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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。
1*隠れヲタクのNo,1ホステスさんが生まれ変わったようです。
しおりを挟む皆さん、初めまして。私はティナ・エヴァンスと申します。
チャコって呼んでくれると嬉しいわ。ん?どこから『チャコ』が来たか不思議ですか?
うーん、特に意味はないんです。チャコって響きが可愛いじゃないですか?だからこの愛称は気に入っているのです。
まぁ、話は変わるんですけどね?
いま、カート兄様と、レイ兄様と、ハンクと隠れんぼしてるんだけど、なんとも天然BのLな現場を見てしまったの!!大変だわ。顔が緩んでしまうわ‥‥。
カート兄様が鬼で、ハンクが真っ先に見つかったんだけど、ハンクが転んでしまったらしくて‥‥兄様が優しくハンクの頭を撫でてあげてハンカチを膝に巻いて‥‥なんと!!!お姫様抱っこして居るの!!!なにそれ!?おんぶもいいけど‥‥なんで兄様はお姫様抱っこにしたの!?ハンクはどちらかというと男の子って顔だけど‥‥いつも強気で悪ガキって感じだけど、なんでおとなしく抱かれて居るの!?そうなの!?受けなの!?そうなんでしょう!!!兄様も、なんでそんなに優しく笑って居るのぉぉぉぉ!?私に向ける笑顔よりも何倍も甘く感じるんですけどぉぉぉ!!え、禁断のBのL!!??義兄弟の禁断のBのLなの!!??だめよーー!!あ、いや、あたしは応援するけどっ!!でもっ!!
「チャコ、そんなに熱心に見つめて居ると見つかってしまうよ?」
「うぎゃあっ!むぐっ」
不埒な思考に埋まっていたら急に後ろから声をかけられて肩が跳ねます。
「しっ!僕だよ、レイだよ。」
可愛げも何もない声を出して口を塞がれました。
レイ兄様は人差し指を唇の前に持って行きシーってしています。
この落ち着き。全然7歳に見えません。
彼は、ブレイン・エヴァンス。私の義兄です。
レイは茶色のくせのついた髪を一括りにして後ろで纏めています。深緑の瞳が私を見て優しげに細められています。カート兄様も、美形の部類ではあると思いますがレイ兄様はもっともっとカッコよくて優しいのでとても女の子にモテます。こんな優しそうなのに怒ると誰より怖いです。ハンクが怒られて居るのを見てから私は、レイ兄様は絶対に怒らせてはいけないと心に誓いました。
「もう!いきなり後ろから話しかける何てびっくりしますわ!」
「あはは、ごめんね。余りにも熱心にハンク達を見つめてたから話しかけるタイミングがわからなかったんだ。なにをそんなに見ていたの?」
レイ兄様は困ったように眉を下げました。
え‥‥見られてたの?いつから??ヨダレ垂らしてたのバレてないよね??声は出てなかったよね?見られてたら恥ずか死ぬ!!腐った思考がバレたらやってけない!!
「そ、それは‥‥えっと‥‥」
「うん、なになに?」
レイ兄様が何故かキラキラした笑顔で聞いて来ます。困った。なんて言おう。BのLな思考に陥っていましたなんて言えない。私が腐って居るのは死んでも隠し通すんだから!!
「あ、あれです!ハンクが怪我したようなので心配で様子を見ていたんです!!決してやましい気持ちでなんか見てませんわ!!うん、心配で見ていただけですわ!!」
「ぶはっ!!そ‥‥そうか‥‥。うん、心配していただけなんだね。チャコは優しいね。」
何故かめちゃくちゃ笑われています。解せぬ
まぁ、誤魔化せたようなので藪は突きません。レイ兄様がつぼるのなんてあまりない事ですもの。いっぱい笑えばいいのです。ちょっとくらい私が恥ずかしくてもいいのです。笑ったレイ兄様はいつもよりも少し幼く見えてエクボができてとても可愛く見えます。一通り笑って落ち着いたのかポンポンと頭を撫でられました。優しい手つきに心地よくて目を瞑ろうとした時‥‥
「をーいチャコ、レイ。隠れる気ないだろ?丸見えだぞ、お前ら」
ジトッとした目を向けてカート兄様が木の陰に入って来ました。
「あちゃー見つかったか~!でも、ハンクが一番先に見つかってたもんね!」
「まぁな~でも、そろそろ俺たちは剣の稽古があるからな。そろそろ戻るぞ」
「もうそんな時間?残念だけど、行かなきゃだね」
兄様達やハンクは剣のお稽古の時間なので仕方がない事です。
私も剣を習いたいと言ったけど『女の子だから』ってピアノや刺繍などお淑やかな物ばかりやらされます。もちろん、嫌いじゃないですし、楽しいですが少し仲間はずれになったように感じて寂しく感じてしまいます。体動かすの好きなんだけどなぁ‥‥
うん、こんな時はピアノで思いっきり弾き語ってやったほうがいいですね!
