1 / 9
第一話 押し入れの中の吸血鬼と私
しおりを挟む
「出して~!出してよ!」
「うるさいゴミムシ!居候は!昭和の古代から押し入れの中と決まっている!今度私のベッドに無断で入り込んだら承知しないからな!」
ドン!ドン!と押し入れの内部から非力な少女が襖を叩く。
しかし、吸血鬼としての力をすべて失ったレムネリアは、つっかえ棒をした襖を蹴破ることも出来なかった。
だからこそ、私、虚歴(とみてこよみ)によって、彼女、レムネリアは襖に閉じ込められても何ら抵抗できなのだ。
「だって~(グスン)」
「うっせぇ!吸血は決まった時間だけって約束だろう!レイプも御法度って決めただろう!危うく処女じゃなくなるところだったんだ!レイプ絶対駄目!そこでしばらく反省していろ!」
欲望の塊である吸血鬼におあずけは無理な話と知っている私であったが、勘弁ならないものは勘弁ならぬのである。
(ならぬものはならぬのだ!)
それ故に、私は彼女を押し入れに放り込み、襖につっかえ棒をして閉じ込めた。
何のしつけにもならないと知りつつも、ちゃんとお仕置きしないと事態がエスカレートしていくだけと解るからである。
「まったく!私は仕事に行ってくるから!そこで大人しく寝ていなさい!」
「いやだぁ~置いて行かないで~」
「駄目!帰ったらベッドの上で可愛がってあげるから、それまでお預け!」
そう私が返すと、襖を叩く音がピタッと止まった。
さすがに吸血鬼、欲望には素直だ。
私は、フフッと苦笑する。
「早く帰って来てね~」
「そうするわ!」
哀しそうな叫び声とは一転、晴れ晴れとした声でそう言うレムネリアと約束し、私は郊外の一人住まいの自宅玄関へと向かう。
時刻は深夜10時といったところ。
これから情報提供者から戴くものを戴き、所用を済ます頃には、調度、化け物や怪物、幽霊、怨霊、そして吸血鬼が跋扈する時間になっているだろう。
今の私にぴったりな活動時間だ。
吸血鬼の恋人である私は、吸血鬼に何をされても人間のままという特性を持つ。
ただ、私の場合はさらに特殊な特性を持っていた。
それは、自分と接触した吸血鬼の力を、そのまま全て奪い取れる………そんなスペシャルスキルだった。
俺が!俺こそがガンダ…いや、吸血鬼だ!が、私は出来てしまうのである。
そんな私は、実質上の伴侶となったゴミムシ…いや、レムネリアを養い、自分自身の懐を温めるため、その特性を利用して仕事に出ていた。
有り体に言ってしまえば、吸血鬼の力を使い、人に非ざる化け物や、魔術師、呪術師の掃除である。
それは別に変なことではない。
私は、超常の力を持っているのに正体を晒さずに隠れ住み、一般人と同じ仕事をしている。
その方が変だと思う。
例えばである。
そんな力を手にして、あなたは一般人と同じでいるだろうか?
あなただってそんな力を手にすれば、超常の世界に飛び込むだろう?
得た力を存分に使ってみたいでしょう?
できれば、人に迷惑をかけるだけの、悪人や化け物を相手にして。
違って?
