係なのかと驚いたのだ。
 なお、肝心のストライダーIKUMIといえば、現代日本人の感覚でリューコたちの頭を撫でたので、その心算はまったくない。
 だが、リューコたちこちら側の人々は、当然の如く、求婚行為という常識の下で話を進めていた。

 「そっか…じゃあ、リューコちゃんの将来はもう安泰な訳だ。マリティアさんの主家のトロメリア家や、北方の精霊術の一族も、先祖がストライダーさまと同じ選ばれし者らしいからね」

 「うん。でも撫でて貰ったのは私だけじゃないよ。マリティアちゃんと、そこのアマナちゃんも一緒だよ」

 「そりゃあ豪気だ。一度に三人もですか。こりゃあ、僕も立候補しちゃおうかな」

 「ええっー!」

 ノアの揶揄いに、ちょっと過剰反応してしまうリューコである。

 「ははは。冗談だよ、冗談。ははは………ん?」

 そこまで言って、ノアはある事に気付いた。それまで、リューコ、ノアの話を横で黙って話を聞いていたアマナへと顔を向ける。正確には、アマナの頭に生えている蒼い髪を見詰めるためだ。
 ノアの残された左目が、その蒼い髪を映す。
 リューコ、ノア、アマナは、廃村から一行が出発してからの休憩に入るまでの三時間、共に徒歩移動で後方の監視役をこなした仲だ。
 そのため、休憩時間となった今、こうして三人仲良く敷布を敷いた地面に座っているのである。

 そこで、何か?と見詰め返してくるアマナに、ノアが疑問を切り出した。

 「ねえ、アマナちゃんって、水の精霊術師であるショウブ一族出身?」

 コクコク。

 これまで黙ってリューコとノアの話を聞いていたアマナが、「そうだよ」とノアの質問に肯いた。言語障害でうまく喋れないため、そのように無言で肯き、自らの出自をリューコとノアに明かしたのである。

 そんな二人のやり取りを、ちょっと吃驚した表情でリューコが見詰めていた。 


 ◇ ◇ ◇


 同じ頃。

 マリティア、モモを含める十人の幼女は、休憩時間を利用してストライダーIKUMIに、現在向かっている途中の廃村の今後のことを、色々と聞いていた。 
 廃村は今後のホームとなる場所であるため、王族の端の端に連なるマリティアや、高級官僚の娘であったモモ、その他、良家出身の幼女たちとしては、充分に気にする所であった。

 休憩時間に入ってすぐ、ストライダーはその質問への対応に追われていた。

 問一、精霊術による村の囲いはどうするの? 

 「じつは仲間に先行して農地を耕して貰っている。そこを含め、村を中心にして三キロ四方を土壁と堀で取り囲む予定だ」

 問二、水源は大丈夫?

 「問題ない。近くに川もあるし、村の井戸もある。飲料水には事欠かない。畑への散水、堀に流し込む量は十分に確保できるし、最悪、俺の精霊術で綺麗な水は確保が可能だ」

 問三、食料は?

 「トーリン収容所にいる仲間から、食料、雑貨は一定量を入手済みだ。一月ほどはそれで衣食住は事足りる。その間に精霊術で農作物を育てて、収穫する。

 問四、家屋敷はどうするの?

 「近くの森の資材と、土壁などを利用して、現在残っている廃村の住居を補強。しばらくはそれらを使用する」

 問五、夜警などの配置は?

 「SANSAIを根分けして数を増やす。SANSAIは吸血の代りに土地の養分と精霊力を吸収できれば成長できる。そいつらを村のガードに起用する。マリティアたちは安心して眠ってくれ」

 問六、外部との連絡手段はある?

 「離れた相手と連絡を取る伝話符という便利な品がある。仲間に一人、失われた鉱山という場所で工房を持っている者がいる。彼から色々と援助して貰うことになる。ミシンとか」

 問七、周辺の村や町とのやり取りは可能?

 「無理だ。ホーリーズ・クランの領内では原則不可能。外部とのやり取りは基本、国境を越えた北方諸国連合とだけになる。それと失われた鉱山もそちら側だ」
 
 問八、その間、私たちはどうして居れば良い?

 「農作業の手伝いなどだ。それに、装甲狼の装甲、すなわち精霊力の宿った素材や、収容所から持ってきた布などはそちらに与える。工夫して使え」

 こうして、ストライダーは主な幼女たちの質問に答え終えた。

 「これで全部か?」

 質問を捌き切ったストライダーが、表情を変えることもなく最後にそう質問し返した。

 「あの…さっき言っていた、ミシンって何ですか?」

 無表情なストライダーに、そう手を挙げて質問したのは、IKUMIが助け出した幼女の中、大人しい性格をしたニコ・ティアナという幼女だった。

 「ああ、裁縫の道具で、針仕事を劇的に効率化する品だ。まあ、まず現物を見て貰わんどうにもならん。後の話だ。今はそれで納得しておけ」

 (お裁縫…針仕事に使う?)

 「わっ、解りました(解っていない)」

 あまり解らなかったが、とりあえず納得することにするニコ。中途半端なストライダーの説明を聞き、ますますミシンという品を想像でき憎くなったことは、ご愛敬である。

 「うむ、それで他には?」

 「あの、お家…いえ、本国へと連絡は取れるのですか?」

 そう手を挙げて質問したのは、モモ・ベニバスであった。

 「そういえば昨日、仲間の忍から連絡があった。奴隷商人たちの手下を倒して、他の幼女たちの一部を救い出したそうだ」

 「そっ、そうなんですの!?」

 そう息を呑んで答えたのはマリティアだ。他の幼女たちも同様だった。本当ならば、喜ばしい話である。本国に巣食うダニの掃除が進んだという知らせだからだ。

 「とりあえず、朝は廃村に向かう事が大事だったから黙っていた。そうだな、村に到着したら、その忍とまた連絡を取る。その時みんなの名前をそいつに伝えれば、実家の者たちとも連絡を取ってくれるだろう。君たちの実家に、無事を知らせることもできるだろう」

 「ああっ! 良かったですの!」

 マリティアが状況を理解し、ちょっとオーバーアクション気味に天を仰いだ。他の幼女たちも、ストライダーの言葉を聞いてホッとした表情となった。
 お互いに抱き合い「良かった。ストライダーさまが言うのだから、本当だろう」と、涙を流し合うものもいた。

 「さ、もう少し休んだら、出発しよう」

 そう言ってストライダーは、リューコ、ノア、アマナの様子を見てみるかと、三人の幼女の許へと歩いて行った。 
 
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