私は彼等と決定的に違う所があります。
もちろん、性別な訳じゃないですよ?
それは‥‥前世の記憶があるという事です。
2年前に、家族で領地へ旅行へ行った帰り道に事故に遭いました。
お父様も、お母様も、カート兄様も私も。とても酷い事故でした。。
その事故で実のお母様は帰らぬ人となってしまいました。大好きだったお母さんがいないのはとても悲しく苦しく泣くしかできない自分が情けなくなりました。
その時の事故で私も一時昏睡状態になったそうです。
目を覚ましたらベットの上で。酷く頭が痛くなりその時に記憶が蘇って来ました。
よくある、ファンタジーなお話です。
前世の『私』は、29歳独身。
銀座でいわゆる夜の蝶をしていました。これでも、NO.1だったんですよ?
大学の半ばでホステスを初めて、昼は学校。夜は蝶という二重生活をしていました。
何故ホステスになったかって?それはまたよくある話。父親がリストラされて大学を辞めなきゃいけなくなって、でも辞めたくなくて自分で稼いででも学校に行きたかったんです。やって見たら思いの外、鰻登りで人気が出てくれて。太客も多くついてくれましたから。
大学を卒業してからも続けたのは‥‥楽しかったから?‥‥ヘルプ程度にしか顔を出せなかったけどそれでいいとママが言ってくれたから入れる時に入っていました。昼職もありましたしね。
お察しの方はいるかもしれませんが‥‥。私はすこーしだけをたくなところがあります。
でも!私のヲタクな所は誰にも知られてないはずです。だって、必死に隠してましたし‥‥。
趣味はカラオケと読書、人間観察って一般人ぽいでしょ?でも、嘘は言っていません。カラオケは一人で行くくらい大好きだし、本もよく読みます。新聞やニュースは毎日欠かさなかったし、人気の本や小説、雑誌や漫画などオールマイティーによく読んでいました。話の種があるだけでお客様と楽しく話せますからね。話を引き出してあげるのも私達の仕事ですから。
その中でも、確かに私はヲタクと言われる部類でした。
コスも好きだし(自作してました)、自作の小説(R指定込み)とか‥‥漫画とかも書いてました。乙女ゲームもやってましたし、好きな声優さんのコンサートには必ず行っていました。
二度とあの声を聞けないと思うと‥‥悲しい‥‥それが1番悲しい‥‥。
幸か不幸か死ぬ間際まで聞いていた音楽がその声優さんだったという事が良かったかな。。
3歳で色々と思い出し、死んだ後親や兄弟にあの部屋を片付けられるのかと思うと叫ばずには入られませんでした。わかるでしょう?隠したいことの1つや2つ‥‥いや、100や200はあるでしょう?いま思い出しても恥ずかしいです。
まぁ、死んじゃったものは仕方ない!こっちではバレないようにするだけです!
幸い、言語は日本とあまり違わないので良かったですが文字は違うのです。文字を覚えるのは大変でしたが前世の文字が秘密の書き物にはもってこいの環境です。うへへ
前世の記憶があること、思い出したことを幼かった私はすぐにカート兄様に言ったことがあります。
まぁ、案の定信じませんでしたしその話はその一回きりで他の誰にも言ってないのでみんな知りません。転生なんて信じませんよね、そんな物語みたいな話。
私は考えました。よくあるじゃない?
『転生したら乙女ゲームの中だった!!』とか、『転生したらチートだった!!』とか!
確かにこの世界には魔法なるものがあります。しかし、それだけ。知っているキャラクターの名前もないし、学園とかもないし、王子様や出ていそうな高貴な方々の名前も聞いたことがありませんでした。とてもがっかりです。死ぬ前日までやっていたゲームのなかに‥‥とかじゃないの?モブでいいからそんな世界に入りたかった!
それに、私は何故か魔法がうまく扱えません。魔力はちゃんとあるみたいなんですけどね。お父様も兄様達も『まだ小さいから』って言うけどハンクも少しづつ出来るようになっているのに私はまだできていません‥‥うーん。今のとこ不便していないからいいけど‥‥将来は結構大変になりそうです。生活面でも勉強面でもどこでも魔法が必須になって来ますから‥‥。魔法が使えないと不便で仕方ないのです!
もっと頑張らないとですね。おぉーー!!
一度気合を入れ直してピアノに向かって座り直しました。
ーーー‥ポロン
一度音を出して深呼吸します。
目を閉じて細く息を吐き前世のカラオケの定番曲を唄い出します。
「ふぅーーー・・♪んん~~~‥♪‥愛する人の歌を歌いたい‥‥」
ーーー♪
ーーーーー♪
ーーー♪
自分の世界に入り込んで夢中で歌って少しスッキリしました。
‥‥ーーパチパチパチ
後ろから拍手を送られて聞かれていたことにびっくりして振り向くとそこには優しい眼差しでこちらを見ている両親がいました。
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