そんなことを考えつつ、私は中学生の身体をすっぽりと覆う外套を着込み、そのポケットから玄関のカギを取り出す。
普段は食料を届けてくれる配達人が来た時以外、殆ど使用しない品。
そのため、常時、外套のポケットに入っている品だった。
ご近所の人たちは、私が未だに片目、片手、酷い火傷の姿のままだと思い込んでいる。だから普段の生活では、外部との接触はそれで十分なのだ。
そんな理由もあり、私が深夜に人目を忍んで外出することにも、ご近所の方々は寛容だ。所謂、やさしい見て見ぬふりをしてくれているのだ。
ちなみに、私がそんな大怪我を負ってしまった理由は、あの武の漢由来のマスク不足の原因を作った転売ヤー一斉摘発に巻き込まれたからである。私は、運悪く混乱した犯人一味に人質にされたのだ。
そして、片目、片腕、酷い火傷姿にこそなりはしたが、私は九死に一生を得て生き残ったのだ。
そのために以後の私は、誰に憚ることもなく、こうして全身を隠す外套を着込んで深夜の時間帯に出歩けた。
かつて片目、片腕、酷い火傷姿であったことは、私のハンディキャップではなくなって、むしろ自分の正体を隠すメリットになっていた。
なぜなら、それで完全に人目を避ける形で別の姿になることができたのだから。
「霧…霧は良い。誰にも悟られずに姿を変えられる………」
自宅から徒歩で出発した私は、外套に覆われた口元でそう呟く。
そう…霧だ。
吸血鬼には、狼やコウモリに変身するだけでなく、霧にすら変化できる能力がある。
レムネリアの能力を奪った後、私は、その能力で一旦霧になった後に、片目、片腕、酷い火傷を負う以前の姿へと戻り、その傷を再生した。
そういった意味では、私の許にやって来てくれたレムネリアには感謝してもしきれない。
だからこそ私は、レムネリアの[自分の伴侶になって]という願いを受け入れた。
私は、私が女性でも構わないという彼女を受け入れ、女の子吸血鬼のお嫁さんになったのだ。
(もっとも、自分が吸血鬼の権能全てを奪えるなんて思ってもいなかったんだけどね)
そうして、私が事実上の吸血鬼代行となった。
人生、何があるか解ったものじゃない。何がプラスになるかもだ。運命の螺旋は逆方向へと廻り始め、私の人生は
真紅の霧に包まれた。
もう後戻りはできないが、今更後悔しても意味がない。
(せめて闇夜に咲く花となろう)
そう考えて微笑む私は、そのまま深夜の闇の中へと消えいく。
そんな数奇な運命を背負った私が目指す場所と言えば、霧となった私が一体化する品、自動人形の保管場所であった。
そう。
私は吸血鬼らしく複数の姿に変化する。
だが、その力を利用して、人間とも吸血鬼とも違うものにもなれるのだった。
「うるさいゴミムシ!居候は!昭和の古代から押し入れの中と決まっている!今度私のベッドに無断で入り込んだら承知しないからな!」
ドン!ドン!と押し入れの内部から非力な少女が襖を叩く。
しかし、吸血鬼としての力をすべて失ったレムネリアは、つっかえ棒をした襖を蹴破ることも出来なかった。
だからこそ、私、虚歴(とみてこよみ)によって、彼女、レムネリアは襖に閉じ込められても何ら抵抗できなのだ。
「だって~(グスン)」
「うっせぇ!吸血は決まった時間だけって約束だろう!レイプも御法度って決めただろう!危うく処女じゃなくなるところだったんだ!レイプ絶対駄目!そこでしばらく反省していろ!」
欲望の塊である吸血鬼におあずけは無理な話と知っている私であったが、勘弁ならないものは勘弁ならぬのである。
(ならぬものはならぬのだ!)
それ故に、私は彼女を押し入れに放り込み、襖につっかえ棒をして閉じ込めた。
何のしつけにもならないと知りつつも、ちゃんとお仕置きしないと事態がエスカレートしていくだけと解るからである。
「まったく!私は仕事に行ってくるから!そこで大人しく寝ていなさい!」
「いやだぁ~置いて行かないで~」
「駄目!帰ったらベッドの上で可愛がってあげるから、それまでお預け!」
そう私が返すと、襖を叩く音がピタッと止まった。
さすがに吸血鬼、欲望には素直だ。
私は、フフッと苦笑する。
「早く帰って来てね~」
「そうするわ!」
哀しそうな叫び声とは一転、晴れ晴れとした声でそう言うレムネリアと約束し、私は郊外の一人住まいの自宅玄関へと向かう。
時刻は深夜10時といったところ。
これから情報提供者から戴くものを戴き、所用を済ます頃には、調度、化け物や怪物、幽霊、怨霊、そして吸血鬼が跋扈する時間になっているだろう。
今の私にぴったりな活動時間だ。
吸血鬼の恋人である私は、吸血鬼に何をされても人間のままという特性を持つ。
ただ、私の場合はさらに特殊な特性を持っていた。
それは、自分と接触した吸血鬼の力を、そのまま全て奪い取れる………そんなスペシャルスキルだった。
俺が!俺こそがガンダ…いや、吸血鬼だ!が、私は出来てしまうのである。
そんな私は、実質上の伴侶となったゴミムシ…いや、レムネリアを養い、自分自身の懐を温めるため、その特性を利用して仕事に出ていた。
有り体に言ってしまえば、吸血鬼の力を使い、人に非ざる化け物や、魔術師、呪術師の掃除である。
それは別に変なことではない。
私は、超常の力を持っているのに正体を晒さずに隠れ住み、一般人と同じ仕事をしている。
その方が変だと思う。
例えばである。
そんな力を手にして、あなたは一般人と同じでいるだろうか?
