目が覚めたらクレイジーサイコレズの吸血鬼が同衾していました。

ゆっこ!

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第二話 ターゲットは魔法薬物の精製者

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 「つまり、スティルタウン(違法薬物売買の隠語)ってこと?」

 「ええ」

 「わかった。多くは聞かない。ターゲットの特徴は?」

 「道を外れた外法道士。所謂、蛇頭(中国マフィア)のルーキーよ」

 「ああ。あの漢の武の大規模肺炎以後の…ね」

 「そ」

 「場所」

 「○○山近郊の私有地、破産した中国企業の跡地よ。そこを根城にして薬物精製、販売を生業にしてる。はい、地図」

 「ありがと。じゃ」

 「詳細は?廃屋の見取り図とかあるわよ?破綻前のビルの構造とか、ネットに上がっているのだけど?」

 「不要。どうせすべて灰にする」

 「それは頼もしいわね。依頼料はどうする?」

 「いつも通りにロンダリングした現金で」

 「OK」

 そうして女性型自動人形は、仲介人女性との会話は終えた。用事を済んだと、さっと踵を返して退室していく。
 うらぶれたビルの一角から早々に立ち去っていくその金髪碧眼にんぎょうこそ、私、虚暦(とみてこよみ)が霧となって依代とした品である。
 霧の私が内部に入り込み起動させた芸術品。人の形の写し身だ。
 この羞花閉月の人形は、たまたま我が伴侶たる吸血鬼レムネリアが所有していた品だ。それを私が拝借し、このように有効利用している次第である。

 仮に、霧の倫敦人形:薄雲とでも名乗ろう。

 そんな薄雲は、外法を犯した罪人たちの集う隠れ家に高速で向かっていた。
 目指すは○○山郊外。
 その徒歩での移動は、一秒毎に加速していた。人体を模倣した機械は、恐るべき正確さで反復行動を繰り返す。その速度はもう時速100㌔に達しただろうか。

 そのようにして私は獲物たちが集う仕事場に向かって一直線に移動していく。接敵までせいぜい1時間程度。
 自動人形の身体をそれほど疲弊させる距離ではなかった。吸血鬼の魔力で強化されたこの精密機械は、わざわざ気にするほどの消耗をすることもない。
 過度の手入れを必要にするほど乱暴には扱わない。するならば別の対策方法を用意しておく。
 その程度の基本は、中学生の頭脳しかもたない私でも理解していることだ。

 (スティルタウンか。その道士の脳髄も血と一緒に啜ったなら、その手持ちスキルも奪取できる?)

 (魔術での薬物調合スキルがあれば、他の術と組み合わせ、新しい術法の構築も可能になる?)

 薄雲での移動の間、私はそんな未来を妄想し、自分が多くの経験が積めればいいなぁ、などと建設的な妄想(身勝手ともいう)をしていた。

 スティルタウン(魔術による特殊薬物の調合を意味する隠語。或いは技能のこと)の技能があれば、様々な薬品が作り出せる。副作用の少ない麻薬調合(これがターゲットたちが今回日本にばら撒いていた品)や、それこそ、伝説の霊薬、丹と呼ばれる仙人たちが作り出す魔法の薬まで精製可能になるという。

 もしそんなことが可能になるならば、夢が拡がリング(笑)とか考えて、私は意図的に前向きな思考をしていたのである。

 なぜなら、これより私に待つのは数刻の修羅の時だから。或いは、夜叉のように振る舞う悪鬼羅刹となる時間であるから。

 その凄惨さ極まる予想は、さすがに罪悪感を伴う。いくら悪人相手とはいえ殺人なのだ。
 ほんのちょっと。欠片だけ理性が残っている私の思考を[それでよいのか?]と苛める。
 それを意図的に、楽しい妄想で少しでも和らげよう。そう努めていたのである。

 「まあ、そんなことは無理なんだけどね」

 (未練な。もうただの人とは言えない私が、一般人的思考に溺れてどうするというのか?)

 (私はもう、吸血鬼であることも超えて、自動人形と一体化することも当の昔に終えている!)

 (そうして新たな怪物の形にもなっているんだぞ!)

 (もっと!もっとよ!私は人間を喰らって!より化け物となっていく!)

 (今しばらくの後、世界は私が振り撒く絶望と恐怖で覆われることになるんだ!)

 その様に、自分自身で自己の理性的思考を否定する私。薄雲をさらに加速させ、目的地へと続く国道を疾走させる。
 薄雲は暗視能力も隠形能力もあり、身体も機械で大々丈夫。移動に何の心配事もない。程なく薄雲は、戦場となる○○山付近へと、私を乗せて到達することだろう。

 (その地が今夜地獄と化す。吸血鬼の花嫁、吸血鬼と人間の狭間の存在である私の手によって!)

 そのように中二病的思考に酔いしれ、私は自動人形の内部圧を高めボディを震わせた。

 その様子は、獲物を狩った快感に打ち震える肉食動物に似ていた。

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