目が覚めたらクレイジーサイコレズの吸血鬼が同衾していました。

ゆっこ!

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第一話 押し入れの中の吸血鬼と私

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 「出して~!出してよ!」

 「うるさいゴミムシ!居候は!昭和の古代から押し入れの中と決まっている!今度私のベッドに無断で入り込んだら承知しないからな!」

 ドン!ドン!と押し入れの内部から非力な少女が襖を叩く。
 しかし、吸血鬼としての力をすべて失ったレムネリアは、つっかえ棒をした襖を蹴破ることも出来なかった。
 だからこそ、私、虚歴(とみてこよみ)によって、彼女、レムネリアは襖に閉じ込められても何ら抵抗できなのだ。

 「だって~(グスン)」

 「うっせぇ!吸血は決まった時間だけって約束だろう!レイプも御法度って決めただろう!危うく処女じゃなくなるところだったんだ!レイプ絶対駄目!そこでしばらく反省していろ!」

 欲望の塊である吸血鬼におあずけは無理な話と知っている私であったが、勘弁ならないものは勘弁ならぬのである。

 (ならぬものはならぬのだ!)

 それ故に、私は彼女を押し入れに放り込み、襖につっかえ棒をして閉じ込めた。
 何のしつけにもならないと知りつつも、ちゃんとお仕置きしないと事態がエスカレートしていくだけと解るからである。

 「まったく!私は仕事に行ってくるから!そこで大人しく寝ていなさい!」

 「いやだぁ~置いて行かないで~」

 「駄目!帰ったらベッドの上で可愛がってあげるから、それまでお預け!」

 そう私が返すと、襖を叩く音がピタッと止まった。
 さすがに吸血鬼、欲望には素直だ。
 私は、フフッと苦笑する。

 「早く帰って来てね~」

 「そうするわ!」

 哀しそうな叫び声とは一転、晴れ晴れとした声でそう言うレムネリアと約束し、私は郊外の一人住まいの自宅玄関へと向かう。
 時刻は深夜10時といったところ。
 これから情報提供者から戴くものを戴き、所用を済ます頃には、調度、化け物や怪物、幽霊、怨霊、そして吸血鬼が跋扈する時間になっているだろう。
 今の私にぴったりな活動時間だ。

 吸血鬼の恋人である私は、吸血鬼に何をされても人間のままという特性を持つ。
 ただ、私の場合はさらに特殊な特性を持っていた。
 それは、自分と接触した吸血鬼の力を、そのまま全て奪い取れる………そんなスペシャルスキルだった。

 俺が!俺こそがガンダ…いや、吸血鬼だ!が、私は出来てしまうのである。 

 そんな私は、実質上の伴侶となったゴミムシ…いや、レムネリアを養い、自分自身の懐を温めるため、その特性を利用して仕事に出ていた。
 有り体に言ってしまえば、吸血鬼の力を使い、人に非ざる化け物や、魔術師、呪術師の掃除である。

 それは別に変なことではない。

 私は、超常の力を持っているのに正体を晒さずに隠れ住み、一般人と同じ仕事をしている。
 その方が変だと思う。

 例えばである。
 そんな力を手にして、あなたは一般人と同じでいるだろうか?
 あなただってそんな力を手にすれば、超常の世界に飛び込むだろう?
 得た力を存分に使ってみたいでしょう?
 できれば、人に迷惑をかけるだけの、悪人や化け物を相手にして。
 違って?

 そんなことを考えつつ、私は中学生の身体をすっぽりと覆う外套を着込み、そのポケットから玄関のカギを取り出す。
 普段は食料を届けてくれる配達人が来た時以外、殆ど使用しない品。
 そのため、常時、外套のポケットに入っている品だった。

 ご近所の人たちは、私が未だに片目、片手、酷い火傷の姿のままだと思い込んでいる。だから普段の生活では、外部との接触はそれで十分なのだ。

 そんな理由もあり、私が深夜に人目を忍んで外出することにも、ご近所の方々は寛容だ。所謂、やさしい見て見ぬふりをしてくれているのだ。

 ちなみに、私がそんな大怪我を負ってしまった理由は、あの武の漢由来のマスク不足の原因を作った転売ヤー一斉摘発に巻き込まれたからである。私は、運悪く混乱した犯人一味に人質にされたのだ。
 そして、片目、片腕、酷い火傷姿にこそなりはしたが、私は九死に一生を得て生き残ったのだ。 

 そのために以後の私は、誰に憚ることもなく、こうして全身を隠す外套を着込んで深夜の時間帯に出歩けた。

 かつて片目、片腕、酷い火傷姿であったことは、私のハンディキャップではなくなって、むしろ自分の正体を隠すメリットになっていた。

 なぜなら、それで完全に人目を避ける形で別の姿になることができたのだから。

 「霧…霧は良い。誰にも悟られずに姿を変えられる………」

 自宅から徒歩で出発した私は、外套に覆われた口元でそう呟く。

 そう…霧だ。

 吸血鬼には、狼やコウモリに変身するだけでなく、霧にすら変化できる能力がある。
 レムネリアの能力を奪った後、私は、その能力で一旦霧になった後に、片目、片腕、酷い火傷を負う以前の姿へと戻り、その傷を再生した。
 そういった意味では、私の許にやって来てくれたレムネリアには感謝してもしきれない。
 だからこそ私は、レムネリアの[自分の伴侶になって]という願いを受け入れた。
 私は、私が女性でも構わないという彼女を受け入れ、女の子吸血鬼のお嫁さんになったのだ。

 (もっとも、自分が吸血鬼の権能全てを奪えるなんて思ってもいなかったんだけどね)

 そうして、私が事実上の吸血鬼代行となった。

 人生、何があるか解ったものじゃない。何がプラスになるかもだ。運命の螺旋は逆方向へと廻り始め、私の人生は
真紅の霧に包まれた。

 もう後戻りはできないが、今更後悔しても意味がない。 

 (せめて闇夜に咲く花となろう)

 そう考えて微笑む私は、そのまま深夜の闇の中へと消えいく。

 そんな数奇な運命を背負った私が目指す場所と言えば、霧となった私が一体化する品、自動人形の保管場所であった。
 そう。
 私は吸血鬼らしく複数の姿に変化する。
 だが、その力を利用して、人間とも吸血鬼とも違うものにもなれるのだった。
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