あなただってそんな力を手にすれば、超常の世界に飛び込むだろう?
得た力を存分に使ってみたいでしょう?
できれば、人に迷惑をかけるだけの、悪人や化け物を相手にして。
違って?
そんなことを考えつつ、私は中学生の身体をすっぽりと覆う外套を着込み、そのポケットから玄関のカギを取り出す。
普段は食料を届けてくれる配達人が来た時以外、殆ど使用しない品。
そのため、常時、外套のポケットに入っている品だった。
ご近所の人たちは、私が未だに片目、片手、酷い火傷の姿のままだと思い込んでいる。だから普段の生活では、外部との接触はそれで十分なのだ。
そんな理由もあり、私が深夜に人目を忍んで外出することにも、ご近所の方々は寛容だ。所謂、やさしい見て見ぬふりをしてくれているのだ。
ちなみに、私がそんな大怪我を負ってしまった理由は、あの武の漢由来のマスク不足の原因を作った転売ヤー一斉摘発に巻き込まれたからである。私は、運悪く混乱した犯人一味に人質にされたのだ。
そして、片目、片腕、酷い火傷姿にこそなりはしたが、私は九死に一生を得て生き残ったのだ。
そのために以後の私は、誰に憚ることもなく、こうして全身を隠す外套を着込んで深夜の時間帯に出歩けた。
かつて片目、片腕、酷い火傷姿であったことは、私のハンディキャップではなくなって、むしろ自分の正体を隠すメリットになっていた。
なぜなら、それで完全に人目を避ける形で別の姿になることができたのだから。
「霧…霧は良い。誰にも悟られずに姿を変えられる………」
自宅から徒歩で出発した私は、外套に覆われた口元でそう呟く。
そう…霧だ。
吸血鬼には、狼やコウモリに変身するだけでなく、霧にすら変化できる能力がある。
レムネリアの能力を奪った後、私は、その能力で一旦霧になった後に、片目、片腕、酷い火傷を負う以前の姿へと戻り、その傷を再生した。
そういった意味では、私の許にやって来てくれたレムネリアには感謝してもしきれない。
だからこそ私は、レムネリアの[自分の伴侶になって]という願いを受け入れた。
私は、私が女性でも構わないという彼女を受け入れ、女の子吸血鬼のお嫁さんになったのだ。
(もっとも、自分が吸血鬼の権能全てを奪えるなんて思ってもいなかったんだけどね)
そうして、私が事実上の吸血鬼代行となった。
人生、何があるか解ったものじゃない。何がプラスになるかもだ。運命の螺旋は逆方向へと廻り始め、私の人生は
真紅の霧に包まれた。
もう後戻りはできないが、今更後悔しても意味がない。
(せめて闇夜に咲く花となろう)
そう考えて微笑む私は、そのまま深夜の闇の中へと消えいく。
そんな数奇な運命を背負った私が目指す場所と言えば、霧となった私が一体化する品、自動人形の保管場所であった。
そう。
私は吸血鬼らしく複数の姿に変化する。
だが、その力を利用して、人間とも吸血鬼とも違うものにもなれるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる